[なぞ] 2010/12/27

過ぎた日を、そんなふうに振り返ったりしない。あの頃には戻れないなんて、けして思ったりしない。

いつだって、感傷に浸る余裕なんてなくて。旅立ちの準備に追われて、気がつけばもう出発の時間。
そんなことばかりで。大切なものをいくつも見落としていることにも気づかずに。そしてまた、ずっと。
「あっという間だった」とは言いたくない。口にしたら認めてしまう気がして。負けになる気がして。
実行しようと思っていて実現できなかったことばかりが降り積もる。しかも、年々増えてきている。
自分らしく生きているつもりなのに、いつしか自分を見失って。見えないものを追い求めてばかりで。
どうしたって焦ってしまう。と同時に、今の生活が自分の体内時計と合っていないのでは、と勘ぐる。
一遍どこかでリセットしなければ。リズムを整え、同期を取らなければ。そのための機会なのだと思う。
冬の訪れは例年より足早に。故郷はもう雪に包まれているという。白銀の遠景に、不思議と心が温まる。

人間関係って難しい、なんて言わなくてもわかりきったこと。わざわざぼくが、口になどしなくても。
新たなツールやサービスを手に入れても、結局は変わらない。大元の使用者が変わりさえしなければ。
不器用だとか内向的だとか、そんな一言で片付けられる性格診断はうんざりだ。結局どうすればいい。
何も、成長が見られないままで。短所を自覚していて、認知していて。直せなくて、直そうとしなくて。
もう、これ以上テリトリーが広がるとは考えられない。では、今まで線を引いた陣地はいかほどか。
記憶を辿るたびに苦しくなる。胸が張り裂けそうになる。人並みに、人に誇れるものが何もない。皆無。
こんなのおかしいじゃないかと苛立つ。与えられる時間は等しく平等に24時間なのに、どうして見劣る。
これまでの人生は手札を集めるための時間だった。ここから先は、手持ちのカードで勝負するしかない。

本来ならば祭り上げられるようなタイプではない。いや、祭り上げられたという思い込み自体が罪悪で。
驕りたかぶっていた自分は深く省みなければならない。もう一度思い出そう。何がデフォルトなのか。
取るに足らない存在。いてもいなくてもいい存在。ただ、輪の外から好き勝手に首を突っ込むだけ。
それだけでいいんだ。そうでないと。人に迷惑をかけるとかじゃない。ぼく自身が傷つかないように。
それでもきっと恵まれているほうで。日々に溺れそうになっても、知的好奇心を失わずにいられるから。
こんなに空疎な空間に、充足を夢想して。満たされていると、満足なんだと、必死に暗示をかけて。
本当に書けないのは、そのこと。まともな人間の振りをして、人前に出たりつぶやいているという詐称。
初めての「全消し」。空っぽになった箱に、これからはたくさんの思い出を詰めていける。何色だって。

たとえば、落ちこぼれの自分でも働き口があって。食いぶちがあって。それだけでも、幸運なことで。
就職活動をしていた当時、“先輩”たちがみな朝から疲れた顔して電車に乗っていた光景を思い出す。
ああ、大人になるってそういうことなんだと。仕事ってそうなんだと。腹をくくれということか、と。
諦念の一方で、どうしても抗いたかった。いつも笑顔は難しくても、せめて前を向いて、胸を張って。
…どれだけ続いただろう。どれだけ続けられただろう。いつ途切れただろう。それすらも、忘却の彼方。
飲まれていった。社会というシステムに。知らずのうちに。否、知った上で身を投じたのかもしれない。
本当にぼくは、こんなふうになりたかった? こんな人間になりたかった? こうなるしか、なかった?
たとえ自分が笑えなくても、他人の笑顔を曇らせちゃだめだろう。次の世代に、夢を与えなければ。

見切った関係に、今さらよりを戻したりしない。あの場所には帰らないって、けして信念は曲げない。

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