[よしのと!] よしのとけいたい

祐巳「それじゃよしのさんは、階段下りてって」
よしの「お、おう」
祐巳「糸がぴーんってなるところまで下りてね」
よしの「これでいいー?」
祐巳「うん。そしたら、紙コップを耳にあてて」
よしの「こうか?」
祐巳「ちがうー。開いてる方をあてるの」
よしの「ん……?」
祐巳「そう、そこ。それじゃいくよー」

『よしのさーん、聞こえる?』

よしの「?! な、なんかきこえた!」
祐巳『成功だね~。次、よしのさんも何かしゃべってみて』
よしの「うん……。きこえるかー?」
祐巳『聞こえるよー』
志摩子「あら。何してるの、よしのさん」
よしの「しまこがきたぞー」
祐巳「わかるよー。見えてるもん」
志摩子「ごきげんよう。……祐巳さんはスカートの中見えてるわよ?」
祐巳「ええっ?(赤面) キャーッ!」
よしの「ローアングルだからなー?」

志摩子「それにしても、糸電話なんて随分懐かしいことしているのね」
よしの「けーたいでんわだ! しまこはけーたいもってるか?」
志摩子「ないわね」
よしの「そっかー。ゆみー、しまこはけーたいもってませんー」
 はしっ。(糸をつまむ)
志摩子「志摩子は携帯持ってませんー」
よしの「?! ど、どうなってるんだ?」
志摩子「さあ。……そうだわ。携帯電話なら紅薔薇さまにかけてみたらどうかしら。山百合会の活動で特別に使いたいって言っていたから」
よしの「それはいい! よーこ! よーこー!」

 ……。

蓉子「いぬかみっ!」
よしの「よーこきた!」
祐巳「うわ、すっごいアナログな呼び出し……」
よしの「よーこ、けーたいでんわはがっこうにもってきちゃだめなんだぞ」
蓉子『よーこ、けーたいでんわはがっこうにもってきちゃだめなんだぞ』
よしの「あれ?! も、もういっかい……。いとでんわでがまんしとけ!」
蓉子『いとでんわでがまんしとけ!』
よしの「?! いとがもつれてる?」
蓉子「あはは、だまされてるだまされてる」
祐巳「もうー、紅薔薇さまったら……」
蓉子『この間の写真できたから後で渡すわねー』
よしの「あ! やっときた!」
志摩子「うずうず……。あの、面白そうだから私も……」

 

よしの「しまこー、どんなでんわにしたー?」
志摩子「私はauよ。おサイフケータイだしワンセグも視られるの」
祐巳「し……志摩子さんの口からそんな単語が飛び出すなんて……。なんか一気にイメージ崩れたよ」
よしの「よしのはなににしよっかなー」
志摩子「それだったら、よしのさんもauにしたら? 一緒だと通話が無料になるから」
祐巳「そんなケチくさいことも言ってほしくなかった……ううっ」
よしの「ごめんなさい、わたしソフトバンクじゃないから……」
祐巳「いや確かになんかそんなのあったけどさ」
よしの「ゆみはー?」
祐巳「私はこれ」
よしの「ミッ●ーマウスか?」
祐巳「くまのプ●さんです」
志摩子「祐巳さんも大概ミーハーなのね……」

 

祐巳「こうやって糸結んでも、声届くんだっけ」
志摩子「どうだったかしら。ここで止まるかもしれないわね」
よしの「やってみよーぜ!」
祐巳「そうだね。それじゃみんな、後ろに下がって」
志摩子「よしのさんも、糸がぴんと張るまで移動して」
よしの「おう! ずりずり……け、けっこうながい……」
静「ん? ……よしのさん? どうして机の下に……」
よしの「かにーなこそ、でぃーえすでなにやってんだ?」
静「今ボイトレ中なのよ。マイクに向かって歌うと、音程とか採点してくれるの」
よしの「はー、いいじだいになったなー。……ていうかそんなんでいいのか?」
祐巳『聞こえますかー?』
よしの「きた!」
志摩子『聞こえたら何か歌ってみてくれる?』
よしの「わかりました! おとこおんなおとこおとこおんなおんなおとこですね! ちがーう! おんなおとこおとこおんなおんなおとこおとこだ!」
祐巳『歌?! それ歌なの?』
志摩子『そもそもリリアンは女子校だから男子と女子が混ざって並んだりしないんじゃ……』

 ピロリロ~ン♪

DS『ただ今の曲……98点!』
静「うそっ!!」
よしの「やったー! よしの、イタリアりゅーがくけってい!」

 

