[よしのと!] よしのとどうるい

 キーンコーンカーンコーン……。
祥子「……私だって、男性恐怖症をこのまま放っておいていいなんて思っていないわ。治せるものなら治したいし、あの人のこともいつまでも避けてはいられない……。少しでも免疫つけようと思って、花寺学院に来てみたけれど……ん?」

男子生徒1「うわーん! また彼女にふられちゃったよー!」
男子生徒2「まあそう嘆くなよ。素直に学校生活を楽しもうぜ」
男子生徒1「んなこと言ったって、うち男子校じゃねえか……」
男子生徒2「うちの学校にはゲイだけじゃなく、おかまもいます」
男子生徒1「……! ウホッ! よりどりみどり!」

祥子「だ……男子校ってやっぱりそうなのかしら。でも、今の人たちの言うことも一理あるわ。自分に無理してまで異性との恋愛にこだわる必要もないのかもしれない……。……あら? あの人まさか……って! ちょっ!!」

 

よしの「れーちゃーん! ばらのやかたいってくる!」
令「うん、行ってらっしゃい。……この導入部もだんだんおざなりになってきたなあ」

よしの「あ、さちこだ。さちこー! あははははは!」
祥子「……」
よしの「! ど、どーしたさちこ?!」
祥子「……。ああ、よしのちゃん……」
よしの「なんだー? かなしいのか? ひぐらしがなくからか?」
祥子「いいえ……。ないているのはひぐらしじゃなくて……私」
よしの「……? はあ? まあとりあえずなかにはいれ?」
祥子「そうね。……薔薇の館だけど」

 

よしの「とりあえずこうちゃのめ? どんなときもこうちゃだぞ?」
祥子「紅茶……」
よしの「こーちゃではぴねすだぞ?」
祥子「……。ノーコメントで」
よしの「なにがあったんだ? よしのにはなしてみな?」
祥子「ええ……。私、婚約者がいるの。お約束の、親同士が決めた人だけど」
よしの「さちこはもうそいつとけっこんしたか?」
祥子「いいえ、まだよ。婚約。結婚の約束をしただけ」
よしの「こんやくってあれか? たーかーさーごー、ってうたうやつか?」
祥子「……いや、それは結婚式だから。しかもそれカトリック違うし……」
よしの「うたったか? たかさごーってうたったか?!」
祥子「だからいつよ。そもそもあれは出席者が歌うんじゃなくて」
よしの「なんだー。こんやくしゃとけっこんできたらいいのに」
祥子「あの……いいから人の話聞きなさい?」
よしの「やっとまえふりおわりか? それならきくぞ?」
祥子「前振りって……。あのね、その婚約者が、さっきかわいい男の子の肩に手を回して歩いていたの」
よしの「……できてるな?」
祥子「できてるわね……。つまり、私の好きな男の人には、お付き合いしている男の子がいたの。わかる?」
よしの「んー……。じんぶつそうかんずでせつめいして!」
祥子「え……人物相関図?」

 ┌─┐      ┌─┐      ┌─┐
 │祐│←─溺愛──│ │←─初恋──│祥│
 │ │      │優│      │ │
 │麒│──尊敬─→│ │──逆玉─→│子│
 └─┘      └─┘      └─┘

よしの「さちこはあいかわらずくうきよめない……」
祥子「……」
よしの「やじるしきれてる」
祥子「それは私のせいじゃないし。そうね……、よしのちゃんは誰が好きかしら?」
よしの「れーちゃん!」
祥子「じゃあ、令はよしのちゃんじゃなくて実は黄薔薇さまとできていた、とか。例えるならそんな感じ」
よしの「……あんですとーー!! ほんとなのかそれ?! ソースは?! あのでこやろう、よしののれーちゃんにちょっかいだしやがって! ただじゃおかねえ!!」
祥子「わっ、ちょっ、落ち着いて落ち着いて! うそっ、嘘よ、今の嘘だから」
よしの「……なーんだ、うそかー。これだからインターネットはしんようできないな」
祥子「インターネットなんて一言も言っていないけど……」
よしの「かなこととーこのどっちがいもうとになる? とかあおってたやつらはぜんいんじごくいきだな」
祥子「だから……。……私は責任負わなくてよ?」
よしの「そーか! わかった!」
祥子「ん?」
よしの「さちこのこんやくしゃはどうせいあいしゃでした」
祥子「ええ……そういうこと。……あなた自分のこと棚に上げてよく言うわね」
よしの「ど、どうせいあいだー、しまったぁー……。どうせいあいってあれな?! ほられたりほったりするやつ……」
祥子「そ、そうね……。掘られたり掘ったりするわよね」
よしの「――――! ま、まってろ!」
祥子「あっ、よしのちゃん。このことは誰にも内緒ね?」
よしの「わかってる! いいか、ほられるなよ?」
祥子「え、ええ」
よしの「ほるなよ?」
祥子「……それは生物学上無理」

