いつも自分の周りに誰かがいるなどと思うな。
誰かが自分のために何かしてくれると思うな。
もう長年、自分自身に言い聞かせてきた言葉。
いざというときに他人を頼ることはできない。いや頼ってはいけない。経験から学んだ戒め。
濁った空気の中にいると、自分がいかにきれいな空気の中にいるのかがわかる。
きれいな空気の中にいると、自分がいかに濁った空気の中にいるのかがわかる。
善人のふりをしたり、世間擦れした人間のふりをしたり、慌しく循環する生活。
本当の顔はどちらなのか、なんて悩むも愚かで。うまく撹拌できていないだけ。
表も裏もない、演技でもない自分こそ完全体。
今さらどうしたって理想なんて追えないから。きみの背中なんて、追えないから。
目の回るような時間の流れの中にいるから、取るに足りない時間が貴重に思えて。
それこそ、取るに足りないこと。たった数秒の会話が、肺の底に鉛の欠片を落とす。
言うなれば、大事の前の小事。
そう、こんな些事に構っているいとまはない。つまらないけんかなんか、していられない。
閉塞感から飛び出そう、なんて発想がまずおかしい。
だって世の中はどこも閉じてなんかいないのだから。
自分ひとりが、ずっと闇の中で息を潜めていただけ。
蒸した室内も、窓を開ければ、ほらこんなに涼しい。
だから今、行いを悔い考えを改めなければならない。
かけがえのない存在をずっと見くびってきた人生を、深く反省しなければならない。
いつも自分の周りに誰もいないなどと思うな。
誰も自分のために何もしれくれないと思うな。
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