令「どうも。配達ご苦労さまです」
よしの「れーちゃん!」
令「ああ、よしの。今メール便が届いて」
よしの「まてらっつぃぃーー!(頭突き)」
令「ぶべらっ」
よしの「それよこせ!」
ビリビリビリ……。
令「な、何するのいきなり……」
よしの「コスモスフレンドのさいしんごーだな? かくしてもわかる! においで!」
令「違うし。別に私が何読んだっていいじゃないの……。っていうか匂い?」
よしの「よしのにもよませろ! ……あ。なんだこれ?」
令「ああ、この本か。谷中さんが薦めてくださった本」
よしの「やなかのじーちゃん?」
令「そう、よしのも会ったことあるでしょ。武道の精神を説いた良書だって。よしのも読む?」
よしの「ぶどうはわかりづらいな? けんどうのしあいはおもしろいのに」
令「あれ? 絶対に興味そそられまくりだと思ったのに」
よしの「れーちゃんがよむかかりな?」
令「そんな絵本じゃないんだから」
よしの「よしのはもっとわかりやすいのがいい。しんだりころしたりするやつ」
令「そ、それは……」
よしの「またにんきょーごっこするかなー。……! ばらのやかたいってくる!」
令「ちょっと待ちなさい。よしのは薔薇の館で遊ぶことしか考えてないの?」
よしの「でもあそびをなめるんじゃねえ!」
令「逆切れかよ! まったく、山百合会を何だと思って……。あ、そうだ」
よしの「あけんかいこらー!」
聖「おうおう、どこの鉄砲玉じゃわれー。……およ」
令「ごきげんよう」
よしの「きょうはわかがしらじきじきになぐりこみじゃあ!」
令「違います。ていうか誰が若頭ですか」
聖「それで令、改まって何?」
令「これ、お世話になっている剣道の師範からいただいた本なんですけれども」
聖「ははー、ありがたやありがたや。ちょうど何か読みたかったんだ」
よしの「ぶどうだよ! ぶどう」
聖「本当にもらっていいの? 大事な本なのに」
令「大体の内容は頭に入っていますから」
よしの「ぶどうはこむずかしいからあげるんだー」
令「こらこら。それに……、よしのが毎日遊んでばかりで、薔薇さま方にご迷惑おかけしているんじゃないかと」
聖「そんなことないけど? いつも退屈しなくて楽しいよ」
令「なんかカップラーメンとかケーキとか。この前は白薔薇さまにお給仕までさせてしまったようで」
聖「ははは、いいっていいって。こっちこそ、祐巳ちゃんがマリア祭やら登山やら連れて行ってもらってるし」
令「いや、祐巳ちゃんのことで白薔薇さまにお礼言われても……」
よしの「せい! ちょっとスカートたくしあげて?」
聖「なあに? お姉さんの生足でも鑑賞したいのかなー? はいどうぞ」
よしの「それじゃーしつれいしまーす……(もぞもぞ)」
令「ちょっ、どこ入ってんのよしの?! あ、あの、本当に迷惑になってませんか? 例えば今とか」
聖「んーん全然。むしろ見せてんのよ」
よしの「……(もぞもぞ) ……? おわぁーー!」
令「ど、どうしたの?」
よしの「せせせせせ、せいがブリーフはいてた!」
令「エエーッ! ってことは、白薔薇さまって、ま、まさか……!」
聖「うふ♪」
令「――ともかくですね、よしのがもっと山百合会の仕事を積極的に……」
よしの「じゃあ、きょうはよしのがおてつだいしてやろうか?」
聖「ほう、それならお手並み拝見といこう。よしのちゃんは何が出来る?」
よしの「んー……たいがいのことはできるよ?」
聖「いいねー、ビッグマウスきたね」
よしの「れーちゃん、よしのはおてつだいのおにになる!」
令「わかったよ。そこまで言うなら、今日一日みっちりお手伝いしなさい」
よしの「しんぱいすな!」
令「心配よ……」
よしの「あんしんすな!」
令「どっち?!」
よしの「なー、なにおてつだいしたらいい?」
聖「それじゃ、まずは私の仕事を手伝ってもらおうか。こっちこっち」
よしの「……なんだこれ」
聖「知ってる?」
よしの「れいぞうこ!」
聖「残念賞ー。それじゃヒント、ここに原稿をセットします」
よしの「やさいしつはここでーす(カパッ)」
聖「あっ、みだりに開けない方がいいよ。インクで指が」
よしの「うわ! まっくろけ!」
聖「ははは、言わないこっちゃない。これはコピー機」
よしの「これが? れーちゃんちのとちがうぞ」
聖「令の家にもあるの? そっか、剣道の道場だからいろいろあるのかも」
よしの「プリントゴッコもあるねんで?」
聖「それコピー機ちがう……。それじゃお手伝い。印刷枚数を入力して」
よしの「ななひゃく……ごじゅう……まい」
聖「そしてスタートボタン」
よしの「ミュージック、スタート!」
ウィー……ン、ガーー、ピー、ガーー、ピー……。
よしの「おおー! コピペしてる! コピペ!」
聖「……コピーね」
よしの「かみでてくる……。いいじだいになったなー」
聖「これで後は放置しておけば出来るから」
よしの「ふはー、ひとしごとおわったぜー」
聖「まあ、ここで紙詰まりとか起こすと一気に修羅場なんだけどね」
よしの「つぎは?」
聖「そうね……。今日は天気もいいし、制服でも干そうか」
よしの「せいふく? だれの?」
聖「紅薔薇さんち。あの三人の制服を回収してきてくれる?」
よしの「……ぬがすのか?」
聖「ふっふっふっ」
よしの「ゆみ!」
ビクッ!(←?)
