[むかしのなぞ] 2002/09

2002/09/01

少年のままのまなざし。
こんなに遠くても、こんなに断たれても、その色はちっとも失えなかった。
とりあえず、かろうじて放棄することをせずにすんだ。
投げ出しているから終末的なのではなく、投げ出せないでいるから自滅的。
自分自身まで見捨ててしまうのは、あまりにも惜しくて。
かんたんに心の整理はつかないかもしれないけれど。
じっとしていたら死期が迫るだけだから。
還れる時間の存在が、当面のぼくを支えてくれるのかもしれない。

2002/09/02

やはり完全には封じられなかった。
乖離と虚脱の果てに、すこしの影が残った。
図々しさと攻撃性をもった、最小サイズの常駐。
自分に勝つには、強くなるには、この妥結しかなかった。
すこしだけ冷めた温度。
すでに始動した執心と邪欲。
自ら直視できない、やっかいな荷物を増やすことになっても、今は。
これでよかったのだから。

強い力を超えるさらに強い力。
どんな劣欲も、それ以上の理性で抑えてしまえば。
どんな絶望も、それ以上の希望でうち消してしまえば。
いくつもの方法をすでに知っていること。
そして、いちばん信頼しているもの。
ことばはやさしく、すべてをつつみ、からだじゅうをかけめぐる。
そのときはじめて自分自身の力となる。
吐露するための依存ではなく、進歩するための共鳴。

2002/09/03

ずっと探していた。
電子レンジでなんでも温められる時代、けれど本当にほしかったあたたかさはそんな機械的なものではない。
こころがぬくもる感覚を、ときに火照るようにあつくなる瞬間を、知ってから。
表現を欠いても、末端に到達しても、また抱きとめればいい。
はじめから、目を背けるべき現実などどこにもなかった。ものさしがわりにもならない嫉妬心なんて、みにくいだけ。
かけはなれた属性ばかりではないから、振り払う理由はどこにもないから。
本当に探すべきものは、だれかじゃなく、自分の中にあったんだ。
いちばんよわくて、つよいこころ。まもっていたいから。

2002/09/05

自分でも気づいていなかった無数の予測に驚くばかり。
すべてが、予想内の行動であり、想定範囲内の現象であった。
つまりは確信されていたということ。
悪いことをしてしまうのが悪人ならば、悪いことを悪いことと知っていて意図的にするのは極悪人だ、なんて文句があるが。
過度のストレスも、その反作用としての懺悔も、いずれ破綻するときも、どこへも行けないことも。
みんなそのとおりになった。
その落とし前として、重い鎖をつながれて、ずるずる引きずってのたうつだけの、敗北感。
夢の時間から強制的に引き戻されたような不愉快な朝。

あたらしいページをめくって、すきなところから書きはじめよう。
その場所をあらたなスタートにすればいい。
カレンダーのきょうの日付をぬりつぶそう。
うまくいった日はかわりにはなまるを書いてもいいかもしれない。
どこへつづくかなんてだれも知らないけれど。
生きてきた時間、のりこえてきたこと、ここにあしあとをのこそう。
がんばった数だけ、しるしをつけた数だけ、自分のことをわかってあげよう。
すべてのきょうは、あしたのぼくをつよくする経験値になるから。

2002/09/06

質問が飛び交っていた。
ことばを待たなくて、自分の言いたいことを一方的に投げつけるだけ。
こんなことでなにがつながるのだろう。つながっていたのだろう。
自分の愚かさは自分では気づかないものだ。

夢と希望と現実。
思い出せる日と、忘れられない日が、交互に過ぎていく。
世界ののこりのどこにも、目移りすることなどない。
なにかはなにかのかわりにはならないのだから。

きっと渡すことはない。
隠すだけでは、おそらくまた弱さを見せてしまうから。
還流ではなく自己への充填。そういう実現もあるのだと思おう。
まだ見ぬ場所を、夢想しているだけではいつまでもたどりつけない。

