[むかしのなぞ] 2004/12

2004/12/02

ただ自分勝手に小うるさく騒ぎ立てただけ、としか映らないだろうな。

オンラインでの意思疎通はより慎重を期す必要があるなんて、当然のことなのに。
いつも独り善がりなことばかり。自分だけが満たされればそれでいいなんて。
そもそも自ら手を広げたこと。収拾がつかなくなった責任を放棄している。
忙しいのは自分だけじゃない。誰だってその中で時間を工面しているのに。
結局そうだ。自分に余裕があるときしかまともに相手をしない。とんだご都合主義。
滞りなく流れている時間も、月日を重ねて積み上げた秩序も。
ぼくがいい加減な態度ばかり取るから、みんな振り回して、台なしにしてしまう。
他人のことなど考えずひたすらはしゃいでいた履歴が、馬鹿だと語っている。

だって、自分でさえ自分のことを疎ましく面倒な人間だと思っているのに。
どうして人に好かれているなどという果てしない誤解を生じえようか。
こんなことばかりだった。どこに所属しても誰と手を組んでも上手くいかない。
きっと他人と協調するという社会的な本能が欠如しているのだろう。
どんな作業も聞くより先に黙々と進めて、意見を交わすことをしない。
自分のしていることが正しいかも確認しないから、重大な問題を起こしては窮する。
集団の和を乱し波長を狂わせる。だからいずれ、どこにも居られなくなる。
初めから何かに参加などするべきではなかった。抜け殻となって思うだけ。

時間が経てばおのずと離れていくものだから。みんな離れていくから。

2004/12/06

形は違えど、自己顕示欲という意地汚さの本質は免れない。

自分は頑張っている、なんて声高に叫んでも聞き入れてはもらえない。
成果至上の社会。黙っていい子にしている人間が褒められる世の中。
わめいたところで煙たがられるし、関心を寄せられることもない。
それなのに人は、自分を見られたい、わかってほしいと思いたがる。
だから、体裁を捨ててひたすら目立ったことをして気を引こうとする。
なんと幼稚なことだろう。家出をして家族を心配させるのと変わらない。
悩みや愚痴や欲求不満。それを自分だけの不幸と思うからいけない。
失業保険なんてお情けがあるから、誰も勤続に躍起にならなくなるんだ。

ある者はブログにヘドを吐きつづけるだろう。
ある者は涙ながらに生活相談を訴えるだろう。
ある者は車体を改造し爆音を轟かせるだろう。
ある者はカッターナイフを懐手に握るだろう。
ある者は教壇の声にあざとく首肯するだろう。
ある者は右手を挙げて無実を答弁するだろう。
ある者は博打の戦果を言いふらし回るだろう。
そしてそれを、圧倒的多数が黙殺するだろう。

誰もが本来の目的を忘れ腰を振る。ぼくは染まるまい、と誓っていたのに。

いったい、今までしてきた努力は何だったのか。
困難に立ち向かおうとせず、背を向けて抜け道を探してばかりで。
楽をしようと平坦な道を選んできたから、何でもない坂道でつまずいている。
悩みや苦しみにあえて身を浸してこそ、本当の享楽に行き着けるのに。
昔はそうだった。どんな艱難も辛苦とは思わなかった。
険しい山をよじ登る過程を心底堪能し、どれほど楽しみを覚えたことか。
それがどうだ。退屈に疲れ日課もままならない。かく汗は冷や汗だけ。
鞭打った痛みも喉元過ぎれば。神経が働いていないのかこいつは。

人生をわかったような振りをして、とっくに出遅れている。
がむしゃらでいられた時間を、取り戻したいだなんて。今さら口をつく。
ぼくは何も経験していない。絶対的に、この世界を知らない。
今まで何をしてきたか、なんて。無責任極まりない。自分の過去だろうが。
一刻の猶予もならないような年齢になってから、なぜ気づいたりするのか。
もうルートは決まっているんだ。世間が負け犬と揶揄する老生が。
これまでの機会を無駄にしたから。自分を深める精錬を怠ったから。
なめてかかっていた人生の重みに、今押し潰されそうになっている。

