[こころ] はたらくこと

 不況がつづくなかでもっとも深刻化しているのは雇用問題といえます。経営維持のための人員削減や解雇、新卒者就職率のいっそうの低下など、私たちの生活を守れるかどうかという危機にまで直面しています。そして雇用に対する不安から消費が落ちこみさらに業績が下がるという悪循環。
 原因のひとつには企業がかかえてきた旧体質があると考えられています。年齢や勤続年数により昇給する賃金、定年までイスが確保される終身雇用など。だれだって自分の暮らしが保証されているほうが安心できるのは当然のことです。こんなぬるま湯体系でも景気がよいうちはもっていたのですが、こうして窮地に立たされてようやく気づくのです。むだなお金などどこにもないということを。突然の収入減やいっそうの合理化をせまられ対応が遅れた企業は無理なリストラをするしかなくなったのでしょう。
 企業経営だけではありません、現在国内の多くのシステムが存亡の憂き目に立たされようとしています。健康保険制度や年金制度などは完全に受給のバランスが崩れていて、いつ破綻してもおかしくないでしょう。最近では失業保険も問題になっています。へたな職につくより失業保険の給付を受けたほうが多くもらえるというのです。そのため、入ってはすぐ辞めてを意図的にくり返す悪質なケースもあるのだとか。もちろん支払われる保険金の財源はずっと働いている人からの税金です。社会主義に片足をつっこんだような現行の制度でこの厳しい時代を生き抜いていけるのでしょうか。個人も企業も、そして国家も。

 いっぽう、近年は若者を中心にフリーターが増えています。古い見かたをする人からは定職につかないのは社会人として一人前ではないという意見もあるようですが、これこそ時代の流れに沿って確立されてきたスタイルなのではないかと考えられます。横一線の勤務時間や生ぬるい雇用体系に身をおくことなく職を転々とする姿が現在という時間にマッチしています。自分の時間を比較的多くもてるというゆとりも大切なことですし。
 フリーターにはある面でのたくましさを感じます。複数の職業や業種を渡り歩くことで自分の適正や自己アピール力をより明確にもてるでしょうし、また幅広い仕事をこなせる適応性や社会性、自己管理力なども身につきます。私は今の職、あるいはこの業種から離れることになったらほかの仕事でやっていける自信がありませんので、よりさまざまなものを見聞きし多くの技能に精通しているほうが強いと思うわけです。
 そういう生きかたを擁護するつもりではありませんが、ひとつの雇用形態として認識され広まっていくのもしかるべきだと考えます。実際にパートタイマーとしての採用は増えてきているわけですから。企業や社会のほうがこれまでの伝統的な通念を捨てて再建していくことが不可欠になるでしょうけれど。今、意識改革への転換期を迎えるなかにあって、働くことの意味をもう一度考えてみる必要があるのかもしれません。

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