[なぞ] 2010/05/20

結局はいくつかのテーマに分類されたうちの一つでしかないのだということを。この感情は。

わたしを渡す。壊れかけた宇宙の縁から救いを求めて。
繋がれた手のひらを介して、別段何が受け渡されるということはなくても。でも繋がりたい。
信憑性の低い情報に、信憑性の低い存在に、信憑性の低い優しさに妥協したりすることなく。
本物が欲しい。本当に欲しい。本心から欲しい。それが目当てと明言して、自分を追い込んだ。
それは曲芸回し。馬鹿の一つ覚えみたいにぐるぐる回して。ぐるぐる回って。Silly-Go-Round。
一人前になれないまま大人になった。もう一生、己の内なる弱さから逃げ続けるしかなくて。
そんな人間が何を願うのだろう。隔離された世界で、自分の足元を見失わないための居場所。
一脚ぽつんと置かれた、だけどぼくだけの椅子なんだ。

その上で「だから」と断るなら、忘れたわけではない。
ただの物々交換でも経済活動でもないことは知っている。それ以上の意味の、重みがあることを。
大げさではなく、それほどの行為なのだ。魂の一部分を削り取った結晶に他ならないのだから。
そこに価値を見出すか、見出した上で家宝にするかヤフオクに出すかは人それぞれだけれども。
だけど、ぼくとの間でそれが履行されなかった理由はきわめて単純。それだけの存在だったから。
価値どころか話題の俎上にも。目に映るものを、認めなかった。認知も、認識も、また是認も。
ぴしゃりと、氷水で顔を洗う冬の朝のようなある種の清々しさ。目を覚ませ、と言わんばかりに。
それでも心の寒さは、他人との間に壁を感じさせる。

――違うだろ? はっきり言えばいいじゃねえか。あのとき感じたのは男と女の間の壁だって。

言ってしまえば処女崇拝ぐらいの支配欲なのだろう。
まっさらな雪面に泥だらけの足跡をつけて回る。言葉を刻んで、自分のかたちにしようとする。
次から次へと新しいものに手を出して。ただそれは、過去の辛い思い出を上塗りしているだけで。
安住の地なんてどこにもないのに、少なくとも自分用にあつらえられた場所なんて絶対ないのに。
ひがんでいるだけ。取り巻きたちに阻まれて人気者に近づけない、集団に加われない劣等感で。
だからタグをつけたがる。組分けして、誤ってドラゴンがフェアリーを襲うことのないように。
自分はあくまで個の自分という曲芸回しとしてあり続けようとすることで、もやをかけている。
きみをつけ狙う虎視眈々とした視線を、隠している。

結局は便利な記号で表現された証明書の一つでしかないのだということを。この言葉遊びは。

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