苦労は他者に誇示するものではない。自らの勇気に直結する源泉なのだと。

2004/12/09

こんな怠惰な生活をいつまでも続けられる保証はないと言うのに。

今までぼくは、何に取り憑かれていたのだろう。
栄光などなかった。すがっていた過去はみな驕りが見せた幻だった。
居場所などなかった。この身を匿っていたのは砂の城だった。
ついていた箔が剥がれ落ちたのではなく、元から虚勢の塊だったのだと。
右から左の模倣で溢れた、取るに足らない美談にばかり酔っていた。
珍しくもない身近な事件にこの世の光と闇を垣間見たつもりでいた。
とても小さい人間だ。器が浅い。視界が狭い。そして世界を閉ざす。
無論、それに気づいたところで何が輝き出したりするでもない。

地図さえも持たないで。ただ一人、目的地を見失っている。
それは、本来行くべき場所があったのにそこに辿り着けないでいるのか。
それとも、最初から向かうところなどない流放の旅だったのか。
どこに行けばいいのか。何を探すのか。誰が道を示してくれるのか。
月明かりが差し込む薄明るい部屋は、あと3時間足らずで朝を迎える。
今日もどこにも行けなかった。着けなかった。さ迷う日々。
これが現実、と自分に言い聞かせるとなおさら虚脱する。
短くて深い眠りの最中になってようやく、ぼくは仕入れた地図を広げる。

いっそ壊れてしまいたい。その衝動を抑止する理性とは何なのか。

2004/12/11

贅沢な悩みと思うだろうか。くだらない悩みと思うだろうか。

楽しそうな電話の向こうの笑声が、とても遠く冷たく聞こえた。
こんなにも剥離してしまった。否応なしに突きつけられる劣等感。
時間が自分だけを置き去りにして急速に流れている気がする。
他人の成功や幸福を妬む気持ちが心を逸らすのか。
それとも、偶像と暴かれきった優越をまだ信奉するつもりなのか。
とても敵わない。追いつけない。豆粒のようなちゃちな自分には。
張り合ったり、交流したり、それはきっと一方的な思い込みだった。
誰もいない闇に向かって話しかけたり相撲をとったりしていた。

自分でもみすぼらしいと思う。かつてのように弱体化した精神を。
どこに出かけても、人と会っているときでさえ、心は空っぽのまま。
弱々しく伸ばした腕で抱き止めるのは便器代わりのお伽話。
何をやっているんだ。女の尻を追いかけ回しているのか。
廃れた性根をどうにもできない愚かさによけい嫌気がさす。
潰れていく。萎れていく。うな垂れていく。沈んでいく。
これではうつになるかもしれない。なるかもしれない。なるかもしれない。
もう、なっているのかもしれない。

自分をわかってほしいなんて、二度と口にしてはいけないこと。
表面的なものや趣味の話ではない。奥底に渦巻く混沌。
委ねてしまって、ぶちまけてしまって。後悔の罠から逃れられない。
けれど。ひとり振り回されてばかりいる姿が、どうにも馬鹿らしくて。
許されないことだから、一層そこに真実を追求する。すべての解を。
必要性。生きるために必要なものの存在を、どこかで信じてやまない。
それなのに不信感のほうが強くなっていく。拒絶への逆恨みか。
人を憎むようになったらそれこそ何もかもが終わってしまうのに。

ぼくが病んでいるかどうかなんて他人にはどうでもいいことなんだ。

2004/12/17

具体的記述を避けていては具体性を伝えられないが、具体的記述に頼ると具体性が受け手の首を絞める。

新しい朝が来た。非望の朝だ。
起き上がれば、あとは出掛けて帰って眠るだけのジェットコースターが走り出す。
それが居たたまれず悔しい。何も波風立たない時間の流失がもどかしいから。
だから、時計の針を止めてしまった。けたたましい電子音が鳴り渡る前に。
こうすれは日は昇らない。ただ年老いるだけの自分に直面しなくて済む。
なんて子供じみたことを考えるのだろう。目の前のことを面倒臭がっているだけだ。
そうではない。とぼくは言い張るだろう。これは日常からの逃げではないのだと。
自分から離れていくさまざまなものを、ほんの少しでも引き止めたいのだと。

