「いやー! 今日もいいお湯だったね!」
「うんっ、ほんとほんと。露天風呂から見上げる星空がすごくきれいで……!」
「まさに天然のプラネタリウム! あーあ、あたしもカルナージに住みたいなぁ」
「ふふっ。……でも危ないよ? リオ。岩の上から飛び込んだりしたら」
「あははー……つい浮かれちゃって。――そういうコロナも、お風呂の中で泳いでなかった?」
「……そ、そんなことしないもん。わたし」
「ううん絶対泳いでたって! ねえヴィヴィオも見てたよね……およ?」
「うーん……」
「……ヴィヴィオ? 何か困りごと? 脱衣場に忘れ物とか」
「ん、違うの。アインハルトさんどこかな――って思って」
「そういえば……。今日はすぐ上がっちゃったっぽいね」
「そっかー。旅行も明日でおしまいだし、もう少しお話したかったんだけどな……」
「――そんなに気になるんなら、捜しに行ったら?」
「あっ……うん、そうだね。そうしようっと! ごめんね、二人とも先に戻ってて」
「いーよいーよ。……最後の夜なんだもん、ばーんとアタックしちゃいなって!」
「リ……リオ! 何言ってるの! 別にそんなつもりじゃ……」
「わたしはお似合いだと思うよ? ヴィヴィオとアインハルトさん」
「もうっ、コロナまで……! と、とにかく行ってくるねっ」
「――ここにもいない。はぁ……ルールーのお家、広くて捜しきれないよ。どこ行ったのかな……それとも、またトレーニングで外に出たとか? だったら一緒に……ん?」
「――。――ええ、それでも――」
「あっ、アインハルトさんの声……! どこからだろう、こっちの……空き部屋? こそーっと……」
「……私は今まで独りでしたから。とても勉強になりました」
「あれが全部ってわけじゃないけどな。ああいうトレーニングもあるんだ、くらいに思っときゃいいさ」
「わかりました。……相手がいると、随分違うものなんですね」
「ははっ、そりゃそうだろ。またいつでもセッティングしてやるよ。練習仲間として――な」
「はい――。ノーヴェさんには本当に感謝しています」
(ノーヴェも……? どうしたのかな、二人でこんな場所でお話なんて……)
「や、あたしはただ大人数のほうが楽しいと思って……。っつーかアインハルト、おまえ硬すぎなんだよ。もっと愛想よくしろっての」
「愛想……と言われても、私にはどうしたら……」
「だーかーらー! なんでそこで落ち込むんだ……。せっかく知り合いが増えたってのに、そんな顔してたら逃げられっぞ?」
「うっ。……それは嫌です」
「だろー? だったら笑え笑え。ほれほれー……、って……」
「――痛いだけですが。頬をつねられても」
「おいおい……。重症だなこれは」
「……。おかしいな。二人のこと見てるとなんだか胸がチクチクする……」
(というかわたし、なんで隙間からのぞいてるんだろ。アインハルトさん見つかったんだから堂々と出ていけばいいのに。――だけど、二人のやりとりから目が離せなくて……)
「……ん? おまえ浴衣着たことねーのか? 胸元ガバガバだぞ」
「えっ……、って! ちょっと、どこに手を入れてるんですか……!」
「直してやるだけだっての。――んー、覇王モードのときと比べて随分とちっちぇえのな」
「きゃっ……! のっノーヴェさん! 覗き込まないでくださいっ」
「温泉でさんざん見せといて何を今さら……。――ひょっとして、小せえの気にしてるとか?」
「……。ほ、放っておいていただけますか」
「そんな気にしなくたって成長期じゃねえの? それでも悩んでるってんならあたしが――」
「ひゃぁっ?!」
「わあぁ……触ってる、がっつり触っちゃってるよ……」
(……いいなぁ、アインハルトさんの少しふくらんだ胸。きっと柔らかそう……それにあの恥ずかしがってる表情……、って何考えてるのわたしー?!)
