[よしのと!] よしのとかわらばん

令「Zzzz……」
よしの「……?(ぱち) ……6じ15ふん48びょう73。れーちゃん?」
令「んん……」
よしの「まだねてる。……。フライパンでおこすのやってみたい……」
 ふらふら……。
令「……ん。ああよく寝た……ってよしの?!」
よしの「あ、おきてもたー。しっぱいやー」
令「失敗って! その出刃包丁で何しようとしたの!」

令「……まったく驚いたよ。おかげですっかり目が覚めたけど」
よしの「よしのねぼけてた! あはははー」
令「じゃ、私は朝練に行くけど。よしのはそうね……リリアンかわら版をもらいに行ってきて。今日発行だと思うから」
よしの「がってんしょうち!」

 

真美「おはようございます、新聞部です!」
よしの「もうくばってる。よしのがはやくくるのしってたのかなー」
真美「あっ、よしのさん! はいこれ、今日の最新号。今回はいい記事が書けたわ。よしのさんのお陰で……クックック」
よしの「よしのの?」
真美「あ、ああ、こっちの話。それじゃあね、これからも新聞部をよろしく」
よしの「おー、まみもがんばれなー。……どれどれ」

 【特集】紅薔薇さまはアキバがお好き?!

よしの「あちゃー、すっぱぬかれてる。えっと、めいどきっさが……」
?「お呼びですか、お嬢さま♪」
よしの「どっきーん!」
祐巳「ははは、私だよ。ごきげんよう」
よしの「ゆ、ゆみか……。ちょっとときめいちまったぜ」
祐巳「こんな早い時間に会うなんて、珍しいね」
よしの「かわらばんもらいにきたー。ゆみもかわらばんとってくるかかりか?」
祐巳「ううん。というか、別に朝じゃなくてももらえるし……」
よしの「よしの、ばらさまになったらしんぶんぶとなかよくする!」
祐巳「あ、それ私も賛成! 今みたいな敵対関係じゃなくて、もっと協力しあっていい生徒会、いい学校新聞を作りたいよね」
よしの「なー?」
祐巳「そうだ。よしのさん、これから一緒に朝拝に出る?」
よしの「ちょーはい? どんなことするのー?」
祐巳「お聖堂でね、こんなことしたり(祈りを捧げるポーズ)、こんなことしたり(聖書を読むポーズ)」
よしの「おー! あんなことやそんなこともするか?」
祐巳「どんなこと?!」

 

祐巳「さ、ここだよ。入って」
よしの「わー! こひつじがいっぱい!」
祐巳「子羊って……」
桂「ああ、祐巳さん。こっちこっち」
祐巳「ごきげんよう、桂さん。こちらは一年菊組のよしのさん」
桂「黄薔薇のつぼみの妹でしょ? ごきげんよう」
よしの「ごきげんよー!」
祐巳「志摩子さんは……今日も来ていないね」
桂「ええ、ご一緒したかったのに残念」
祐巳「家が遠いみたいだし、仕方ないよ」
よしの「しまこもくるのか?」
桂「あ、志摩子さん知ってるんだ」

シスター「みなさん、ごきげんよう。本日の朝拝を始めましょう」
よしの「はじまる? なにすればいい?」
祐巳「みんながするのを真似したらいいよ」

よしの「……。……。……ぐー」
祐巳「やっぱり寝るのかよ!」
シスター「そこ! お静かに!」

よしの「……はっ!」
祐巳「また寝過ごしたんだ……。よしのさんにはがっかりだよ」
桂「まあまあ。また次もあるんだし」
祐巳「それじゃ、また教室で」
桂「ええ、また後で。よしのさんもまたね」
よしの「でばんもらえてよかったな!」
桂「ヒドス!!」

 

