[なのはSS] 密談

「ふえー……。すごい量だね。これで全部?」
「そうやで。多すぎるかもとは思ったけど、なのはちゃんなら欲しがるやろなーって」
「うんうん! これだけあれば証拠として十分すぎるくらい。助かるよはやてちゃん」
「お安い御用や。……訓練データやら模擬戦の記録はなのはちゃんたちに管理してもろてるけど、入退室のアクセスログなんかは各部署のトップ――六課の場合は私やね、その人しか閲覧できんようになってるから」
「そうだね。……あっ、機密情報の漏洩防止には万全を期します、はやて部隊長」
「…ん、よろしゅう頼むわ。まー、なのはちゃんなら問題ないやろけど」
「ふふっ。――それにしても、こんなに転送で行き来してたなんて…。最近はほぼ休日ごとって感じだね」
「そんなに……? なのはちゃんから相談受けるまで、ちっとも気づかんかったわ」
「……驚いた、こんなところにも入室記録が。本局の非常用備蓄倉庫」
「非常用…? 何やそれ?」
「うん、災害時なんかのために食糧とかを保管してあって、普段はめったに人の出入りがなくて…」
「…その部屋でニャンニャンしとったっちゅーことか!? あ、あの子らどれだけ盛ってんねん……」
「にはは…仕方ないよ。あそこは暗くて静かで、隠れてコソコソするにはうってつけだし、もしかしたら誰か入ってくるかもっていう緊張感が」
「――ていうかなのはちゃん? なんでそない詳しいん?」
「そ、それは……。その倉庫で前にわたしもフェイトちゃんとちょっと…」
「はぁっ!? あっ…アホーッ!! な、なのはちゃんたちまで何してるんや……!」
「ごめん…。だけど誘ったのはフェイトちゃんなんだよ? しかも攻めてくれなんてリクエストが……意外でしょ?」
「そらたしかに意外やけどそんな一面知りたなかった……。なんちゅうか、教え子が教え子なら教官も教官やな…」
「…うん。だから……本当ならわたしも大きいこと言えないんだ。わたし自身が、ミッド出身のフェイトちゃんと仲良くしてるんだし」
「そんなことないよ。なのはちゃんたちは上手くやれてる思う」
「人を好きになるって、とっても素敵なことだよ? 好きな人のために頑張りたい、守りたいっていう気持ちが、何倍もの力や勇気をくれる」
「それは異論ないな。私の場合は家族愛や!」
「だけど……、あの二人は好きな気持ちがマイナスに作用しちゃってる。おたがい依存しちゃってる」
「難儀なもんやね…。恋によって人は強くもなるし、弱くもなる。……なんて語ってる場合ちゃうけど」
「今のまま放っておいたら危険なことは確かだよ。たとえば……スバルとの連携は、今最悪に近い状態」
「訓練校からのコンビやし、てっきりスバルと仲ええんと思ってたけど…。なんやスバルが気の毒やなあ」
「それから、お義姉ちゃん――忍さんもすごく心配してた。なんだか様子がおかしい、って」
「…お義姉ちゃんかぁ。そっか、もう単なる幼なじみとちゃうんやね」
「そういうこと。二人ともわたしにとって特別な人だから…だからこそ、手遅れになる前に目を覚まさせないと」
「そこで、私となのはちゃんで一人ずつ説得にあたるっちゅう作戦やな? けど…、二人揃って頑固もんやし、大人しぃ言うこと聞いてくれるかどうか……」
「最悪そのときは……実力行使で」
「ん……そうやったね。ただ…、私は問題ないとして、なのはちゃんはよう決心したなぁ」
「…どういうこと? フェイトちゃんがいるから…って意味?」
「もし知られたら絶対タダじゃ済まへんで? 当事者にきちんと口止めしとかんと…」
「ううん、その必要はない。終わったらわたしから話すから。フェイトちゃんに…隠し事したくないし」
「…そーか。ま、そこは好きなようにしてくれてええけど。……って、なのはちゃん? ちょう元気なさそうやけど…やっぱり良心が痛む?」
「全然…って言えば嘘になるかな。でも、あの子を止められるのはわたししか……」
「フェイトちゃんかて、きちんと話したらきっとわかってくれる。……ほらほら、元気出しーな」
「やっ……! ちょっ、はやてちゃんどこ触って…」
「いやー、久々に発育具合でも確かめとこう思ってな。なのはちゃんスタイルええからホンマ羨ましいわ」
「何言ってるの、はやてちゃんだってしっかり成長して……ひゃあんっ!」
「んふふ…色っぽい声になってきたで? ――なんならいっそ、このまま二人で準備運動してまう?」
「ま、待って…っ。二人でって、だってわたしとはやてちゃんは別に……」
「せやかて、これからフェイトちゃんを裏切るかもしれへんのやろ? そんなら一人も二人も大して変わらんて」
「そんなっ…。そ、それはあくまで最後の手段で……やっ、あぁ…んふぁ、ってちょっと…!」
「ぐへへ…、ええんか? なのはちゃん、ここがええのんかー?」
「……っていうか。言い回しがいちいちオジサン臭いんだけど……。ええのんかーなんて初めて聞いたよ」
「あははは…参ったわぁ。つい六課のセクハラ担当としての地が――」

「今までそういう人たちの相手ばかりしてきたから?」

「な……っ。なのはちゃん何言うて……」
「…薄々気づいてたよ、はやてちゃん。――それも、昇進のためなんかじゃないってことも」
「……。大した観察力やね。私なんかより捜査官に向いてるんとちがう?」
「こんなときに茶化さないで」
「うぐっ……。…どこの世界にもおるんやね、物好きって。管理外世界出身の突然変異、現役の古代ベルカ魔導師、ロストロギアと融合したこの体――。出自を知った人らが、珍しがって声かけてきたわ」
「どっ…どうしてそんな誘い……!」
「ノーて言える状況やなかった。入局したての幼い私は、まだ実績も地位もなくて……お偉い方の機嫌損ねたら管理局から追い出される。ここで仕事して罪を償っていかなあかんのに、その居場所がなくなってまう、私とうちの子らの居場所が…って」
「そんなっ……。一人で抱え込むなんてそんなのっ…!」
「あの子らには余計な心配させたないんよ。……安いもんやって。私一人の体で、今のみんなの暮らしを――家族を守れたんやから。なのはちゃんも、どうかヴィータたちには言わんといて」
「だ…だけど……っ。ううっ…」
「ごめんな…、なのはちゃんにこんな話してもうて。…せやけど、なのはちゃんも同じやろ?」
「え……?」
「――今回の計画。教え子の失態を、自分も被ろうとしてる」
「それは…っ、それは本当にわたしの監督責任だもん…。はやてちゃんのケースとは違うよ」
「我が身を投げ出そうとしてるっちゅう点では同じや。…守りたい人のために、な?」
「……そうかもね。有望な教え子と大切な親友――二人を守らなくちゃ…っ」
「よっしゃ、その意気その意気。……と、そろっと時間やな。ぼちぼち転送ルームに行かんと」
「わたしはオフィスに戻るね。…後でまたこの部屋に来るけど。ここ使っていいんだよね」
「ご自由にどうぞ、や。リインに人払いさせとくし、そこら辺は心配いらんよ」
「あはっ…ありがとう。……スバルに先回りして入っててもらうけど、それもいいよね?」
「もちろん? ――ほな、なのはちゃん。しっかりな……!」
「うん! はやてちゃんも…!」

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