[こころ] くーるびず

 残暑厳しかったこの夏もようやく終わろうとしています。2007年夏の印象的なニュースとしては、電力問題が挙げられます。新潟県中越沖地震で原発が被害を受けた柏崎市の市長が東京を訪れた際、首都圏が電力の影響を何も受けていないこと、節電に努める様子が見られないことを嘆いていました。環境問題に対する現状を象徴するような報道だと思います。結局、猛暑のせいもあって消費電力は最高水準をキープしつづけ、京都議定書の二酸化炭素削減目標の達成はますます困難な状況になっています。
 夏の節電といえば、クールビズの取り組みも3年目を迎えました。名前こそ定着してきましたが、今年もやはりどこに行っても冷房はよく効いていたし、どれほどの成果があったのかあやしいものです。
 また、成果そのもの以外にも気になる問題点が見えてきました。
 デパートなどに出かけると、クールビズ対応のシャツなどがたくさん売られているのをよく見かけまして、違和感を覚えたものです。これは本来の目的とは違うのではないか、という気がして。
 なぜなら、クールビズとは、そもそも冷房の設定温度を上げるために軽装をすすめる呼びかけだったのではないでしょうか。仕事中に上着を脱ぎましょう、ネクタイを外しましょうという、つまり今まで着ていたものを脱ぐだけでよいのです。
 したがって、どうしてそこで新たな服を購入する必要が生じるのかがわかりません。軽装で、それでいてフォーマルなシャツというものを新たに用意して、それを着なければ失礼にあたるということなのでしょうか。けしてそんなことはないはずです。ノーネクタイになることで見た目というか行儀がわるくなったとしても、そこは地球環境のためにおたがい目をつむりましょう、という意味ではないのでしょうか。
 シャツ1枚作るのだってただではできません。原材料の一部に化石燃料が含まれていますし、製造ラインや輸送にもエネルギーが消費されます。そういった商品を生み出すことによって使われる資源のことを考えているのでしょうか。だいたい、「クールビズ商品」だとか「クールビズ商戦」という言葉そのものが矛盾をはらんでいます。電力の節約をうたっているはずなのに、実は別のところで資源の消費が加速している、というおかしな事態になっています。
 同じく今年から供給が始まったバイオエタノールにしたってそうです。たんに植物が原料だというだけの話で、バイオエタノールを燃焼させたって二酸化炭素の発生量が減少するわけではありません。つまりは何の問題解決にもなっていないのです。そればかりか、マイカー規制というもっと根本的な問題は手つかずのままだし、バイオエタノールを作るために穀物が使われて食糧の価格が高騰するなどさらなる問題まで起きています。このことも、排ガス抑制という本来の目的を見失ったまま、バイオエタノールを作って儲けようという意識ばかりが前に進んだ結果生まれた弊害なのではないでしょうか。
 生活の中でむだな消費を抑えること、商業主義一辺倒の考えを改めること、それが省エネにつながる唯一の道だということを、もう一度よく認識しないといけません。

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