よしの「とくしたなー。レアキャラにもあえたし」
祐巳「そ、そんな風に言ったら桂さんが可哀想だよ……」
 パシャッ。
よしの「わっ! お、おのれなにやつ!」
祐巳「今のは……カメラのフラッシュ?」
蔦子「驚かせて失礼。朝のツーショットが絵になっていたから、思わず一枚」
祐巳「やっぱり蔦子さんか。ごきげんよう」
よしの「おー! しんぶんぶのエース!」
祐巳「えっ? 違うよ、蔦子さんは写真部」
蔦子「まあ確かに、取材に同行したり写真提供したりで、ほとんど新聞部と掛け持ちみたいなものだけど」
よしの「そうだったのかー。よしの、しゃしんぶにはいりたい!」
祐巳「剣道部じゃなくて?!」
蔦子「へえ。よしのさんが」
よしの「……つたこ、いいネタありまっせ?」
蔦子「……もしかして盗撮? ほほう、越後屋そちも悪よのう」
よしの「おだいかんさまにはとてもとても……きしししし」
祐巳「な、なんか二人で意気投合してるし……」

 

よしの「あさからいろいろしたら、おなかすいてきた」
祐巳「よしのさんは朝ご飯食べてる?」
よしの「きょーはたべてない。れーちゃんあされんだから」
祐巳「朝ご飯を抜くのは体によくないよ。って、いつも令さまが作ってるの?」
よしの「うん! れーちゃんれーちゃんれーちゃんれーちゃんれーちゃんれーちゃん……よしの」
祐巳「?」
よしの「れーちゃんれーちゃんれーちゃんれーちゃん……、くらい」
祐巳「あ、ああ。じゃあ、よしのさんもたまに作るんだ。……というか作れるんだ?」
よしの「ゆみんちは?」
祐巳「うちはいつもお母さんだよ。お母さんお母さんお母さんお母さんお母さん、お正月だけお父さん」
 ぐうううぅ~~。
よしの「……なー? あはははは」
祐巳「朝ご飯の話をしてたから、余計におなかが空いたんだね」
よしの「おなかとせなかがくっつくきぶんな?」
祐巳「それなら今から薔薇の館においでよ。朝の会議でみんな集まる頃だから、紅茶とお菓子くらい出ると思うし」
よしの「それじゃーおよばれすっかなー」

 

聖「そっかー。よしのちゃん、食べ物につられて来たのかー」
よしの「きました!」
聖「いいよ。いま蓉子の紅茶入れてるから、その次ね」
祐巳「ごきげんよう、紅薔薇さま。朝は苦手だったんじゃ……?」
蓉子「うん。でも会議だから。……そっちに余計なのも来てるけど」
よしの「かにーな! ごきげんよー!」
静「ごきげんよう、よしのさん」
蓉子「まったく、部外者が朝っぱらから何の用よ」
静「合唱部の用事で来ただけですが……? それより紅薔薇さま、この今朝のリリアンかわら版、紅薔薇さまのことがすっぱ抜かれてますけど」
蓉子「……いいんじゃない? 別に、面白ければそれで」
静「よくありません! 生徒のプライベートを嗅ぎ回って記事にするなんて問題だわ」
よしの「なー? かにーなもそうおもう?」
静「ええ、こんな暴挙を許すわけにはいかないわ」
よしの「しんぶんぶはてきだもんなー」
祐巳「さっき言ってたのと違うーー!」
蓉子「さっきって?」
祐巳「ああ、ここに来る道すがらよしのさんと話したんです。新聞部との確執をなくして良好な関係を築きたい、って」
蓉子「へえ……。静さん聞いた? どうやら祐巳ちゃんたちの方が、山百合会の将来をきちんと考えているようね」
よしの「よしのばらさまになる! てんかとーいつ!」
蓉子「フフッ、期待しているわよ。よしのちゃんは、リリアンかわら版をどうしたい?」
よしの「んー。ちょっとかいてくる!」
蓉子「えっ?」

 