祥子「あら、祐巳に志摩子じゃない」
祐巳「ごきげんようお姉さま。……ちょっと窓開けていいですか」
祥子「ええいいわよ」
志摩子「よしのさんの家の方角はあっちかしら」
祐巳「うん、そっち。ここから投げたら届くかな……?」
志摩子「ええ……私の肩ならなんとか。でも紙コップは軽いから……」
祐巳「そうだねー。それじゃ何か重りになるもの結ぶ?」
志摩子「それはいいけど、固い物だったら窓ガラスに当たって割れるかもしれないわ」
祐巳「何かいいものは……あっ、あれとかどう?」
祥子「もう……! 二人ともそんなところでコソコソと何やっているの」
志摩子「祥子さま、この祥子さま人形お借りしますね」
祥子「ええ……。というか私のではないけれど」
祐巳「いつかの騒動以来ずっとここに置きっぱなしだったんだよねー」
志摩子「では人形に糸を巻きつけて……っと」
祥子「……それで一体何をするつもり?」
祐巳「まあ見ててください。さあ、ピッチャー振りかぶって第一球……」

志摩子「とし子宇宙へ!!(ブンッ)」

祥子「何ィーーっ!(ガビーン)」
祐巳「ていうかとし子って誰ー?!(ガビーン)」

 ひゅ~~…………ぽすっ。

祥子「グホァ!!」
祐巳「おっお姉さま?! どうしたんですか突然倒れて……! し、しっかりしてください!」
志摩子「あの……祐巳さん? まさかとは思うけれど、あの人形の中に祥子さまの髪の毛でも入れた?」
祐巳「えっ? 入れてないけど?」
志摩子「そう……。もしかしたら呪いの人形みたいな効果がついてて、人形が受けたダメージが祥子さま本人にも伝わっているんじゃないかと思ったのだけれど……気のせいかしら」
祐巳「まあ下の毛なら入れたけど?」
祥子「なにぃ!!」
志摩子「……あ、気がついた」
祥子「聞き捨てならないわよ今の! 祐巳、そこに直りなさい! ていうかそんなものいつ入手したの!!」

 

志摩子「とし子宇宙へ!!(二投目)」

 ひゅ~~~~……。

 

よしの「きた!」
令「何が来たの? よしの」
よしの「ひかりファイバーかいつう!」
令「うん。どう見ても糸電話だけど」
祐巳『よしのさーん、届いた?』
よしの「きたよー!」
令「へえ。なんかいいね、こういうの」
よしの「え……? うん、ほんとか……?」
令「何の話?」
よしの「ねんきんがかえってくるから……おかねふりこまないと!」
令「詐欺だ!」

よしの「これべんりなー? ばらのやかたいかなくてすむし!」
令「いや駄目でしょ……。仕事しに行かなきゃ」
祐巳『よしのさん、ティータイムの時間だって』
よしの「てぃーたいむ! すりーでぃーか!」
令「……ここは私はスルーで」
よしの「すぐにいく!」
 ドタタタタ……。

 

祐巳「志摩子さんも、紅茶配るの手伝ってくれる?」
志摩子「ええもちろん」
祥子「二人ともよろしく。……ふーん、糸電話ね。こんな子供っぽいこと……。……ちょ、ちょっとだけ……」

令「はあ。まったくよしのはせわしないんだから」
祥子『もしもーし』
令「?」

祥子「聞こえますかー。……なんてね。答えるわけないか」
令『はい、聞こえます』
祥子「えっ? ご……ごめんなさい、誰か出ると思わなかったから」
令『こんなに離れてるのに、結構聞こえるんだね』
祥子「本当、そうね。不思議……」
蓉子「ねえー、よしのちゃんここにいる?」
祥子「はっ――」
蓉子「……」
祥子「ち、違うんですお姉さま! これは……!」
蓉子「何も言ってないでしょ……。話し相手は? 令?」
祥子「え、ええ」
蓉子「ちょうどよかった。ちょっと代わって」

蓉子『ごきげんようー』
令「あ、紅薔薇さま」
蓉子『こないだ聖が撮った写真できたから、後で送るわね。メールで』
令「メール?」

 

よしの「ごちそーさま!」
蓉子「お粗末さま。……それじゃ、よしのちゃんは今からメールです」
よしの「めーる?」
蓉子「こっちに背中向けて……。添付!(べたん)」
祐巳「本当だ、写真を添付したメールそのものですね~」
志摩子「メールということは、顔文字もあった方がいいわ」
よしの「かおもじ……?」

よしの「れーちゃーん! メールです!」
令「そうか、よしの自身がメールだったのね。さてどんな写真が……ん?」
よしの「……」
令「何その顔……」
よしの「じんせいオワタ!」
令「よしの?! ま、まだ諦めちゃダメよ!」

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