[むかしのなぞ] 2008/06

2008/06/03

振りじゃない、とだけ言っておく。

管理されることが嫌いだった。
自分がいつ、どこにいるか。どんな予定で、どんな行動を取っているか。
所在でも風体でも。知られたくない、と思うこと。今でもある。いつでもある。
牙城。立て籠もることのできる最後の砦が心の拠り所となって、弱いぼくを支えていた。
その使役主は、自分自身とて例外ではない。いや、なかったはずだった。
今、既成のモラルの崩壊と変革によって、急速に自らを管理しようとしている。
腕時計をはめ、手帳にスケジュールを書き込み、日常の大部分を露わにしている。
縛られることに、甘んじて身を置いている。その異常性を、認識すらしていながら、である。

だからと言って、それを自由に外界を闊歩できる翼を手に入れたなどと誤解はしない。
翼は飛ぶためのものであり、歩くのは両脚の役目だ。そして、得たものはどちらでもない。
いわば代償。いくばくかの自由を犠牲にして権利を得るような。一国民となるような。
意志がなくてもふわふわと漂い、ふらふらと彷徨っていた。魂そのもので、あったはずが。
ここが楽園だとは思わない。だが憂う必要もない。忌むべき呪縛にも、憑かれていない。
ただ一つ、どうしようもなく現実であるということ。その中で、ただ一つ、嘘の塊。
どちらでもないのかもしれない。この言葉は。きっと真摯に人の耳に届きはしないだろう。
罪悪感。申し訳ない気持ち。原因不明のそれらを抱いて、アバターは存在し続ける。

一度はあらゆる糸を断ちきった人間。全ての光を遮って闇に身をやつした、そんな人間だから。
また日の目を見ようだなどと。ましてや脚光を浴びる場所へなどと。スポットライトなどと。
願ってはいけないこと。いや、まさかな。どうせ願っても詮ないこと。わかっているさ。
何らかの肩書きを与えられるには、支持や支援を受けるには、ぼくは穢れを知りすぎた。
これからの世代に何かを伝えられるような大人には、もうなれそうもないから。
そして自分自身も、これから先の未来に何かを残せることもないだろうから。
価値などない。ただ息をするだけの。迷いや過ちを繰り返して、生きた気になっているだけの。
どうか曇らないでいてほしい。世界が、こんなやつなんかにノイズを生じさせることのないようにと。

それはきっと、自分への逃げ道。

2008/06/07

Nothingの指し示しているものを掴み取ろうとするくらいの絵空事。

何だろう、この空気。
自分の与り知らないところで、自分ではない自分が一人歩きしている。そんな感覚。
このサーフェス。あちらは悪ノリも過干渉も、みんな全力のぶつかり合いだというのに。
もう、感覚がどうかしてしまったのかもしれない。こんな力関係でしか、得られない心地よさ。
いじめのない社会。貴賤上下のない関係。それが理想だと、信じて疑いもしなかったのに。
結局、そうなんだ。意見を言わなければ埋もれていく。弱いやつは潰れる。わかってしまった。
そして、それに失望も諦観もしていない。もう次の戦略。その状況下で、いかに生き残るか。
サバイバル意識。生物の生存本能に訴えかける根本問題。それが、最大の動機をもたらす。

平和ボケとは違う。日常に刺激を欲しているのとも違う。ただ本音でぶつかりたいだけ。
平静を装って何も主張しなければ攻撃される心配もない。そんな生き方が、つまらなく思えて。
だって、このままじゃ。愛想笑いで塗り固めた顔がとても重くて、息ができないじゃないか。
ぼくにとって単なるリスタートではない。それでも駄目なんだ。過去に蓋をしたままでは。
何も見なかった振りをして、そ知らぬ顔で新しい居場所で立ち位置を得ようとするなんてこと。
全ての関係はつながっているから。将棋の駒のように、お互いがお互いを守る、シナプス網羅。
いらないからと言って切り離すなど禁忌。許されないこと。死んでも償えないほどの、罪だと。
その罪と、明かせぬ夥しき罪。いくつものcomplexを抱えて、とぼとぼと砲台を引き擦り歩く。

だって「何もない」んだから。なんて、ありっこないのにね。

2008/06/16

誰に唆されたのでもない。全ては自分自身が招いた結果。そういう因縁。

とぼとぼ、とぼとぼ。夜道をぽつんと歩く不安さのよう。迷いの闇に誘われるよう。
どうしてだろう、まっすぐ歩けている気がしない。
最短距離にはこだわらない。遠回りしたっていいと思っている。そういう意味ではなくて。
これが自分の足でないような、自分の靴でないような。あるいは自分の道でないような。
そんなところを、ただわけもわからずに。歩き方も、行き先さえも見失ったように。
誰かが導いてくれるわけでもない。頼れるのは自分だけ。そうはわかっていても。
どうしようもなく、喚きたくなるときがあったって。
無駄足を踏んでいるとは思っていない。今の時間というこの経験が、糧になりさえすればいい。

相変わらず、演じようとしているな、と感じる。何か、になりたがっていると。
率直な気持ちで話せればいいのに。中身なんか何もない、恥ずかしいぼくだったとしても。
つい見栄を張ってしまう。無頓着な顔をする。イメージダウンにつながることは言わない。
結局、口を塞がれたままでいるのだろう。いもしない死神の影に、きっと今も怯えて。
ぼく自身がこんなに臆病なのに、他人が足踏みして縮こまっているさまに苛立ったりして。
だから見捨てた。自分の方がましだとでも思ったのか。頑張っているとでも、思ったのか。
現実はアニメとは違う。いいものがわるものを排除して、それでめでたしなんてならないんだ。
だからやはり、ジェンガのピースになるべきではない。総崩れに巻きこまれるなんて、ご免被る。

先に動いたら負け。先に尻尾を出したら、負け。それが長年の経験則。

2008/06/29

真夏に降る雪のような、そんなきらきらした街。雨も綻びも、きっと気にならない。

最初からそうだった。物心ついた頃、という名の有史以前から。
迷惑の押し売り。言っていいことと悪いこと。癇癪。他人への暴力と、自分への暴力。
変なやつだ、と後ろ指さされて生きてきた。だから、そんな距離感が当然と思っていた。
本当は、わからない。愛なんてあやふやで、夢なんて幻で、信頼なんて糸みたいで。
いつ切れるかわからない。そして、いつ切れてもおかしくない。そういうものなのだと。
だから、それに縒る生き方はしたくなかった。裏切られて支えを失うことの、つらさ。
取り入られようなどと思うものではない。歴史に傷をつけたり、落書きをするようなもの。
変わらない。自己否定の方針は、もう変えられない。一生、無理なんだろう。

築いていたのか。気づいていたのか。それとも、傷ついていたのか。
すべてを知ったと。世界の淵を見てきたと、そう思っていた。扉だけの真っ白な空間。
どんな研鑽も、ついに自分を生まれ変わらせるきっかけには繋がらなくて。
だったら、と省みる。何を得たのだろう。これまでの時間で。後悔に苛まれた時間の中で。
トラブルや面倒なことを避けることばかり考えるようになっていやしなかったか。
学んだこととは逃げることだけだったのか。世界を狭めることが保身への道だというのか。
笑っていられればそれでいいなんて、そう単純なものでもない。ないのだけれど。
やはり、怖い。迎え入れられること、真実に近づくこと、幸せになること、伴うリスク。

自分を塗り替えるなんて簡単だろう? だって、自分なんてそもそも何も持っていないんだから。

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