[むかしのなぞ] 2005/08

2005/08/01

今週も寝て過ごすのか?
自分が恵まれていることに気づいていないからそんなこと言えるんだよ。

2005/08/05

絆されていくことが、こんなにも屈辱なのなら。

自分を見せることを恐れていくばかりの衰退。
正直に明かさなければ、心を開かなければ、誰も受け入れてはくれない。
それはわかっていても。それなら打ち解けないままでいることを選んでしまう。
致命傷なんだ。自分の裏側を掌握されるということは。
メスで開胸されて心臓を直に握られるようなものだから。
絆とは、弱点を暴きあうこと。死の鎖で互いに逃げられなくする、呪縛。
その輪に加わることを拒むなら、人間関係そのものを剥奪される。
自分は自分のままで誰かに取り入ろうなんてどだい無理な話。

許せない自分を、心の中にたくさん持っているから。
こんなぼくは人目に触れさせてはいけない。それこそ世界を歪めるような。
自信や信頼とは別の次元で。封印すべき人格や衝動があるのだということを。
表現とはなんと利己的な暴挙なのだろう。自己を知らしめようという欲望は。
解説したり自慢したり恥さらしたり泣き言漏らしたり。必死だな。
結局、自己主張という行為に微塵の罪も感じないことが最たる罪であって。
生きているかぎり、吐き続ける。神をも腐らす汚い毒を。
他人と関わっているかぎり、都合よく自分の意見を変える。自分が流失していく。

やはり断つしかないのか。これ以上触れられるなんてご免だ。

2005/08/06

何も失っちゃいない。以前の生活に戻っただけ。

何か月たっても。ただ待ち受けるだけの。
ため息なんかついている自分は最強にカワイクナイと気づいた。気味悪い。
今に始まったことではない、という点を差し引いても。
いつも最後の詰めが甘くて。違うか。鋭すぎて傷つけるんだ。
加減を知らない。相手に踏み込む距離の。晒しすぎたり、執拗に追い回したり。
だから、迷惑をかけたり厄介がられたり圧死させたり。
そんなことばかりで。反省の色もない。新たな獲物を捜しにさまようだけ。
そんな凶悪性に比較すれば、身を切られる痛みにだって恍惚を覚えよう。

いつも不安になる。ぼくの言動が誰かを困らせていないか。
不快にさせていないか。
何も言わなければ、何も行動しなければ。心配をなくす方向に走りたがってしまう。
だから。もう誰にもぼくのことは話さない。ぼくから接近したりはしない。
そうやって生きようと決めた。罰でも枷でもなく。サバイバルの赴くままに。
それを破ったときは、きまって不幸を招くから。後悔を積むだけだから。
この状況を息苦しいとは思わない。不遇だとも思わない。
実際の交流はなくても、端末というアンカーポイントは手の中。その安心感さえあれば。

出会う前の状態に。時間が戻れば記憶も忘れる。それはマイナスには該当しない。

2005/08/07

いくつかの質問と、いくつかの回答。
重複しているうちはまだ問題は生じないであろう。
そのことしか考えられない、というわけではないから。
だがいつまで持つだろう。
ひとつの心でいられることに。
強くなりすぎてしまった、溶けぬ固い威勢を。
この腕に何を抱えるつもりか。
刃に持ち替えて切りつけるのとどちらが早いか、というタイムリミット。

2005/08/08

見えるものしか信じぬことと、見えないものしか信じぬこと。

駄々として。
人生には、言うほど多くの分かれ道があるものなのだろうかと。
大きな転機と呼べるほどの大仰なものが、果たしてどれだけあったか。
わからずに通り過ぎてきた消去法の累歴がそうなのか。
人が導くままに従ってきた信奉の托鉢がそうなのか。
だとしたら。あまりにも軽率に、あまりにも軽薄に、人生を選びすぎてきたのではないか。
その和合として。言うなれば軽んじてきた日々の集積として形成された。
個の存在の大小を決められはしないだろうが、ぼくに限ってはスカスカなこの命。