祐巳「書くって何を? かわら版みたいなスクープ?」
よしの「うん、ちょっとまってろ……。……。……かけたー」
祐巳「早いね。どれどれ」

 さちこが
 ほられた

祐巳「ちょーっ!」
よしの「スクープ? これスクープ?」
祐巳「も、もし事実だったら大スクープだけど……。というか事実なの?」
よしの「うん」
祐巳「またまたー」
よしの「またまたーじゃなくて」
祐巳「……いや嘘でしょ?」
よしの「よしのじょーほーはほんとなの!」
祐巳「……。……まじ?」
よしの「まじもまじも、おおまじ」
祐巳「――!! ……、……っ」
よしの「ゆ……ゆみ? ……ないてる?! まじなきだ!」
祐巳「うう……うわあああん! お、お姉さまの……お姉さまの純潔が……!」
 ダンッ、ダンッ、ダンッ!
よしの「あがりかまちたたいてるー!」
祐巳「私の大切なもの、勝手に奪わないでよ!!」
よしの「ゆみのなのか……? じゃー、ゆみはいんさつやさんやって」
祐巳「え……。い、印刷……?」
よしの「かわらばんくばって、はやくよーこたちにおしえないと」
祐巳「そ、そうか!」

 

よしの「かにーなー、かわらばんでーす」
静「ああ、どうもありがとう。……ん?」

 さちこが
 ほられた

静「…………」
よしの「かわらばんでーす」
聖「うはぁ! こいつぁ特ダネだ!」
蓉子「あはははははは!」
よしの「こんどのリリアンかわらばんは、どこよりもホットでクールだよ!」
静「……あー、新聞部員さん? これ、一体誰に……?」
よしの「さちこ」
静「いや、相手は誰……」
よしの「んあ?」
静「紅薔薇さまと白薔薇さまは、何かご存じなんですか」
聖・蓉子「さあー?」
蓉子「よしのちゃんよしのちゃん、グッジョブ!」
よしの「そ、そうか?」
蓉子「もう最高! こんな記事を待ち望んでいたのよ」
静「絶対だめですって!」

祥子「ごきげんよう」
よしの「さちこー、かわらばんです」
祥子「かわら版……? ……!! ちょっ、これっ! しかも配布済み?! ギャーッ!」
静「さ、祥子さん! なんて破廉恥なの! 不純異性交遊なんて不潔よ!」
蓉子「……プププッ、ネタにマジレスしてるよこの子」
祥子「ちっ、違うの! ガセっ! これはガセネタです!」
祐巳「えっ?」
祥子「よしのちゃんが勘違いしているだけで、事実無根よ……」
祐巳「本当ですか?! それじゃお姉さまの貞操は無事なんですね? 傷一つついてないサーモンピンクなんですね?!(大興奮)」
祥子「あんた最悪だ!!」
よしの「えー? ほられたっていったのにー」
祥子「言ってない。断じて言ってない。それにあの件は内緒って言ったでしょ」
よしの「そ、そうだった……! みんなー、さちこがおまたもじゃもじゃなのはないしょなー?」
祥子「なんかさらに暴露してるしー!!」
蓉子「うんわかったー」
聖「そっかそっか、さっちゃんボーボーだったのかー」
祥子「ひ、人が一番気にしていることを……。うっ……うわあああん!」
よしの「さちこは にげだした!」

 

よしの「うーん。よしのはかわらばんより、しゃしんのほうがむいているかもしれない」
蓉子「写真?」
よしの「よしののしゃしんみろ!」
蓉子「あら、これ祥子の……隠し撮り? いつの間にこんなに撮ったの」
よしの「にやり」
蓉子「それにしても……、ゴージャスな下着よね。本当に高校生なのかしらあの子」
よしの「れーちゃんはいつもおとめちっくパンツだ」
蓉子「そう。なら令に写真見せてあげたら? 下着選びの参考にって」
祐巳「よ……よしのさん……!」
よしの「ゆ、ゆみ? おこってるか?」
祐巳「……焼き増しの注文は裏に書けばいいの?」
よしの「なにいってんだ?」
祐巳「写真ください! お願いします! 着払い可!」
よしの「かおちかい! わ、わかったわかった」

 

よしの「れーちゃーん!」
令「ああ、よしの。かわら版もらってきてくれた?」
よしの「こっちのほうがとくだねだ!」
令「このフォトアルバムが……? ……ブハーーッ!(鼻血)」

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