祐巳「ひ、ひどいよよしのさん……。脱がせながら変なとこ触るんだもん」
よしの「よーこ!」
すぽーん!
蓉子「いや~ん、まいっちんぐ」
よしの「さちこ!」
ババババッ!
祥子「キャーッ! いきなり何てことするの! ちょっ、制服返しなさい!」
よしの「だがことわる」
祥子「こらっ、待ちなさい! 一体どこに持っていくつもり?!」
よしの「むしぼし!」
グイッ。
よしの「なんかふんだ? ――あれっ……うわああ!」
ゴロゴロゴロゴロ……ズデーン!
祥子「よしのちゃんが階段から落ちたーっ!」
聖「えっ? なになに?」
よしの「……」
聖「だ、大丈夫?」
よしの「……ふー、スリルまんてんだったぜー。もっかいやろう」
祥子「いい度胸しているじゃないの……。さあ、早く制服を渡しなさい」
よしの「ゆみのでもいいか?」
祥子「ゆ、祐巳の制服……? ……。……いや駄目よ駄目よ」
よしの「……なにかんがえてたんだ?」
聖「匂いでも嗅ぎたかったんじゃないの?」
祥子「ち……違います!」
ガーー、ピー、ガーー、ピー。
よしの「ほー……」
蓉子「よしのちゃん。そんなところで何してるの?」
よしの「いんさつ!」
蓉子「また学校新聞でも書いたの? 祥子の特ダネが上がったら教えてね」
よしの「おいおいな!」
ガーー、ピー、ガーー、ピー。
よしの「……」
蓉子「……」
よしの「……そうだ! おてつだいしないと! またーりしてるばやいか?」
蓉子「まったりしてたんだ……?」
よしの「きょうはよしのがおてつだいのひ!」
蓉子「そうなの? いい心がけね。……追い剥ぎは何の手伝いだったの?」
よしの「よーこはたのみたいことあるか? なんでもするぞ」
蓉子「えーと……。備品室の整頓なんてどう?」
よしの「それだ! それがいい!」
蓉子「でも、最近していなかったから片づかないかも。一緒にしましょうか」
よしの「へいきだ! ひとりでできるもん!」
ふんふんふーん♪
ドサドサドサッ! ボフッ!
うわーっ。げほげほ……。
よしの「おわったー」
蓉子「……見事に真っ白ね」
よしの「ちょっとそとでほこりはらってくるな?」
蓉子「う、うん」
ぽんぽんぽん……。
よしの「はー、はらたいらなー」
祥子「ううっ……いつまで下着姿でいないといけないのかしら。何か羽織るものは、っと……ん?」
よしの「ぐー」
祥子「本人寝てるし!」
聖「ああ、寝ちゃった? 今日は働き詰めだったからね」
祥子「ソファにでも寝かせておきましょうか」
聖「オーケー。私が担ぐよ」
よしの「Zzzz……」
祥子「……やはり白薔薇さまの差し金でしたのね」
聖「ははは、ばれちゃしょうがない」
祥子「でしたら、さっさと私たちの制服を取り込んできてくださいます?」
聖「まあまあ。別にもう少しその格好でも……」
祥子「――(キッ)」
聖「……わかったわかった、すぐ行くから。そんな睨まないで」
祐巳「ふうーっ。干した制服をまた着ると、何だか気持ちがいいですね」
聖「前向きだね祐巳ちゃんは」
祐巳「あ……、白薔薇さま、その本は?」
聖「武道のなんとかを書いた本だって。せっかくだし、蓉子たちも呼んでみんなで読もうか」
祐巳「賛成! 紅薔薇さまー、お姉さまー、武道読みますかー?」
蓉子「よむー」
祥子「よむー」
聖「令にもらったのよ。日頃世話になっている礼とか言って」
蓉子「律儀なのね。あの子らしいわ」
よしの「……お、おっはー」
祐巳「あ、起きてきた」
祥子「よしのちゃんも一緒に読む? 武道の本」
よしの「うーん……ぶどうはとっつきにくいからなー」
祥子「そんなことないわよ。……ほらここ、戦国武将や幕末藩士の言葉なんかも紹介されているし」
よしの「おー! それはきょーみしんしん!」
祐巳「はは、やっぱり食いついてきた」
蓉子「そうしたら順番で読んでいきましょうか」
よしの「れーちゃーん! ただいまー!」
令「お帰り。どうだった? ちゃんとお手伝いできた?」
よしの「ぶどういっぱいよんだー」
令「えっ? 難しいとか文句言っていたのに結局読んだの……?」
よしの「あとこれ! せいのぬぎたてブリーフ!」
令「なにー!!」
« 28 よしのとパンダ 30 よしのとちさと »