[よしのと!] よしのときもち

よしの「Zzzz……。ぱちっ」
 ゴロゴロゴロ……。
よしの「グッドモーニングエブリニャン! ……れーちゃんがいない? がっこうか? ていうかよしのちこくか?」

よしの「ばらのやかたか? れーちゃーん!」
令「こ、これ以上は……もう堪忍して……」
よしの「! れ、れーちゃん! なんでひるまっからせいふくぬいでんだ?!」
江利子「ごきげんよう、よしのちゃん。重役出勤とはいいご身分だこと」
よしの「でこちんか! よしののれーちゃんをいじめるな!」
江利子「いじめだなんて滅相もない。遊んであげてるだけよ。……令が持ってきた『おねえさまスイッチ』でね!」
令「い、いや、だからこれルール違いますから……」
江利子「どうして? 令がボタンを押して、その文字から始まる動作を私がすればいいんでしょ? 『き』だから『着替えシーンを堪能する』……問題あるの? ほら令、ちゃっちゃと脱ぐ」
令「で、ですから。行動を指示するのは、その、妹の私が」
江利子「誰が何を何ですって? まさかとは思うけど、私に意見するつもりじゃないわよね……?」
令「い、いいえっ! ……ううっ、こんなはずじゃ……」
よしの「か、かえりうちだ! みごとなかえりうちだ……!」
江利子「まあ、着替えはもういいわ。次のボタンを押しなさい」
令「はっ、はい……。『く』……」
江利子「く、『首筋に息を吹きかける』! ふうーっ」
令「あああ……っ!」
江利子「ふふ、いい反応ね。さあさあ、次は何?」
令「……『け』」
江利子「『蹴り』きたこれ! ていっ!(ドゴッ)」
令「きゃうんっ!! はぁはぁ……!」
よしの「れーちゃん?! むしろなんかよろこんでる!!」

 

江利子「――久しぶりに熱くなったわ。こんなに面白いオモチャ、いっそ毎日でも遊びたいわね。それじゃ、アデュー」
令「……」
よしの「れーちゃん……ぬけがらみたいになってる」
令「……」
よしの「と、とりあえずこーちゃのむか?」
令「……うん。お願い」

よしの「よしのがいれたこーちゃのめ! ノーベルしょうものだぞ」
令「うん、いただきます。……うっ、なんか塩辛い」
よしの「あれぇ? そんなはずないのに。ごくごく……ブハーッ!」
令「うわ! 紅茶吹いちゃって……大丈夫? よしの」
よしの「さとうとしおまちがえた……。よしのいっしょうのふかく」
令「……。ううん、不覚なんかじゃないよ! すごく美味しい」
よしの「な、なんでだ? でこちんにいじめられて、みかくがぼんくらになったか?」
令「そうじゃないよ。よしのが私のために心をこめて入れてくれた紅茶だもの。絶対美味しい」
よしの「れーちゃん……。あんまりなかすな?」
令「大切なのは出来ばえじゃない、気持ちだから。気持ち!」
よしの「きもち……」
令「マインド!」
よしの「マインド……。れーちゃん、あたまもぼんくらになったか?」
令「ちがーう! とりあえず、こぼした紅茶は自分で拭きなさいね」
よしの「お、おー」

令「というわけで、さっきまでずっと黄薔薇さまの相手していたの。ろくに休憩もなかったから疲れちゃって。……だから私はもうだめぽ」
よしの「……。だめぽとかいうな?」
令「少し横になって休むから。お留守番頼むわね……」
よしの「おーし、それじゃよしのがそいねしてやる! だっこするか? うでまくらか? それともうしろから……むしろうえ! した!」
令「静かにしてよ……」
よしの「わかった!」

 

よしの「るすばんもひまだなー。そうだ! きょうはよしののかばんをつよくしよー」
 ガサゴソ……。
よしの「あったあった、てっぱん! これをかばんのなかにいれて……っと。これでしゅびりょくアップ! せなかにバットいれるのもきほんだなー」
?「ごめんくださーい」
よしの「お? だれかきたか?」

よしの「ヘイらっしゃい! ばらのやかたへようこそ!」
三奈子「ごきげんよう。新聞部なんだけど」
よしの「はー? なにさまですか?」
三奈子「何様って……。まあいいわ。黄薔薇さまか黄薔薇のつぼみに話があるの。取り次いでくれない?」
よしの「れーちゃんはいます。でこちんはいません」
三奈子「じゃあ、令さん呼んできてくれる?」
よしの「だめぽです」
三奈子「ええっ?」
よしの「はなしならよしのがきくぞ? よしのもやまゆりかいだ」
三奈子「それは遠慮するわ。……よしのさんはおつむ弱そうに見えて、案外曲者だから。また出直すわね」
よしの「……よくぞみやぶった。しんぶんぶのやからもくせものだな?」

 

よしの「つぎはマジックでもじかこう。『夜露死苦』か『FUCK YOU』、どっちがかっこいいかなー」
 トゥルルル、トゥルルル……。
よしの「で、でんわだ! どうしよう、でないと」
?『うへへへ……お嬢ちゃん、いま何色のパンツ履いてるのかなー?』
よしの「え? はいてないよ?」
?『?!』
よしの「かぜがスースーして、きもちいいな! な!」
?『……いや、私はそんな変態行為におよんだことないから知らないけど。って、よしのちゃんなの?』
よしの「よしのだよ? きさまなにやつ?」
?『なんだ、祐巳ちゃんをからかおうと思ったのに。いやー失敗失敗』
 ガチャ。
よしの「……せいな? まったくもってセクハラおやじだなー」

