銀幕レビュー
白いトリュフの宿る森
昨年の『犬部!』をきっかけに、動物が出てくる映画をもう少しチェックしようと思い至りまして。
そして今回見つけたのがこの作品です。
トリュフ犬の存在を知ったのは少し前、NHKの世界わんわんドキュです。
舞台はフランスでしたが、飼い主と犬との悠々自適な生活が不思議と印象に残っていました。
本作もドキュメンタリーですので、暮らしぶりや実態がよりわかるかもと期待を持ちました。
…痛いほどよくわからせられましたー!(はいバカ)
描かれていたのはのどかな生活などではなく、寂しさや哀れみすら抱かせる現実でした。
環境の変化に伴う不作、高齢化と後継不足、縄張り意識、そして背後に渦巻く人々の欲望。
犬がパートナーである点を除けば、世界中のさまざまな作物や産業が似たような事態に直面しています。
白トリュフを切り口にして人間社会の断面を見せていると感じました。
そして、トリュフ犬を取り巻く非常にショッキングな事実が明らかになります。
飼い主と一緒に狩りを楽しんでいるだけなのになぜこんな目に遭わなければならないのか。
人間の嫉妬心から起こす行動の恐ろしさに震え上がります。
自分を待ち受ける危険も知ることなく、どんなときでも飼い主に付き従う犬たちの純粋さ、底知れぬ愛情に心動かされます。
動物と人間との絆を描いた作品はフィクション含め数多くありますが、一つの究極形だと感じられました。
ラストシーンの、妻の反対を押しきって夜中に窓から抜け出す老人を尻尾を振って迎える姿がすべてを象徴しています。
そんなかれらが幸せを感じながら生きられるかどうかは、ひとえに人間の行動にかかっているとあらためて教えられました。
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