[よしのと!] よしのとおみやげ

令「んー……、気持ちいいなあ。今日もいい天気ね。さて、よしのが脱いだ服の残り香を……じゃなくて! お洗濯お洗濯、っと。……ん?」
よしの「ほー。まちむすめをてごめにするのかー……」
令「よしのー。ちょっと来てごらんー」
よしの「ん? なんだー?」
令「これは何? よしのの制服のポケットに入っていたんだけど……」
よしの「あー、わすれてた。むかしのおんなだ!」
令「そんなわけないでしょ。もう、真面目に答えてよ。その……いかがわしい格好のお姉さんたちが写っているんだから」
よしの「んあ? じぇらしーか? れーちゃん」
令「そ、そうじゃないけど。でも、よしのがこんなもの持ち歩いていたら気にもなるよ。これは一体……」
よしの「なんだったっけ、えーと……、とれ……と……」
令「うん……」
よしの「さん……めー……、れ……」
令「……いや、どうなの? 思い出せそうなの?」
よしの「……」
令「……」
よしの「よしのテレビみてるとちゅうなの! もー!」
令「ごまかさないの。テレビって言ったって、どうせまた時代劇の再放送でしょ」

よしの「これはきのうよーこにもらった! もみあげ!」
令「おみやげね、おみやげ。……そうか、紅薔薇さまたち帰ってきたんだ」
よしの「おかしもたべたぞ! れーちゃんもくればよかったのに」
令「私は部活だったから、残念だけどしょうがない。それで、ちゃんとお礼は言った?」
よしの「いった! ゆみなりにいったー!」
令「そう、偉いわね。……弓なり?」
よしの「あ、そーだ! これはれーちゃんにあげようとおもって、もってきたんだった!」
令「え? 私に?」
よしの「はいどーぞ!」
令「いや……そう言われても……」
よしの「いらないのかー? これきらいか?」
令「嫌いっていうか……。まず何のカードかわからないし。コレクションか何か?」
よしの「れーちゃんにがてだったら、よしのがもらってやろうか?」
令「う、うん。別にどっちでも……」
よしの「じー……」
令「めちゃくちゃ見てるし! よだれまで垂らして」
よしの「じー」
令「わかった、わかったから。じゃあよしのがもらってちょうだい」
よしの「! そおか! わかったまかせろ!」
令「まかせろって……」
よしの「うほっ! メイドさんかわいいよメイドさん」
令「そういうのが好きなの? 変な趣味だとか、自分で思わない?」
よしの「んーー、ぜんぜん! ちょーもえるぞ! ちょーさいこー!」
令「そ、そんなにいいんだ」
よしの「まーな! ぜったいりょーいきぶんをほきゅーした!」
令「でもよしの。今度からカードは、きちんとラミネートケースかカードバインダーに入れなさいね。表面に傷がつくと商品価値が下がるわよ」
よしの「お、おー。れーちゃんのこだわりな?」
令「そんな大層なものじゃないよ。コレクターの常識」
よしの「……れーちゃん、なんでそんなにくわしいんだ?」
令「えっ! い、いや、それはその、別に……」
よしの「ラブベリか?」
令「! ち、違うから!」
よしの「ラブベリな?」
令「だから……。……ううっ」
よしの「へんなしゅみだとか、じぶんでおもわないのか?」
令「……」

よしの「そーだ! よーこにもおみやげあげたい!」
令「おみやげ? それはいい考えね。それならどこかに出かけないと……あとは洗濯機のスイッチを入れて、っと」
よしの「ほほう。……つれてってくれないのか?」
令「見ればわかるでしょ。これから部屋の掃除もしなくちゃいけないし」
よしの「そっかー。よっしゃ! それじゃ、ちょっくらがっこーいってくる!」

 

よしの「えーと、おみやげは……」
?「ごきげんよう。お一人?」
よしの「おわ! だ、だれだ!」
真美「私は新聞部の山口真美。よろしく、よしのさん」
よしの「な、なぜよしののなを……! おのれなにやつ!」
真美「嫌だ、かの黄薔薇革命を起こした張本人を知らない生徒なんていないわよ。それでなくても、山百合会は高等部中の注目の的なのに」
よしの「そ、そうか。よしのゆーめーじんか。てれるぜ」
真美「そういうこと。……それでよしのさん、何か探し物?」
よしの「おみやげだ! まみは?」
真美「私も、リリアンかわら版のネタを探しに。暇さえあれば校内を歩き回っているわ」
よしの「じゃあ、いっしょにさがすか?」
真美「いいわね。よしのさんとお話できるまたとない機会だし」
よしの「それじゃ、しゅっぱーつ!」