同じことのくりかえしの毎日に、ため息をついたって。
ここから出ていきたいとか、離れたいとか、ときには思うことも。
けれど居場所は、だれかが作ってくれるものではないし、だれかが奪ってしまうものでもないよね。
自分の意思で、自分なりのありかたを形成して、生きていく。

2002/09/07

名乗り出られない理由。
痛めつけるように強く強く踏みつけた。いつくもの足跡に汚される。
こんな誇示は何の実現にもならない。ふさがりかけた傷をえぐる。
希少価値などない。
悔しかっただけ。情けなかっただけ。鬱憤を他人にぶつけていただけ。
統計に固執しているのは、低俗にまみれているのは、自分だった。
打ち明けられない嘘、罪、儘。
見えないところで、あるいはよく見える場所で、崇めつづける、犯しつづける。

状況を、肝心なものを、何もわかっていなからこんなに冷酷になれる。

ぼく本来の立場からすれば、もっと喜ぶべきなのかもしれない。
どうして憂うのだろう。心を歪めるのだろう。かなしいのだろう。
美しいから、褪せゆくことはないから、こんなに胸に突き刺さる。
あのとき何もできなかった後悔。
その不徳が今は厄災となって牙をむいた。それだけの自明な因果。
企業が一度喪失した信頼を回復することが困難であるように。
かつて歩いたラインまで、今はこんなに遠く、重く、まだるい。
誰も待たなかったはずの略奪が、暴徒化して、この糸を引き裂く。

2002/09/08

もう復元できなくなっていた。

戻る必要はなかった。戻ってはいけなかった。
同じ過ちを繰るのではなく、リブートして書き直すことを選んだ。
最低限の、融通の利かない学習機能。バカのひとつ覚えのごとく反復するだけ。
一度止まった歯車を、錆びついた接合を、また動かすには。
どんな後悔でも謝罪でも埋めつくせないのなら、懇願するしかない。
本来許されるべくもない禁忌。本来与えられるべくもない代物。
隠したままの、怯えたままのひとことを、発することも、待つこともなく。
揶揄されようとも、これが最後の贖いだとでも言わんばかりに。
今のこの気持ちは、この時間が終わったらどうなってしまうのだろう。
すべての道程を走破したら、その先に何が待っているというのだろう。
あいかわらず掴みどころがなくてすまないね。
ぼくはぼくがこの世界を享受してよいものか、わからないでいる。

自らの箍を外すことをいつからか快楽にしてしまっていて。
音が弾けるたびに、こころをくすぐられるような感覚に陥る。
こんなに満ちているのに、晴れているのに、べつのことばかり考えている。
繊細で脆くて傷つきやすくて、砕けてしまえば元通りにならなくて、まるで。
だからうかつに近づけずにいる。壊れてしまうことに臆病になりすぎて。
これは不謹慎だろうか。
うつろな欲を野放しにしていることが蔑まれるべき非道なのか。
懲罰の執行として脳内にヴィジョンが流し込まれているのか。
区別はつかないが、それは要因か結論かの差しか意図しない。
だけれどもよくない行為であることは否めるべくもなく。
いつでも、いまでも考えてしまう。いちばん惨たらしい状況下にあって。
反対にこれだけ混じりっ気のない透き通った自分でいられたらよかったのに。

駆け足で去っていった時間のような、あまりにも疎い幻聴のおわりに。

2002/09/12

ふたつの状態を見くらべてはじめて比較ができる。
苦しまぎれの口実を、絞り出された牽制を、知ってか知らずかの日常を、目撃するたびにいたたまれなくなる。
かすかには残されていたのかもしれない。しかしそれらは主語を持たない。存在は隠匿された。
それとも裏口を、真の玄関を知るもののみの特権だというのか。
どうしてそんなふうに決めつけるのだろう。悲観することに慣れてしまうのだろう。それでも隠そうとして気丈にふるまおうとするのだろう。
えらばれなかった試作品はみんなスクラップ。でもそれを繰り返して製品は進化していくのだから。
しあわせを、すくなくとも他人と同種のそれを、ぼくは求めてはいけなかった。
同じようにこの悲しみが消えることもないだろう。いや絶やすわけにはいかない。望んではならないものを望もうとした罪を、償うための長く深い悲しみを。

