[むかしのなぞ] 2003/08

2003/08/01

もう聞き飽きた。

言われなくてもわかっている。
けれど、どうともできないから悩んでいる。
悔やんでいる。
同じことの繰り返し。なじるだけなじって、改めようとしない。
成長していけない。
大人になると身体が固くなっていく。
頑なになっていく。
これでも励んでいるつもりなんだけれども。

そしてまた頭を下げれば済むと思っている自分。

2003/08/03

もういいよ。
投げやりになっているのではないけれど、もういいんだ。

膠着状態に耐えきれなくて、いつも先に引き金を引いてしまう。
脳天をぶち抜かれたって痛みも感じないんだ。ぼくは。

幻象の中で抹消しているのか。
現実の世で抹殺されているのか。
存在そのものが消されてしまう。
それ以上の絶望が与えられようか。

報いを、受けるべきなんだ。
記憶を、また閉ざすべきなんだ。

失ったのではない。手に入れられなかっただけ。
解放されたのではない。処分が保留されただけ。
傷を負ったのではない。回避して疲労しただけ。
見捨てられたのではない。振り向いてもらえなかっただけ。

そう。何も不幸なことなんてない。
何も悲しいことなんてない。
自分に不相応なものを高望みさえしなければいいから。
社会の最底辺の地べたを這って生きていけばいいから。

悲しくないって自分自身に信じこませようとしている姿は。
端から見たらさぞ悲しげに映るかもしれないけれど。

疑いたくない。疑われたくない。それが本音。
ただ、一度ついた不信感はなかなか拭えないから。

2003/08/27

まだ帰れそうにない。

無邪気だったころは毎日が待ち遠しくて、夢や野心だけで食っていけた。
自分が幸福であるかどうかや、存在理由などを、考えることさえ思いつかなかった。
大概にしてその状態がもっとも幸福なのだろうし、何より必要とされていたのだろう。
立ち止まることや疑うこと、他人と比較することを覚えてしまうと、とたんに迷う。

今日も雨が降る。
じめじめと黴びていくように、風通しの悪化した心に空気がたまる。
泣きはらした顔と向かい合っていても、胸中は案外すっきりしているのかもしれない。
かたや、体内に直接染みこむように落ちてくるこの雨滴は何だろう。

不憫だと思ってはいけない、ということは承知している。
それでも、因果の網を幾重にも羅ねることをやめられない。
何か非があって、そしてこんな目に遭っているのではないかと。
どんな大河だって、太古に宿命づけられた道筋をただ沿うているのだから。

言葉を荒げたり誹謗ることは骨折り損だからしないけれど。
まったく異質の液体を混合したときのような違和感。分離。沈澱。
途切れさせてしまえばよかった。途絶えさせなければよかった。
掃きつづけることでしか絆されないのならば。

時間に追われて葬ってしまった拙文たちに、とりあえず遺憾の意を表明。

2003/08/28

ぼくはいまだに、ぼくの失言のせいで死滅したことを疑わない。
ぼくはいまだに、庇護から釈放されて往生していることを疑わない。

ここから出ていくなんて選択肢は、はじめから考えに入っていない。
いかに虐げられようと、泣き寝入りするしかなくても、看板を偽らない。

守るために、必要に迫られて、愛していると口にする。
闇雲に封じるのではなく、ここぞというときにだけ。

その見極めが難しい、なんて一般論に逃げないでほしい。
社会復帰と日常生活の奪還を見据えて正対面しているのだから。

2003/08/29

国内で年間3万人以上も自殺しているというニュースを聞くと、自殺しようなんていう気がまったくなくなるよね。

2003/08/30

嫌われている、かもしれない。

ぼくが気にしすぎているだけなのだろうか。
言葉の端々に棘があるように感じられてならない。
相応の評価だろうとも思うけれど。
自分を磨いたり改めることを知らない、ださい人間だから、好かれる要因のほうが少ないに決まっているし。

他人の目、世間の目、それなりに気になるものだけれど。
自分が相手のことを気にかけているほど、評価されることを望んでしまう。
自分から見える自分。外から見える自分。絶対量としての自分。何をもって取り繕うべきか、この虚ろな内面を。
お互いにイメージとイメージとの代理戦争。

怒鳴られることを怖いなんて思わない。
もっと冷たく惨く酷い仕打ちを、知っているから。
血が凍り骨が軋むような、絶望の、絶望の、拒絶を。
だから面と向かって自分を否定されるとどれだけ胸が熱くなるか!