よしの「どれがいいかなー。これかなー」
真美「よしのさーん。おみやげって、誰に渡すのー?」
よしの「よーこ!」
真美「よーこ……蓉子さま? 紅薔薇さまの」
よしの「そーだ! よしのももらったから、おかえしだ!」
真美「ふうん。それじゃよしのさんは、紅薔薇さまから何をもらったの?」
よしの「メイドさん!」
真美「な……。メイドをまるまる一人だなんて、なんてビッグなおみやげ……」
よしの「ちがうよ? もらったのはメイドさんのカードだ」
真美「ああ、最近そういうのが売られているみたいね。たしか秋葉原とかで。……ということは、ふむふむ」
よしの「まみ? それなにかいてんだ?」
真美「え? な、何でもないわ。あははは……」
よしの「ですのーとか?」
真美「そんなの持っていないわよ」

よしの「それじゃー、よしのはいくぞ」
真美「ええ、私もそろそろ。ご一緒できて楽しかったわ」
よしの「よしのもだ! じゃーまたな!」
真美「ごきげんよう。新聞部を今後ともおひとつ」
よしの「おー!」
真美「……。……く、クックックッ……! お姉さまが紅薔薇のつぼみへの接触に失敗したっていうから私にお鉢が回ってきたけれど、こうも容易く紅薔薇さまの行き先を聞き出せるなんて……! ちょろい、実にちょろいわ!」

 

よしの「よーこー、まってろー! いまいくぞー……ん?」
聖「準備できてるよー」
蓉子の声「ええ、今行くわ! そこでもう少し待ってて」
聖「んー、了解。……。しかたない、これでも吹いて時間つぶすか。……?」
よしの「……」
聖「……」
よしの「ゴケゲンヨ!」
聖「なんでイタリアのおっさんの物真似やねん」
よしの「ナイスつっこみ!」
聖「まあ、これくらいは脊髄反射でできないとね」
よしの「せい! ばらのやかたにようじか?」
聖「うん」
よしの「だれだ? よーこか?」
聖「う、うん」
よしの「いっしょだ! よしのもよーこにようじだ!」
聖「ふーん……」
よしの「あー! それ!」
聖「ああ、よしのちゃんもこれ知ってる?」
よしの「しってるぞ! シャボンだまだ!」
聖「ご名答ー、その通り」
よしの「シャボンだまはこどもっぽいからもうしないってれーちゃんいってた。でもれーちゃんもむかしやってたっていってた」
聖「え……何の話?」
よしの「れーちゃんもむかしはこどもだった! せいはいまもこどものこころをもってるのか?」
聖「いや……子どもの心って言われても」
よしの「なんでシャボンだまふいてんだ?」
聖「んー……。格好つけてんの」
よしの「……」
聖「……」
よしの「……かっこいくない! むしろおとめちっく!」
聖「ん。ちょっと反応遅かったけど、まあまあのツッコミかな」
よしの「せいもかわいいとこあるのな! きにいりました!」
聖「むう……。可愛いとか言われるのは何だか無性に悔しい……」
よしの「かわいー! あはははは」
聖「ううっ……。フーッ」
よしの「うわ、わわっ! シャボンだまがいっぱい! なんておとめちっくなことをー!」
聖「だから乙女チックとか言わない!」

蓉子「お待たせー。ごめん、遅くなっちゃって」
聖「ん、別に。二人で遊んでいたから」
蓉子「二人?」
よしの「よーこだ!」
蓉子「あら、よしのちゃん。ごきげんよう」
よしの「よーこはきのうおみやげくれた! だからきょうはよしのがやる!」
蓉子「おみやげ? それは嬉しいわね」
よしの「はいっ」
蓉子「……」
聖「なんだこれ。木の枝?」
蓉子「あ! ひょっとして、ソメイヨシノ?」
よしの「そのとーり!」
蓉子「わあ、すごいじゃない。ありがとう」
よしの「はっはっはー」
聖「……あっ! まさか、よしのちゃんだからソメイヨシノ、ってこと?」
よしの「ごめーとー! よし、とくべつだ! せいにもおみやげやろう」
聖「特別っていうか……。一応クッキーは二人で折半したんだけど」
よしの「はい!」
聖「って、こんなそこら辺で拾ったような石ころ渡されても……」
よしの「しあわせをよぶいしだ!」
聖「どこの怪しい通信販売よ」

よしの「これからどっかいくのか?」
蓉子「ええ。二人でちょっとお出かけ」
よしの「おー、またか!」
聖「じゃ、留守番頼むね」
よしの「いってらっしゃーい! おみやげたのむなー!」

 

聖「……なんか騒々しかったな」
蓉子「ええ。よしのちゃん、面白いわよね」
聖「変な子なのは間違いないけど」
蓉子「おみやげのお返しもらっちゃったし」
聖「あー……それ」
蓉子「これって縁起物なの?」
聖「いや、桜の枝を折るのはたしか縁起が悪いんじゃなかったっけ」
蓉子「……」

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