2002/09/13

返ってはこない。
うつむいてもうずくまっても、空が押し寄せてくる。
まるで何ごともなかったかのように再始動する胎脈。
爆弾を抱えたまま。導火線を掌握されたまま。
それでも笑顔で握手を交わす、二枚顔の外交政策のよう。
もっと屈辱的であるはずのこと。
けれど、ほかの選択など持ちえないこともわかっている。
これも未熟さなのだろうね。

ことばにできない。
投獄中のような、拷問のような時間にも、いいことはあった。
これからの自分のための、ちょっとだけ大きな決断も。
まっさきにきみに報告したかった。
数えきれないほど言いたいことを、その機会がなくて、あるいは権利がなくて、たまっていってあふれていってこぼれていって忘れていく。
記憶は残らない。楽しくとも、あたたかくとも。記録できなければ。
ぼくはそれまで何を語っていたのだろう。自分の中のどこに語るべきものがあるというのだろう。そしてこれから何を語ればいいのだろう。
期待なんてしていないよね。

今は相違点ばかりしか目につかない。
敵わなくて、適わなくて、だから叶わなくて。
どこまで理解しているのだろう、理解しようとしているのだろう。
それすらタブーだったなんて。
自由を奪われて、言論を規制されて、がんじがらめの不文律の編み目を縫って、なけなしのパケットを食いつなぐ。それにも毒が入っていたりして。
とくに、稀薄になっていくさまを実感するのは痛々しい。
幹が削られて、木が切り倒される瞬間の映像のようで。
たったそれだけのことなのにね。

冷淡にのしかかる黒色。
忙しいのはそれだけ人に必要とされていることだと教えられたことがある。
それで考えると、今はどうだろう。
こんなに退屈で、心の中と同じに空っぽで、ただ重苦しいだけの時間。
だれからも求められていないという事実の立証か。
見放されても、言えなくても、残せなくても、大人しく誓約を遵守するしかなくても。
闇を閉ざして、心を遮って、ただ垂れ流すだけの無意味な時間を、生きよう。
それは生きていないに等しいかもしれないね。

2002/09/14

それは…いいのか?
難しい立場に身を置くことを想定していなくて。
理想を追い求め、現実を見つめ、その間隙に苦慮して生きている。
存在の実現を切望するその思念自体も、また遠方に位置しているのかもしれない。
ファンタジーを肯定しようが信奉しようがかまわない。
ただ、そのラグに幽閉された回帰性が、現実への錨があったということを。
信じられなかったというだけのことなのだろうけれど。
今を裏切ることを、失望することを、どちらが先にはじめたのだろう。

“同じように”ぼくも悲しませているのかもしれない。
正当な材料がなければありものででっちあげるしかない。
冤罪、とも呼ぶべき自壊。
後悔してしまうことがわかっていたのならば、それはだれのせいでもない。
見たものをつたえたくて。誤りだったなんて思いもしなかった。
心にとどめておけなくて、それが甘えだったし、なによりぼくの弱さだった。
だったらこんなもの、書きつづけることに意味なんかない。
どうせほかのだれにも打ち明ける気などないのだから。

2002/09/15

境界がなくなってくる。
じぶんのなかの、あらゆるものの。
すべてがおもうままにうごきだす。
同じ走査性にしたがって行きつく先は混沌。
ふしぎ、どうして、わからない、ぶきみ、きもちわるい。
すれちがいのかけらがエヴォリュートして疑念になる。
もうおわったことなのに。
もうはじまらないことなのに。