 

よしの「れーちゃん、ちゃんとねてるかな」
令「Zzzz……」
よしの「おー、てんしのねがおだ。よっぽどでこちんにいやなことされたんだな……。そーだ」
 ドタドタドタ……。
よしの「かばんにれーちゃんのえをかこう。よしのがはく、けんざん!」
 キュッキュッ、キュッ……。
よしの「にている。トレースかと! ……ひげもつけてみよう。いいかんがえだ」
 サラサラサラ……。
よしの「おおー、かっこいー! さすがミスターリリアン、ひげがにあうなー。……! そ、そうだ、れーちゃんにもひげを……」
 キュキュキューッ。 
よしの「――――。くくくくく……けっさくけっさく。したがわもかこう……」
令「Zzz……」
よしの「こっちもまっくろにして……」
令「Zzz……」
よしの「ついでにこことここも……」
令「Zzz……」
よしの「うひゃひゃひゃ!! れーちゃんひげだらけ! イッツダンディズム!」
令「Zzz……」
よしの「あはは……」
令「……」
よしの「……」
令「……」
よしの「……」

よしの「……おこられるかもしれない」

よしの「けさないと! どうすりゃいいんかい!」
 ごしごし。
令「うぅーん……」
よしの「き、きえない……。てえへんだてえへんだ!」

 

祥子「え? マジックを消す?」
よしの「おしえてくれ!」
祥子「書いた材質によって消し方は違うわよ。いったい何に書いたの?」
よしの「れーちゃんの○○○ー」
祥子「……は」
よしの「ねてたからなー?」
祥子「そうじゃなくて! どうして伏字だったの今?!」
よしの「おんなのこのくちからそんなこといえません」
祥子「今さら何よ……。普段はためらいもなく下品ワード連発しているくせに」
よしの「よしのさんはイケイケだからな?」
祥子「知らないから。まあ教えてあげるけど。肌に書いたマジックはバ……、ええと、確かマヨネーズでも消えるはずよ」
よしの「マヨネーズか! さちこものしりはかせー!」
祥子「私じゃないわ。祐巳がテレビで視たんですって、そういうの消す知恵とか」

祐巳「ごきげんよう、お姉さま! あ、よしのさんも来てたんだ」
よしの「おー、ゆみ」
祥子「あら。噂をすれば何とやらね」
祐巳「噂って? お二人で私のこと話していたんですか?」
よしの「マジックけすほうほうききにきた!」
祐巳「マジック? ああ……前にテレビでやっていた」
祥子「そう、その話だけど。あれって、その……マヨネーズなんかでもいいのよね?」
祐巳「えっ、だめだと思います。バターじゃないとマジックは落ちませんよ」
祥子「それはわかるけれど……。バ、バターなんて使ったら、その、まずいんじゃないかしら」
祐巳「何がです? 失礼ですが、お姉さまが何をおっしゃりたいのか私には……」
よしの「そうだぞ? はやくマジックけさないといけないのに」
祐巳「ほら、よしのさんも真面目に聞いているみたいですし。きちんと説明してください」
祥子「うう……その、だからー! あそこにバターとか塗ったらいぬ――っ」
祐巳「……?」
よしの「……」
祥子「……」
祐巳「あの、お、お姉さま? あそこってどこですか? ねえお姉さま?」
祥子「ええっ?! あっ、あの、だからね? あそこって、だからその……」
よしの「よしのはれーちゃんのかおにらくがきしただけだぞ?」
祥子「なにーっ! そ、そそ、そうだったの? 私はてっきり……」
祐巳「てっきり? てっきり何ですか? ねえねえ? それにさっき犬って言いかけてましたよね?」
祥子「ちがっ、何でもない、何でもないのよ。……くっ、よしのちゃんに一杯くわされたわ」
よしの「なんにもしてないよ? さちこがかってにかんちがいしただけだ」
祥子「嘘おっしゃい! 伏字にしてたじゃないの! しかも三文字で!」
祐巳「三文字だと何なんです? それに犬がどうなるんですかー? 教えてくださいお姉さまぁ」
よしの「きゃははは! さちこはそっちもものしりはかせー!」
祥子「ぐぐぐぐ……キーーッ! こんな恥辱ないわ! 穴があったら入りたいぃぃー!」
祐巳「あっ、お姉さま? 失言大王の私に比べればそれくらい……って逃げちゃった」
よしの「かおまっかにして、さしずめべにばらだなー」

祐巳「……で、よしのさん。本当はどこに落書きしたの?」
よしの「○○○ー」
祐巳「まじ?!」

 

よしの「マヨネーズだとあんましきえない……」
令「うぅーん……」
よしの「やっぱりバターかなー。そんでもってよしのが……へっへっへっ」
 ぬりぬり……。
よしの「えーと、れーちゃんのためにこころをこめて……。たいせつなのはきもち! いぬのきもち!」
令「Zzz……。――――?! ちょっ、なっ、よしの?! そ、そんなところダメだったら……はぁはぁ!」

« 10 よしのとラーメン   12 よしのとスクみず »

ソーシャル/購読

X Threads note
RSS Feedly Inoreader

このブログを検索

コメント

ブログ アーカイブ