諾々として。
長い時間の間、切ってきたものが多すぎた。
再び繋ぎ止めることは不可能になってしまったか、さらなる労力を要する。
腐りかけの危機に蓋をしても、時間を止められるわけではなかった。
何も見なかったことになどできようもなかったのに。
逃げ回ることで耳を塞いできただけ。その間に時代は変遷した。
浦島太郎になった、ということ。同窓会の案内など待てども待てども。
過ちを悔いたり恥じたりすることが最たる時間の無駄。悩むより泳げ。

どちらの人間が愚かなのか。そういう天秤にしかかけない。

2005/08/10

やさしい嘘など滅んでしまえ。

声が嗄れても。喉の潤いが涸れても。この身が枯れても。
言葉にしなければ伝わらないこともあったのではないか。
得てして、言わずとも自分のことをわかってくれると期待したがる。
そして理解されないことに苛立つ。何の努力もしていないのに。
信頼や絆や、なんとなく繋がっているという充足は、日々の礎によるもの。
日常的に言葉を交わして、初めて知ることができる。たとえ一部分でも。
声は相手に向けて発するものだから。そこには思考や意図や感情が含まれる。
だから受け取る。やりとりをする。そうしないと、わかりあえないのだ。

無駄な挨拶などあろうか。無意味な会話などあろうものか。
そういうものを軽んじているから、軽んじてきたからこんなことになる。
いざというときに言葉が力を持たない。声が人を動かすに至らない。
自分の思っていることなど一割も伝わりやしないと気づいて、ようやく焦る。
築き上げるのに要する膨大な時間を看過してきたあとで、ようやく。
沈黙は気分を沈ませる。発想の指向を負にする。他人を疑いはじめる。
猜疑が猜疑を呼び、他者を貶めあい裏切りあう壊滅寸前のネットワークを成す。
それを防ぐのが言葉。気持ちを口に出すという行為。身近な人たちとの会話。

今まで、信用を欠くようなことしかしてこなかった。
典型的すぎた。自分の興味のない話題に首を突っ込まない。無視してきた。
適当なその場しのぎくらいできたはずなのに。
そこまで機転が利かないというのではなかったのに。
こうなってしまってから悔やむ前に、何かできただろう。
周りから疑われて生活したり仕事をすることは、本当に息苦しくて気疲れが溜まる。
自分で自分の首を絞めただけ。自ら語らないことによって、くすぶりの不審火を放った。
見限られるのが先か。こちらから弾劾するのが先か。どのみちもう居られない。

辛くても痛くてもかまわないから偽りのない声を聞きたい。

2005/08/18

思い出をずっと胸に抱いて生きることが、いかにクラダナイか。

本当の自分はどちらなのだろうと、考えていたこと。
素直な心をあの場所に置いてきたと、口にしたこと。
若いぼくは、どうしてこうも自分を定義づけることに躍起になっていたのか。
帰属意識でもなく、反社会的行動でもなく。肩書きだけに固執して。
悩むことも馬鹿らしいと、幾度放擲してもつきまとう不安。
許しを乞うて生きるのではなく。許しを与えられて生きるのではなく。
人は独りだと優しく突き放してくれる歌に心を救われたことも。
みんなみんな。面白いように忘れていった砕けていった散っていった。

どんな言葉でもよい。
大事なのは、投げかけたボールを受け止める相手がいること。
誰か、である必要はないと。真相を知るのは自分自身のみ。それでいいのだと。
謎なんてどこにもないと気づいたときから、視界は拡がっていく。
コーヒーに浮かべた粉末のようにふわり溶けていく。そんな音を聞いて。
渦巻きの先に行こう。
どこに行ったって、どこにいたって。涼しい風があれば願えるから。
彩らず飾らず、風景の一部分に。輪郭を主張しない色で、混ざり合う調和で。