2002/09/16

さいしょでさいごのざんげ。
おとなになること自体をさもきたないことのように考えていたけれど、今にして思えばそうじゃなかった。言いのがれをしてしまいたくなるのも、問題をややこしくしてしまっているのも、きっとみんなぼくの意思の弱さだったんだろう。自分をたもてなくて、なにもかわっていやしないのに大きくなったように思いこんで、ことばのイメージや断片的な情報なんかにまどわされて。あげくにそれを世の中のせいにしようとして。
むずかしいことなんて考えたくなかった。おとことかおんなとか考えたくなかった。ひとりの人として、ひとりの人に興味をもって、知りたくなって、話したくなって、なかよくなりたかった。すきになりたかった。それができなかったぼくへの、これはいましめ。
ほんとうは今でも、自分でもわかっていないけれど、きっとそう。いつからかそういうものに感情をすりかえていた。アドヴァンストなものをねがって、いとしい気持ちと特別視を向けてしまった。いだいてしまった。それのなかにやましい部分がふくまれていなかったと断言できる自信はあっただろうか。そのことがぼくはいちばんゆるせない。けがれた心のもちぬし。だからもう会わせる顔などなかった、そう思った。
ぼくはいまだになににおびえているのだろう。これで何度たすけられたことになるかもわからないほどだというのに、まだなにをおそれているのだろう。わらうことも信じることもいまはままならなくて。こんなに水をあけられて。でも、それじゃなんのためにぼくがぼくになったのかわからなくなっちゃう。
いつも損な目にあってばかりなくらい正直で、子どもっぽい発想しかできなくて、はずかしい趣味もいっぱいあって、いきなりくらくなったりもして、こりずに人を信じようとしてばかりいて。そんなぼくをばかにしないでくれたそのとき、はじめてぼくはそういう自分をすきになることができた。はじめてぼくは、ぼくのままでいたいと思えるようになった。
きっとおんがえしの方法はひとつだけじゃないんだと思う。これからもいまのぼくをまもっていくこと、そうしてがんばっていく力をみにつけること。それまでのことを大切にしまっておいて、思い出といっしょにいきていくこと。いつか胸をはって自分を見せられるようになるまで。そのためのいまを、いまあるものを、だいじにすること。
だからとりあえずこれでおしまい。

2002/09/17

秒針の音が耳について寝つけなかったり。
あたらしい靴だとまだうまく歩けなかったり。
どんな気分のときでもおなかがすいてきたり。
そんなそわそわ。

ついでにタマネギも入れてみようかな。
昼間のぼくはちゃんとがんばっているのかな。
せかいのどれだけのことを知っているのかな。
そんなそわそわ。

みどりいろのペンでぬってみよう。
クリスタルの台座にお姫さまをすわらせよう。
いつでもとびだせるように準備をしておこう。
そんなそわそわ。

だれかが規定するものじゃないから。
じぶんで可能性をせばめてしまいたくないから。
かぎられたきょうをすこしでも楽しみたいから。
そんなそわそわ。

2002/09/18

たとえ色は黒くなくとも、それは黒塗りの開示。
知ることにいたらない。それとも知っているから、得られないというのか。
疑問符は付加されるばかり。
隠しごとをされているような錯覚をもってしまうのはなぜだろう。

野望の深淵は愚かでありつづける。
変わっていないことを安堵するのか。悔恨するのか。諭されるときを待つのか。
この危機感は破戒に通じ、ひいては絶縁に直轄する。
通釈はつづけられるべきではない。

これは日記。ぼくの心の中のせかいだから。

耳をふさいでも音は筒抜ける。
目を背けてもいずれは向き合わねばならなくなる。
すでに時間が経過してしまった感激を、どう説明するつもりでいるのか。
魔法が解けるリミット。化けの皮がはがれる。

容易な生きかたに身を置くことで何を得ようというのだろう。
生半可な希望なんかに糸口はないってことにいつ気づくのだろう。
あとどれだけ自分に鞭を打ったら本心から笑えるようになるのだろう。
若さと純心を失っていくだけの加齢にあってぼくは何を保っていけるのだろう。