 

よしの「よーこ! たいへんだ!」
蓉子「どうしたの? 血相変えて」
よしの「さちこがはきょくした!」
蓉子「ありゃま。破局って、例の婚約者と? あの花寺の生徒会長の」
よしの「どーしたらいい? どーしたらなおる?」
蓉子「んー。私は婚約なんてしたことないからわからないけど……。でも祥子、あんなに美人なのにふられるなんて」
よしの「さちこびじんだな?」
蓉子「クールで知的で礼儀正しくて、もう完璧。でもちょっとヘア濃いかな」
よしの「さちこへあーこいな? ……よーこなんでしってんだ?」
蓉子「まあ、殿方にはそのギャップがうけそうだけど」
よしの「よしのはなにしたらいい?」
蓉子「そうね。適当に慰めてやって」
よしの「そっちのいみでか?!」
蓉子「……よしのちゃんに一任するわ」

よしの「よし、いそげ!」
祐巳「あ。ごきげんよう、よしのさん」
よしの「ゆみにはまだはやい!」
祐巳「へっ?」
よしの「ゆみはいえでひとりはんせーかいしてろ!」
祐巳「一人反省会ってなんで?!」

聖「ごきげんようー。おっ、よしのちゃん」
よしの「せいー! いいところにきた!」
聖「ん? どしたどした?」
よしの「せいはどうせいあいすきか?」
聖「! よっしゃ、同類発見! とりあえず握手握手」
よしの「お、おう……。どうせいあいはどうるいか?」
聖「もちろんよ。同じ星の下に生まれた兄弟、いや姉妹だからね。そうかそうか、よしのちゃんもついに自覚したかー。お姉さん嬉しいよ」
よしの「じゃあ、さちこのこんやくしゃもどうるい」
聖「え、ギンナン王子の話だったの? ちょっと待って、あいつと一緒にされるのはご免だ」
よしの「なんでだ? どうせいあいなのにどうるいじゃないのか?」
聖「いや、百合とやおいじゃジャンル全然違うし。……ある意味似たもの同士だけど」
よしの「どうせいあいってへんたいか? しっぽりしちゃう?」
聖「そうよー、ちょーしっぽりよー」
よしの「よしのはれーちゃんとしゅうにかいしっぽりする。それくらいしっぽりか?」
聖「もっともっとしっぽりよ。それこそ、婚約者のことなんて忘れるくらい」
よしの「……! た、たいへんだ!」

 

よしの「さちこ! いきてるか?!」
祥子「ん……。ええ何とか」
よしの「だいじょうぶか? こんなところでねてさむくないか?」
祥子「少し……。でも、本当に寒いのは私の心」
よしの「なにいってんだ! さむいのはさちこのギャグだ!」
祥子「なっ!」
よしの「えーと、なんだっけ。どうるいはっけん!(ガスッ)」
祥子「いたっ。……な、なぜチョップを?」
よしの「げんきだせ! みんなどうるいだ! あなきょーだいだ!」
祥子「ちょっとーっ! 言うに事欠いて何てことを。……こ、これでもう完全に18禁サイト確定ね……ふふふふ」
よしの「よーこはこんやくしたことないんだぞ!」
祥子「そんなこと言われても。普通の高校生はそうだと思うし……」
よしの「えーと、それから……。さちこはへあーこいな!」
祥子「!!」
よしの「おまたもじゃもじゃだな!」
祥子「……ひ、人が一番気にしていることを……ううっ」
よしの「それでもほるな?! な?」

聖「……」
蓉子「どう? 祥子どうなってる?」
聖「悪趣味ねあなた」
蓉子「聖だって覗いているじゃない」
聖「お家騒動に他藩は口を出さないのが決まり。だから見てるだけよ」
蓉子「……楽しんでいることに変わりはないのね」

祥子「はあ……。だから掘れないって言ってるのに」
よしの「そ、そうか。ゆりとやおいはちがうな?」
祥子「まあ、そんなところ。私は夏の終わりが来るたびに、恋の終わりを思い出すのかしらね。……一句できたわ」
よしの「よしのにきかせてみ?」
祥子「私の恋 グッバイマイラブ 花と散る」
よしの「ほーー、ほけきょ」

蓉子「……あれあなたの親友の妹さんですよ」
聖「なんでそんな回りくどいこと言うのよ。って、ちゃっかり親友アピール?」

 

よしの「どうだ? もうはきょくおわった?」
祥子「終わる終わらないの話ではないし……。でもそうね、自分の手で決着つけないといけないわよね」
よしの「おー、やるきだな」
祥子「優さんときちんと話をしてみるわ。いつまでも逃げてばかりじゃなく」
よしの「こいへあーでいちころな?」
祥子「…………」
よしの「あ、しんだ」

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