手綱を握っているわけでもないのに。
紡がれる言葉のひとつひとつに、ぼくは一喜一憂し、躍り踊らされる。
頭の中に仮想敵を設定し対峙することで満足しているのではない。
実際に、いがみ合って、こういう人間は嫌いだと言い合って、相手の主張を潰し合って、そして最終的に自分にはない魅力を求め合っているのだから。

まだ手もつないでいないというのに。

2003/08/31

どうにかここまで歩いてきて、ようやく生きることの重さを知った。

見渡したときから、海は冷たかった。
触れて火傷をすることもなかった。
だから、思い出さずにすんだ。
五感も第六感もすべてが畏敬している恐怖を。

絶望の中で生きなければならない、恐怖を。

パイプラインをどれだけ確保しても。
動脈をスパッと切ればひとたまりもない。
悲しみなど知らぬ素振りの日常とさえも隣り合わせの。
抽象的な死の恐怖を。

あらゆる望みが絶たれたという意味での、死を。

どうとも思っていなかったはずのこと。
むしろ自分から切ってきた。灰にしてきた。
どんな社交的な気遣いさえ、ぼくには受け取る権利などなかった。
一瞬は、すべてを捨てかけたのだから。

ただ一点を除く、すべてを。

歪んでしまえることさえ不思議ではなかった。
頼りきっていることにも気づきもしなかった。
全出力が集中した経路に膨大な負荷がかかる。
飛躍。短絡。俗に言うショート。閃きは火花と散る。

漏洩する電解質。

この毒々しい液体が、自分の正体なのだと思った。
感染の心配があるから迂闊に触れられもしない。
潜在的なエネルギーを見た。
それは多分に、これからも他人を傷つけるであろうもの。

そして自らを破裂させるもの。

善行を繕ったって、到底消せるものではない。
だから、この苦しみと生きていくことにした。
せめて認めて生きよう。隠さず生きよう。
過不足なき自己表現と、腐した幸福の数とを。

血縛の原罪を。

今が「危険な状態」であることは、大まかには感じている。
謝罪の文意を含ませずに、お詫びのメールを書いた。
多くのものに支えられていることを忘れてはならない。
必要とされなければ生きていけない、弱い人間なのだから。

狡猾な、人間なのだから。

心を引き裂かれることは体を引き裂かれるよりはるかに悲痛なことだから。
それを知って、震える指先で、厳重警戒の中触れていくのだろう。
何もわからない。わかっていない。わかってあげられない。
体をちぢこめて身を守るスタイルで、背中を向けたまま接している。

握り返してくれるその手を、待っている。

ぼくは許されないことをいっぱいしてきたから。
たとえ今の自分が更生していようとも、償いを葬ってはならないから。
余生は、そのためにあるのだと思っている。
ぼくが自分勝手に使ってよい時間なんて、どこにもない。

安堵する場所も、ない。

目の前にあるものを追えずにいる。
対外的な臆病ではなく、強迫観念としての避難が両足を凍結させる。
この身から次はどんな赤汚れた錆が出てくるのかと思うと。
無理にねじ切れば、どれだけの骨肉が削がれるのか。

気持ちが、届かなくなってしまうのか。

失敗を怖れているだけだということもわかっている。
それもこの世にごろつく千差万別の不遇に比べれば取るに足らない程度の。
それでもけじめはつけなければならない。
一度見限ったものをまた手に入れようなんて身勝手な行為、自分の中の正義が頑なに受け容れない。

自虐的な自分に充満する正義が。

思うままのことを言ってきた。
それが最も後悔しない方法だとずっと信じていたから。
どれだけリスクの高い勝負かなんて考えなかった。
こうも損失ばかり見せつけられると、自信が揺らいでくる。

人生が、揺らいでくる。

たったひとつの約束を守れば、もう何にも苦しめられることはない。
過ちも犯さなくてすむ。自分の中のルールも侵害されない。
浮き足立つことなく一歩一歩たしかな足取りで、また生きていける。
だから、さんざん重ねてきたただ一種類の後悔を、二度と繰り返さない。

もう誰にも、ぼくの心を開かせない。

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