人生が寂しいかどうかなんて、考えたことがなかった。
今の生活に満足しているかなんて、疑問にも思わなかった。
一度落ちた穴からは、そう易々と抜け出せない。ぐるぐる渦巻く蟻地獄か蝿取り紙か。
どうしようもないと、どうにも変えられないと知って、それでも悩んでいる。
心が灰色に染まったとき、以前ならば発散させる手立てをいくつも持っていた。
仕事や趣味に没頭することで気持ちを紛らわせた。紛らわせていた、はずだった。
今はそれも叶わない。何をしても、何を見ても。
やる気が起こらない状態というのは、話に聞く以上につらくて口惜しいものだった。

無能さ、偏狭さ、古臭さ、そして孤立。自分のことをまるで掌握していない。
正義なんてかざすからこんなことになる。愛なんて語るからこんなことになる。
力を持っている自分、同意を従えている自分、みんな偶像だ。くべて燃やされる薪。
赤い炎にたじろぎ戦々恐々とする。それが現実の姿だと、目を見開かねばならない。
己の愚論を封印する抑止力を、臆病という言葉に置き換えていたに過ぎないのだから。
この人格は不幸を招く気性を保有している。それは疑えない。
だから口をつぐまねばならない。それのどこが誤りであろうと言うのか。
とことん小心者であれ。悶えてろ。

どこまで走っても思い描く結果なんて得られない。幼稚な頭脳は信じなかった。
夢だの希望だのを口にすることを恥ずべき年代に、とうに到達しているというのに。
甘い物語がいつか自分にも訪れるだなどと。それ自体が変質的淫欲なのにはばかりもせずに。
ぼくには常識の欠片もないのだと気づいた。人とつきあう上でのいろはも並べられない。
罵言を浴びせても無意味。言葉が通じない。中傷も頭の中で都合よく再変換する。
さぞかし疲れるだろうな、と思う。こんな人間の相手をするのは。へりくだりもしない。
セキュリティの設定がいかれているとしか思えない。表出と遮蔽が場に即しない。
これらは後悔ではない。警鐘だ。背信によってむざむざ引き裂かれるであろう良心の末裔への。

意味なんてわからなくていい。噛み砕きもしない。ただ順調に内諾が進行しているという近況。それだけ。

2004/12/19

差し引きゼロにも達していない赤字経営を続けていることの責を問われないわけがないだろう。

些細なミスで信用を失う。政治も企業も、個人の人間関係だってそうだ。
それまで紡いできたものを嘆いても届かない。罰も咎めも、何にも代わらない。
考えなければならないのは、それが本当に予想されぬ偶発的なものだったのかということ。
不正を生み出す体質になっていなかったか。漏洩を防ぐ警備は万全だったか。
おそらく組織的な温床が見つかるだろう。火のないところに煙は立たないのだから。
内部の不祥事に自分で対処できない。そもそも過失を過失と認めようとしない。
悪びれない横柄さが、さらに体質を悪くする。気づかぬうちに暴言を繰り返す。
方針を定め舵を取るブレーンにそもそも欠陥があったのではないかと疑わざるをえない。

まったくだ。
誠意を欠けば人なんてすぐに離れていく。
上からものを見る態度など決して取ってはいけない。
何がいけないのか、ちょっと考えればわかったこと。
相手の話に注意深く耳を傾けようとしなかった。
反応を見て自分への批判だと受け止めようとしなかった。
無謀な野望に独断で飛びこんだワンマンプレー。
そして、誰もついてこなくなった。

苦境に立たされたときこそ大胆な改革が必要、なんてそれこそ現実を無視した暴政でしかないのに。

2004/12/20

ぼくが最も怖れるもの。それは人生の一部を失うこと。

審判は誰かが下すものではない。それはわかっているけれど。
どうにも卑屈になってしまう。どうにもひれ伏してしまう。
自分が歩んできた足跡をいくらかでも残したい。見つけたい。
地面に這いつくばって証を掘り起こそうと地面を掻く。
おこがましい姿だろうか。過去に執心しすぎているだろうか。
だがしかし、何も残っていないと知ったら悔しいだろう。
ここまでの道のりが、宣告によって瞬時に無に帰すのだから。
積み上げた足場を失って落伍する。途方に暮れもする。

たとえば、この一年間がまったくの無駄だったとしたら。

喩えるなら、わがままに振り回されていただけのこと。
違う。ぼくを振り回したのはぼく本人の虚構だ。
不必要な敵対心を抱いて心の間にバリケードを築いた。
広大な砂漠を走り回って地雷除去に奔走した。
それだったら喉も渇く。苛立ちも募る。だから放棄する。
一人で勝手に不満を溜めていただけだ。完全自滅型。
そして、怖れていた悪夢など来ないことを知るだろう。
永遠の凍結という最悪の結末をもってして。