2002/09/19

天使と異物。あいいれることはない。
あたりまえのことだから、かなしむ必要すらない。
どこへ行こうとしているのだろう。突飛な衝動なのか。残痕の囚縛か。
きっと“何もない”だろう。同じように。
足跡をたどるのでも、景色を追うのでもない、宿命らしからぬ意図。
糧にはなるのかもしれない。それはどちらへの?
目をつむって、風をはらって、今は自分で決めた経路をこなそう。
ぼくジャナイカラ。

2002/09/21

「未練の残らない人なんていない」。
忘れようとしたって、できなくて苦しくなるだけだから。
それよりも大切にのこしていくことをえらんで。
自分が今の自分になった軌跡を、かみしめていて。

自分を癒せるのは最終的には自分しかいない。
もう吟味する時間はじゅうぶんすぎるほど取ったはず。
心を痛めつけたってなんにもならない、かなしみがつのるだけ。
クリアな色で、因果や法則の鎖を解いて、思うまま楽しみたくて。

追われるものの立場として。
このままでいようと思ったときが、とどまるとき。
このままでいたくないと思ったときが、すすむとき。
いつでも振りほどけるように、腕の力をそっとゆるめて。

罪のないせかいに生きよう。かなしいことや、くるしいことや、むずかしいことのないせかいに生きよう。
それでいいよと背中を押してくれることばも、それでいいのと引き止めてくれることばも、ないかもしれなくても。
そうありたかった自分を、自分にとっての強さの意味を、それをつらぬくのはちっとも後ろめたいことなんかじゃない。
ただ破滅の領域に踏みこみさえしないかぎりは、どんな道も歩きかたもえらべるのだから。このせかいを生きよう。

2002/09/22

混乱も、一致も、感銘も、いまだ楽観的観測の域を出ない。
あたらしい予感なんてどこにもないと、心のどこかであきらめている。
みんな同じ顔。ハロウィンの面をつけたオブジェでなければならかなかった。
雰囲気を乱してしまったことが気まずくて、悔やまれて、自分が怖い。
和をないがしろにするなんて、なんだか自己否定みたい。
なんでもかんでも口に出しすぎてきた。余計なことも。余計な感情も。
もはやぼくがぼくである意味はない、あるいはそれを見出せずにいるのだから。
謎でありつづけよう。くちびるにファスナー、なんて古典的表現。

2002/09/23

ぼくが覚えたのは演じることだけだったかもしれない、とふと思った。
楽しいときは笑い、うれしいときは胸をつまらせ、悲しいときは沈む。
いつから自然と湧きあがってくる感情表現を忘れてしまったのだろう。
たとえ気持ちに間違いはなくても、その表出や動作はうさん臭かった。

どうして今さらその寓話に飛びこまねばならなかったのか。
拡張する可能性、交流、親和、それらはみな最悪の方向に。
ぼくが扉を開いてしまったのだとしたら、なんたる報復か。
磔。そんなものを見せられてもこころに何も感じられない。

ペンを軽く走らせてみよう。絶対座標の枠の中。
ことばが口に合わないのなら、自分でつづろう。
おいしいもの。たのしいこと。見つけてごらん。
限界はあるけれど、ある程度は自分で動かせる。

同じように消してしまうのだろうね。
明言すべきでない通告を突きつけて。
わかっている、自分で招いたことも。
今から逃げ出したがっていることも。

2002/09/24

消えない。強がりは原形をとどめない。知るよしもない。ありあわせの憶測しかできない。鳴りやまない。重みも痛みも感じない。あといくらも残っていそうにない。泣きたくても泣けない。何も手につかない。言えな い。かすんでぼやけておぼつかない。許されてはならない。自分がわからない。おかしくなってしまいかねない。もう届かない。ズタズタに引き裂かれて絶望するだけの末路しか見えない。