いつだって前しか見ていなかった。そんな自分を操るのが好きだったから。

2005/08/23

迎えたり祈ったり見送ったり、いろいろ大変だ。

人は過つもの、だろうか。
自分の罪に厳しすぎるだろうか。
一度道を踏み誤った者はもう軌道修正できないのだろうか。
余分なチャンスは与えられるべきでない。しかし。
うじうじと燻っていることを由としないのであれば。
生きていくべきだ。
人生は美しくない。綺麗でない。輝いてなどいない。
だからこそ。生かされるのだと。

誰だって、やけになってしまうことがある。
目の前の絶壁に立ちくらみ希望を削がれる。
重大な選択を誤ったとき。信頼する人に裏切られたとき。
取り返しのつかない喪失をしたとき。
どうにでもなってしまえと、思うこともあるだろう。
たったひとつものを投げ出したくなるだろう。
でも。それを乗り越えて来たんじゃないか。
いつまでも自分を責めることはない。いま生きているんだから。

ひとつの状態を永続させること。
その難しさを、人一倍わかっているはずだ。
淵に立ったのなら。捨てようとしたのなら。
金輪際、自分を許しはしない。エールも送らない。
恨まれようが疎まれようが罵られようが。その程度のこと。
死神の影がつきまとったままでも構わない。
あのとき首を掻かれるはずだった。何の手違いか猶予か。
すべては偶然の重畳。一本の頼りない糸の上を歩く。

誰かが死んだおかげでぼくは生きている。忘れるな。

2005/08/26

変わってしまったこと、誰も責められない。潜在的に人は汚れていくのだから。

身辺整理を進めていた。荒廃しきった生活に今生の別れを告げるために。閉鎖そして閉鎖。
荷物をまとめて捨てる前に、もらってくれる人を探そうと持ちかけた些細な気の迷い。
顔が利くということは危険だ。ある程度のわがままなら許されると錯覚させるから。
事が上手く運びすぎたとしても、ありもしない人徳のおかげだと果てしない勘違いをする。
偶然につぐ偶然。誰でもよかった。無差別に人を殺したくなる精神異常者の心情だった。
その先の死を予見していたから。というより計画の一部だった。人を巻き添えにして消える。
栄養、水分、空気。人体のしくみも機械と同じで、常に電源を供給されなければ生きない。
だからそれを断つだけでいい。ものの数秒もかからない。ブチッとプラグを抜けば殺せるぞ。

踏み誤ったのではないと思う。車道に飛び出した動物を避けた結果人間を撥ねた程度の。
目の前のことから逃げるのに精一杯で。飛び込んだ世界の先に待つものなんて考えなかった。
だって、そんなこと気にしてなどいられようか。迷っていたら堕落に食われるだけ。
ぼくは忠誠に生きた。義理なのかもしれない。後ろめたさかもしれない。ともかく最高意志。
曲がったものから足を洗おう。いくつも裏切りいくつも失うだろう。それでも逃げ延びると。
それまで無残に扱ってきた自分を、一手に信じること。途方もない労力、殊に心労を強いた。
どうやって自己を回復したのか。遅れを取り戻せたのか。永遠の闇から抜け出せたのか。
問われても答えられない。自分でも回答を導けない。フィルタを一枚かけてしまえば。

当時ずっと傍らにいて励ましてくれた人がいたことを、当人以外は誰も知らないから。

表に出るのが臆病になっていた。名前以外は徹底的に隠そうとした。心に決めていたのに。
心がほつれていく心地よさ。実感を伴ってほぐれていく。ほだされていく癒しを得る。
こんな素敵なものがあるのかと思った。まるで初恋のように。世界を得た感覚に酔いしれた。
はけ口があるから困難にも向かえるし面倒な社交もこなそうと思えた。みなぎる意欲が。
注がれる視線。熱を持っていて、火照っていて、湿り気を帯びていて、なんとも悩ましかった。
事実、その色香に溺れていたのかもしれない。魅惑。解呪の認められない悦欲への入り口を。
手を汚したことの興奮を忘れられず、再び狂ってしまう。なかば意識を伴わない懐柔として。
すべての出来事は、終わりという寿命を携えて手元にやって来る。時計の針を、早めた。