その瞬間、すべての行いが煙草の灰のように崩れる。

失望は自分自身を否定される痛みにほぼ等しい。
そう。その裁定を突きつけられたくなくて目を覆う。
能面も、脆さも、裏切りも、冷淡な本音も。
こんな変人を本気で相手にする者などいないことも。
ぼくはみな知っているから。だから食ってかかる。
だって世の中おかしいもの。ついていけないよ。
そんなに簡単に他人を拒めるの。嫌いになれるの。
みんなのルールに甘んじて輪に入れってほうが無理。

断たれるか自ら断つか。どのみち共存する道はない。

ぼくはどうすればいい。
理屈の狭間に閉じこめられてしまっている。
押し通すことも引き返すこともできない状態。
宙ぶらりんの状態。首を吊られて生き地獄。
この苦しみも生のうちだなんて悟れっこない。
死を乞うまでの失意を、あと何度味わうのか。
その見積もりさえも立てられない。
あともうちょっと、恋々としていようか。

ぼくが最も怖れるもの。それは人生が確約されること。

2004/12/23

目論みは、それを看過されているかのように何度でも打ち砕かれる。

渡せなくなった物を抱えたまま、どうすることもできない。
後悔すると知って無駄な買い物をして。わかりきったことなのに。
なぜ刹那の高揚感に囚われるのか。幻に魅せられるのか。
いつもいつも同じ罠にかかって。同じ穴に落ちて。懲りもしない。
思った通りに事は動きなどしないのに、何を決めつけるのか。
自分はどこも変わっちゃいない。唱えるほどに哀しくて。
弱さと向き合えずにいられたら、どんなに無垢であっただろう。
人を信じられない苦しみに苛まれることもなかったろうに。

荒らされたような室内を、ぐるりと見回してみる。
すぐ電力を空にするテレビのリモコン。
かたや一向に減らない風呂場の石鹸。
座る姿勢が悪くて背もたれが曲がった椅子。
埃と湿気が重く重なるテーブル上の地層。
不要品を押し込んで開けられない押入。
腐った野菜から這い出て壁を登る芋虫。
ひとつひとつが、この身の惨状を的確に形容する。

何もかもが、想像を上回るスピードで目まぐるしく深化を続ける。
いや、そもそも変化が起こることすらも予想してはいなかった。
自分と自分を取り巻く環境は、ずっとこのままなのだと。
くすぐったいような心地よい気持ちのままで、居られるのだと。
バカみたい。そんなこと。期待するようなことなどないのに。
愚かな言動と妄想がいずれ自分自身への妨げになろうことも。
すべてに目をつぶって、盲信的に反戦なんて訴えたりして。
火蓋を切ったのはぼくのほうだったことも忘れている。

策を練る講釈こそ最たる無駄だとも知らず、また自責点が積み上がる。

2004/12/25

同盟を破って、許されないことをした。

誰の言葉に騙されたのか。何も知らずに浮かれ気分で舞い上がっていた。
どれほど綺麗なストーリーを紡いでも、結末のその一言で台無しになる。
そういうこともあるのだと。その一点から世界がめくれ返ったかのよう。
とぷんと心に沈んでいった欠片を、手を伸ばして拾い上げることもなく。
小さなしこりとなって残っている。胸をまさぐり手荒くかき乱す不純物。
温かい気持ちの中にわずかでも違和感があると、雰囲気に溶け込めない。
ただ一人、退場を命ぜられたように目を醒ます。突きつけられる肌寒さ。
この世界は理想という楼閣。そう願う自分の脳内こそ楼閣だというのに。

何かが芽生える日。そんなのは、いきがっている愚かな小僧の思い込み。
越えてはならない境界がいくつもあることを、知らなかったはずはない。
空気に飲まれたのだとしたら、自分を抑制しきれなかったことが問題で。
飲まれていないのだとしたら、やみくもに暴挙に及んだ無謀さが問題で。
簡単すぎる答え。自分は何も望まれていなかった。特別な存在ではない。
それを悔しいと思うことがそもそもの罪なら、もうここには居られない。
それは、出会った時点で道を踏み誤ったということを意味するのだから。
願いつづけること自体を否定されるのなら、魂は求心力を失い塵となる。