2002/09/25

思っていたほどの後ろめたさを感じる必要はなかった。
これが自分にとっての自然だと確信したならば、溶けこめばいい。

でもね。偽ったことはなかった。
捨てなければならないと思うから苦しくて悔しいのだと。

鬱積していって、いずれ決壊し、発狂するまで。
実は不信であることはなんら変わっていなかったのではなかろうか。

笑っているあいだだけ闇を隠せる。一時的な鎮痛。
四肢をもがれた胴体はあがくこともままならない。

2002/09/26

ぽつぽつ。じわじわ。
ちがにじむ。
いたい。いたいのかな。
あんまりよくわからない。
かんじない。いたくない。
なんだかいとしい。
ながれていくあかいなみだ。
つー。

いとをつたって。
きれて。おちる。
うんがわるかったんだね。
かぜがつめたい。
はやくわたりたい。
ふとくてねばっこい。これはいけそう。
でぐちがみえるよ。
それはくものくち。

ひきこまれる。
ゆらめき。ほのお。
さわったらあつそう。
ゆびをいれてみる。
じゅっ。
つめがとける。
かわがとける。
ほんとだ。あつかった。

ききたくないのなら。
のどをきるから。
みられたくないのなら。
めをくりぬくから。
いてほしくないのなら。
いなくなるから。
なんでもしたがうどれい。
それがほんもう。

おぼれて。
いきがくるしくて。
あしがつかなくて。
しずんでいく。
しーん。というおと。
ふかくふかくきこえる。
かすむいしき。
れいせいになれる。

きみたちのいみ。
なんでここにいるんだろう。
くじけないように。
たちなおれるように。
ふたつのじこく。
よりそわせたりなんかして。
いらないよ。
いまはただのひにくだもの。

いえたらいいのに。
うるさいこども。
だらしないおとな。
まちがったしゃかい。
くるったねっとしゃかい。
さめたきもち。
やつれたこころ。
けせたらいいのに。

あとどれだけ。
なみだこらえて。
まつんだろう。
ぼくはばかだから。
どっちがはやいだろう。
きもちにけりをつけるのと。
そのまえにちからつきるのと。
ふさわしいしにざま。

2002/09/27

目をつむると内なる世界がある。そこには甘美な理想がある。
壮大な冒険の旅へと繰り出す。剣を振るい、大空を舞い、呪文で傷を癒す。
探し求める。会えることを願う。思いどおりになる。虚像と知って。
叶えられない夢があるから、現実だけでは足りないから、隠れ家に逃げこむ。
ふたつの自分を往き来することで、はじめて意志を保っている。
はかなくて、もろくて、染まりやすくて、流されやすくて、そして弱い。
逃避であろうと自閉であろうと、心を守り、再び現実に向き合う策だった。
妄想を失ったとしたらぼくはどうなってしまうのだろう。

それは、どちらだっただろうか。
現実を見ているようで、人と接しているつもりで、もしかしたら。
なにかべつのことを考えていたのかもしれない。
たしかに実在時間だったのだけれど、その手段があまりにも無質量で。
バーチャルであること、あいまいであること、判断を狂わせる危険性。
端末に流れこんでくる情報になにを求めたのか、期待したのか。
言うなれば、前進するための決意だったのか、それとも夢のつづきだったのか。
そのむこうにあるものを、本物の姿を、見ていなかったのかもしれない。

だからあんなことを。どちらが先かという程度の議論。
見ているつもりで、見られていた、という事態。
トラップと呼ぶに足らないであろう検問に、あっさり析出される。
連ね叩いた数だけ空気が震え、それがロジックの配列を記憶する単位をなす。
すべては握られている。握られた。だから弁明の余地もない。
さびしかった、たえられなかった、それは言い訳なのか。酌量などありえない。
自力でこれだけ証拠を収集できたのなら、これ以上のデータは不要。
罪を重ねたものは地獄に落ちる。そこで償いなさい、ということ。

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