[こころ] かず

 「数」と「数字」はちがうのです。
 混用されることが多いのですが、前者はものの多少や順序をあらわす概念、後者はそれを表現する文字、という意味です。英語ではそれぞれnumberとfigureですが、やはり数字のことをnumberと言う場合もあります。
 もっとも両者が生まれた起源には密接な関わりがあるらしいのですが。数の概念というのは理解するのが難しいのです。類人猿など人間以外の一部の動物も、ものをかぞえることはできるんだそうです。えさのリンゴが2個のときと3個のときはどちらが多いか、どちらがおなかいっぱいになるかをかれらは知っています。ですが、リンゴが3個あり、川魚を3匹つかまえ、自分の群れにメスが3頭いるとき、それらが同じ「3」であるということまでは理解していません。
 人間の祖先はその垣根を取っぱらって数を獲得しました。おそらく、ものをかぞえるときに地面に線を引いたり、同数の木の枝や石ころを置いたりしたのでしょう。つまり、リンゴ3個のかわりに3個の小石や3本の線でそれを表現するようになった。べつの共通単位に置き換えたり見立てたりして、ものの量をはかろうとしたのですね。そうしてようやく数というものの存在を知り、同時にそれをあらわすための記号も開発されていった、ということになるでしょうか。ローマ数字も漢数字も1から3まではそれぞれ1本から3本の線を表現していて、そんな起源を強くにおわせてくれます。
 そう考えると、数と数字ということばがまったくごっちゃに使われていてもまったくわるい気はしない、と思えてきます。ただそのへん、理数系にいたころの名残というか職業病でしょうか、ことばの使い分けにどうしても敏感になってしまうようです。ほかにも物理学では重さと質量、速さと速度はそれぞれべつのものとして定義されています。ですので混同して使われていると気になってしょうがないっていう。…こんなんだから日常会話に影響が出まくるのでしょうね、私。

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