何かが弾けて、何も考えられなくなった。

目の前にあるものをただ欲しがる。純粋だからたちが悪い。純然たる罪。
もう、この期に及んで同情を買うような泣き言も無用だとわかっていた。
なめられたものだ。見下されたものだ。失意が諦めに、虚脱感に変わる。
一旦吹っ切れると理性が飛ぶみたいだ。どうとでもなれと思えてしまう。
実に愉快な精神状態。ある種の興奮状態。凶悪犯の心理に近いだろうか。
復縁を断られた逆恨みで、なんてどこででも耳にするような安い動機で。
脱皮など造作もないこと。こんなにもあっけなく内なる殻を突き破れる。
手に入らぬのなら、どうせ嫌われるなら。いっそ何もかも毀れてしまえ。

どれくらいの時間が経っただろうか。一瞬の白昼夢のようにも思われた。
恐怖も罪悪も何も感じない。黙らせてやってしまえばもうこっちのもの。
今日で一切の関係が削がれる。この絶望より重い後悔を味わわせてやる。
言っただろう、ぼくは悪人だと。信用を裏切って平然と笑っていられる。
言葉は口に出さず侮蔑的に見下ろすのみ。蹂躙こそ支配欲を掻き立てる。
ずっといらついていた。悶々としていた。こんな生殺しのような毎日に。
だからちょうどいい。これは遠く望んだ行為。そして、遥か望んだ結末。
軽んじられる日々に耐えられないからこの手で汚して終わりにしたんだ。

願いが叶って、闇はいっそ清々しかった。

2004/12/26

あんなに怯えていた無を自ら引き寄せた、その後始末。

部屋の片づけをした。
一応、いつここから連れ出されてもいいように。
背骨を取り去った残りなんて、ただ肉が漂うだけみたいなものだが。
あれは最後の島だった。禁欲という絶対使命を、果たせなかった。
そうしてむざむざと別れて。本当に、何もなくなってしまった。
希望も絶望も、期待も後悔もない。炎のように冷たい。
刻まれる一分一秒が針となって肌に刺さる。
結局この日、扉を叩く者は現れなかった。完全に切れたようだ。

新しいバッグを買っても、草花の写真を撮っても。
電話で話をしても、漫才のコンテストを見ても。
どれひとつとしてぼくの心を弾ませてはくれなかった。
今までどうやって余暇を送ってきたのか思い出せない。
これまでの人生は今の自分の創作ではないのか。
楽しかったはずの記憶に、どうしてか感覚が伴わない。
こうしてひとつひとつ忘れていくのだろう。
薄情者。その通りだ。情けは人のためにならない。

こんな自分でも、案じてくれる友だちはいて。
家族のことや、ぼく本人の不調のことを。
嬉しく思うのに。その声にいまだ返答できずにいる。
どうしてせっかくの厚意を大事にできないんだ。
どうして人の気持ちを踏みにじってばかりなんだ。
同じ裏切りを、自分自身でも被ってきたというのに。
虐待の連鎖か。暴力にまみれた汚辱を暴力で埋める。
苦しみをわかってほしくて最低な行動に出る。

自分なんか消えてしまいたい。消してしまいたい。
明瞭にその考えに至ったのはかなり久しい。
具体的な手段はまるで思いつかないとしてもだ。
あんなことをしておいて、平静でなどいられようか。
罪の意識に駆られはしない。ただ逃げるために。
積極的に望みはしない。しかし待望論なのだと思う。
消えたっていいって思われているんだきっと。
生気を失った精神に、魅力も人徳も残っちゃいない。

是か非かではない。これは自らに科した終焉のかたち。

2004/12/27

出会ったという事実を抹消できないのならば。
めちゃめちゃにした傷跡も永劫残るであろう。

好きになってはいけないものばかり好きになってきた気がする。
そのあたりの論理を摺り合わせられる人は、もう誰もいないと思う。

誤解しないでほしい。そのずっと前から心は壊れていた。
今日はギャグじゃない。初めて何も隠さなかったから。

ぼくは帰らない。どこにも帰らない。帰るのではない。
勝手に持ち出したこの個体を、しかるべき土地に返しに行くのだ。

セピア色と一口に言っても、その色彩は何通りもある。
これまで見ていた写真も、まったく違って見えるようになるだろうか。

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