気がもめるよね

2003/06/28

むかしのひび

鏡のような大地でした。一面に水田が広がっていたのですが稲の生育はまだ控えめで、敷きつめるように張られた水面には、農村の集落や、遠くの山々が映し出されていました。私も片田舎の生まれなので、こうした風景に出くわすと思わず心がほぐれます。
ふと、小学校の図工の授業を思い出しました。学校近くの水田の風景を描いていたのですが、週ごとにだんだん稲がそだってくるのね。やべえ、景色変わっちゃってるよ。だからそのたび水面の水色を葉っぱの緑色に塗りかえなくちゃならなくなって。変化するものを絵にするのはむずかしいなと。それでこりたはずなのに、中学校の美術の授業でまたやっちまいました。こんどは植物ではないんですが。屋上から校舎の風景を描いていたのですが、途中からなんか工事がはじまって、しまいには玄関の前に自転車通学の生徒のための駐輪場ができてしまいました。もう絵もなかばできあがっていたというのに、これを書きたせと言うのか――私は世の不条理を知りました。まあそれはさておき。
バスを待っているとどこからともなく、夕刻を告げるチャイムが聞こえてきました。大時計を見上げるとまだ3分前です。時計の時刻がずれているのかな、とそのときは深く考えなかったのですが、チャイムの音はそれからしばらく鳴りつづけました。この世界の片隅で結ばれたふたりのあらたな幸せを祝福するかのような、小さなチャペルでの淡い希望に満ちた光景を思わせるジングルがメロディーを奏でます。しばらく聞きほれていた私、演奏が止まったことに気づいてふたたび大時計を見上げると時刻はちょうど正時。なるほど、そういうことだったのか。
そんな一日でした。アップルチーズのパンおいしかったです。

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