いくつもある扉のひとつだった。一室にすぎない。けれど、それらは個々に孤独を抱えていて。
密室に連れ込んで自分の欲のかたまりを撒き散らした。そう取られてもしかたのないこと。
こんなつもりではなかった。こんなことしたくなかった。こんな結末は望んでなどいない。
結局、自分の目線でしか見ていなかった。向きあっていなかった。絆など築かれていなかった。
途方に暮れて泣いた。おそらくは加害者であろう方が。対等に立つにはそもそも場が違った。
実体のない思い出だけが残った。必要なのは嘆くことよりも反省すること、なのだろう。
だから、何度目の夏が過ぎても。ぼくが姿を消した人たちの冥福を祈らずにはいられない。
もう逆恨みはしない。自分が満たされないことの原因を他人になすりつけようとすることは。

実際に拒絶されたのは自分なのに。どうしていつまでも悪人であろうとするのか。

2005/08/28

理想とは無謀の象徴である。

完全に包囲されたこの生活を鑑みて。
必要な人員が必要な仕事をするだけの、窒息しそうなあそびのない空間にいて。
そもそも必要なものなど、どれほどあるというのだろうか。
思った以上に、何も享楽を摂取しなくても生きてゆける。それが人だ。
あるいは学ばずとも。あるいは働かずとも。あるいは他人と関わらずとも。
だから怖いのだと。放っておけば簡単に腐っていく。
笑ったり何かに熱中したり目的意識を持ったり。そういうことができなくなる。
ごまんといる。何もなさずに死に絶えていくのみの細胞が。

自分はまだ大丈夫だと。正常だし通常だと日常。
ぼくも、そうやってただ必死に心の中で叫んでいるだけなのかもしれない。
人と比べるととたんに空しくなる。
自分は何も為していないことを気づかされるから。
これまで過ごしてきた膨大な時間。無為に食い潰してきたに違いない。
何をやっていたんだろう。今になってそんなこと言い出す。
毎日を反復だと思っている時点ですでにエンドレスループに飲み込まれている。
こんなにもみじめでつまらない人間に、育ってきてしまった。

明日は今日とは異なるのだから。毎日が非日常なのだから。
人間は一人ひとりことなるのだから。万人が特異なのだから。
わかっていても。未熟さが目について仕方がない。
途方もない損失。どこまで遡ればいいのだろうか。
いや。きっと何度やり直しても同じことだ。また同じことわりを外す。
たったの一回や二回選択を誤っただけでこんなところに来たりはしない。
山の輪郭も川の流れも生物の進化も。長い年月をかけてしかるべき形になったのだから。
なんて、端から決めつけて何も変えようとしていないだけじゃないか。

だから逃げの手段として諦めることを覚える。

2005/08/30

埋め合わせたり取り繕ったり。見苦しいくらいに。

忘れていた。
何もしないことが罪になる。看過すること。傍観すること。
自分からは手を下さない。関与を否定する。自分には関係ないことだと。
それでどうして善人ぶってなどいられるのか。
手をこまねいている間にも、世の中は徐々に蝕まれつつあるのに。
死に絶えて、失って、汚染して。誰も見て見ぬ振り。
悪事を働く人間がいるからいけないのではない。
悪事を咎める人間がいないからいけないのだ。

こんなになるまで放置しておいて、今さら何を取り戻せるだろう。
捨て去ってきた時間は戻らない。糸をたくり寄せた先には何もない。
それでも、出来る限りのことをしなければならないと思った。
永遠に闇に閉ざされた歴史をいくつも見てきたから。
連絡を怠って、努力を忘れて、埋没させてきた無数の人間関係。
もうそんなのは嫌だった。
目の前で何か大切なものが断ち切られていく瞬間を、二度と見たくはない。
そのために修羅の道を遡るのか。誤っていても。

今日が365分の1だなんて、悠長なこと言っていられない。

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