「んっ……あ……やぁっ……。ちょっ……いい加減にっ……!」
「まーまー。さすがにこれだけされたら顔の筋肉も緩むだろ。――形よし、肌の張りよし、弾力よし、っと。安心しなアインハルト、将来有望だ」
「だっ誰もそんな診断頼んでいません……っ! ……ひあっ、んん、っくぅ……も、もう離してっ……」
「……おっ。声が色っぽくなってきたんじゃねえ? そうかそうか、んじゃそろそろ先っぽいかせてもらうとするかな……」
「え……っあ、……きゃうぅっ! んはっ、やぁ……っあぁん! だ……だめっ、そこは本当に……っ」
(ど、どうしよう……! 本気で嫌がってるみたいだし、ここは助けに行ったほうが……。けどノーヴェがアインハルトさんにひどいことするわけ――)
「――やられっぱなしじゃ、こっちが収まりつかねーんだよ。借りはきっちり返させてもらう」
「くっ……はうっ……、な……何のことですか」
「よく言うぜ。いきなり夜道で襲いかかってきたくせに」
「あっ――。そ、それは……っ」
「張り倒されて、最後は路上に寝かされてさ。あんな屈辱……あたし初めてだったんだぞ」
「……申し訳ありませんでした。あの頃は自分の中の欲求を抑えきれなくて……その、衝動的に」
(……ええええーっ! の、ノーヴェたちの出会いってそんな過激だったんだ……。しかもアインハルトさんのほうが襲ったなんて――、……ゴクッ)
「いやジョークだから……。真に受けんなって」
「え……。では、この行為はノーヴェさんの報復という意味ではなく……?」
「んなわけあるか。ったく……こりゃやっぱ一回思いきりハジけとかねえと駄目だな。よし――」
「ひぁっ……! なな何を……!」
「いいからそこに座って――、ほらジタバタすんな」
「でっですが……! 浴衣、着付けるどころか逆に脱げてきている気が……」
「脱がしてんだよ。――言わせんな恥ずかしい」
(こっ……こんなののぞき見してたらいけないのに、でも体が言うこと聞かない……。足がふるえて、胸がどきどきして、っ……おなかの下あたりが熱くなって――)
「――フッ、いい眺めじゃねーか」
「あ……あまり見ないでいただけますか。なぜ私にこんなこと……」
「おまえだって、もっとヴィヴィオたちと打ち解けたいだろ? 積極的になれるようにあたしが手伝ってやっから。姉貴にもだいぶ仕込まれてるからな」
「お姉様……? ノーヴェさんの――ああ」
「……あたしも、最初は頑固で意地っぱりでさ。そこをスバルが――、まあ一肌脱いでくれたわけよ。おかげでお人好しな性格まで移っちまったけど」
「はあ……。しかし、誰かにこんなところ見られたら……」
「心配すんなって。あたし耳がいいんだ。――ウサギ一匹入ってきたって見逃しやしねぇ」
「はっ――」
(……びっくりしたぁ。一瞬ノーヴェがこっち振り返ったような……。う、うさぎってわたしのことじゃない……よね? まだ心臓バクバク言ってる……)
「逃げんなら今のうちだぞ。……そうか、合意と受け取っていいんだな?」
「……っ」
「それとも……あれか? もう足腰立たなくなったとか」
「……いいえ。ノーヴェさんのご厚意を無駄にしては悪いと思ったまでです」
「ふうん……? じゃ、ちょっと脚開いてみな」
「なっ――。そ、そんな格好できるわけ……ちょっ! 掴まないでください!」
「下は穿いてんだから何にも恥ずかしいことないだろー? 見せられない理由でもあんなら話は別だが――」
「……! ち、違いますっ、これはその……ああっ! やっ、だめ……いやあぁっ!」
(ノーヴェってば、脚広げたとこにあんなに顔近づけて……。アインハルトさんもアインハルトさんで真っ赤になってるし、見られてるのって……も、もしかして……!)
「……思った以上に準備万端じゃねえか。どうした、胸で興奮したか?」
「あああ……っ、いやぁ……。うっ……う……、す、すみません」
「なんで謝る……。アインハルトがこうなるのは何も変なことじゃない、普通なんだよ。……待ってな、すぐ楽にしてやる」
「……ええっ! まっ、そんなところ触るんですか……!」
「あん? なんだおまえ、自分でしたことねーのか? ――そりゃ教え甲斐があるってもんだ」
「~~~~ッッ!」
(やっぱり……! っていうか、わたしも……ここ、アインハルトさんとおんなじになってる。びしょびしょで、熱くなってて……。い、いじったら気持ちいいのかな……、……っ、んっ……ふ……)
「別に痛くねえだろ? 上からなぞってるだけだし」
「ええ……。ですが……じょ、徐々に変な感じに……んっ」
「それでいいんだ。全身の力抜いてこっちに任せてりゃ、じきによくなる。できるな?」
「は、はい。……ん、あっ……ふ……、っく……あ……はぁあっ……」
「よしよし。……要領わかったら、他のやつともしたらいい。たとえば――ヴィヴィオとかどうだ? 二人で高めあいたいと思わねえか?」
「はぁっ、はぁっ……、ヴィヴィオ……さん? ……はいっ、い、一緒に……っ」
「だったら想像してみな。あたしの指をあいつの指だと思って。あいつにされてると思って。ほら――」
「ん……っ……ひぁあぁっ! んんっ、いっ、ふあぁっ……、ヴィヴィオさん……ヴィヴィオさんっ……! あふっ、んっ、ひ……ぃっ、いいっ……も、もっとお願いしますヴィヴィオさん……!」
(わ……わたしの名前っ! アインハルトさんが触られながらわたしのこと考えてる……っ。こっちも手がとまんないっ、頭おかしくなりそう、もう最後まで……っ!)
「ふっ……ひあっ……、……わたしもアインハルトさんと一緒にっ……」
「ッ! しっ――」
「ふぇ……? の……ノーヴェさん……?」
「――驚きだ。まさか本当にウサギが忍び込んでたとはな」
(はっ……!!)
「ウサギ……ですか?」
「ああ。――そこにいるんだろ? 気づいてんだよ。盗み見とはまた随分とませたウサギっ子じゃねーか、おい」
「ということは、ウサギではなく……、人? 誰かいる……?」
「ほら、いつまでも隠れてないで顔出せって。……嫌なら引っぱり出すまでだけどな」
(こっちに向かってくる……! どうしよう、このままじゃ確実に見つかっちゃう。……ノーヴェたちの見ながらいけないことしてたの絶対にばれちゃうよ! そんなっ、こんな格好じゃ逃げられないし、なんて言い訳したら……)
「なに、悪いようにはしねえよ。むしろ……アインハルトと仲良しになる絶好のチャンスだぞ? だから出てこい、――」
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