ビュートがびゅーっと伸びる

2004/09/13

むかしのひび

「あのさ、ひとつ聞いていいか?」
「なんだよ」
「テーゼとアンチテーゼが合体すると何になるんだっけ」
「は? 何の話?」
「だからー、テーゼとアンチテーゼ」
「ああ、弁証法の話ね。おまえ質問が唐突なんだよ」
「牙突ってやつだな」
「そういうのいいから。ってか自分で言うなよ」
「で、さっきのわかるか? 昔習っただろ」
「倫理だよな。なんか出てきた気はするんだけど」
「そうだろ。だったら思い出せよ。ほら早く」
「おまえがそんなこと言える立場かよ」
「それもそうでしたごめんなさい」
「やけに変わり身早いな。なんだ珍しい」
「手の平を返したようってやつだな」
「だから自分で言わなくていいっつうの」
「おまえさ、前から思ってたけどいちいち言うこときついよな」
「うっ…」
「母さんはあんたをこんな子に育てた覚えはないよ」
「いつからおまえの子になった」
「もう来月からお小遣いあげません!」
「いらねえよ」
「冷凍庫の中のプチゼリーも没収です!」
「それもいらねえよ…って、なんで俺んちがプチゼリー凍らせて食ってるって知ってんだよ」
「それもそうでしたごめんなさい」
「謝罪はいいから説明責任を果たせ」
「そういやテーゼの話だったよな」
「なんつう切り返しかただよ」
「アウフヘーベンはわかるんだよ」
「アウフヘーベン? ああ、なんか出てきたような気が」
「だろ? それは覚えてんだ」
「ちょっと待て。じゃあ答え知ってるのに俺に質問してきてんのか。なんて野郎だ」
「違う違う。俺が聞いてるのはアウフヘーベンじゃない」
「どういうことだよ」
「アウフヘーベンっていうのは、テーゼとアンチテーゼが合体するときの作用っていうか現象の名前なんだよたしか」
「そうだったっけ。言われてみればそうかもしれんな」
「でな、合体してできあがったほうのやつの名前を知りたいんだよ」
「…それは別のものなのか? 別の名前なんてついてるのか」
「あったと思うぞ。俺は信じる。自分の記憶を信じる!」
「むちゃくちゃ言うなあ」
「いいからきみはさっさとそれを思い出しなさい」
「だからそれが人にものを頼む…あっ、待てよ」
「なんだ」
「うん、あったかもしれん、名前」
「ほら見ろ。信じるものは救われる。神に感謝しなさい」
「いきなり気味悪いこと言うなよ」
「で、何だ? やっぱり何とかテーゼか。語尾」
「多分そうだ。テーゼとアンチテーゼが合わさったくらいだからな」
「そうだよな。俺もなんとなくそう思ってたんだ」
「だったらそれを先に言えばいいだろ」
「まあまあ。それで結局何なんだ?」
「そんなすぐ思い出せたら苦労しねえよ」
「そうだな。凡人の頭ではその程度だろうな」
「凡人以下のおまえに言われたくないけどな」
「うるせえ。こうなったら意地でも俺が先に思い出してやる」
「そうか。がんばれよ」
「うーん、テーゼテーゼ…リパーゼ?」
「なんだそれ」
「違うのか? じゃあペプチターゼか。それともデヒドロゲナーゼ?」
「それってぜんぶ酵素の名前じゃないのか」
「そうだっけかな。よくわかんねえや」
「ようするに口から出まかせなのな」
「当たって砕けろだ」
「それを言うなら数撃ちゃ当たるだと思うが」
「シロガネーゼとかもそれっぽいな」
「それっぽいけどそれだけだし」
「あと思いつくのって、コニーデ・トロイデ・アスピーデくらいか」
「それ火山の種類な。ていうかゼじゃなくなってきてるぞ
「じゃあ何なんだよ。おまえもなんか言えよ」
「だから思い出せないって」
「そうか。きみには失望したよ」
「俺にはおまえが物知りだったことが意外だよ。でも単語と意味が結びついてないようじゃ全然だめだけどな」

……という脳内会話をひとりでくりひろげていたondです!<病院行っとけ?

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