[なのはSS] 9×15×19

「いたたた……。あ…あれ、ビーチボールは? というかみんなは…?」

「もーっ、今の風なにー? 目に砂が入るかと思ったじゃない」
「けほけほっ…。うう…口の中が塩辛いよ……」

「ふえっ…? お、お姉さんたち……誰?」
「…ん? そういう君は……えっ? む、昔の私っ?」
「もしかして……、小学生の私と…中学生の私…?」
「ってことは、どっちも大きくなったわたしー? えええっ、どど、どうなってるのーっ!?」

 

「――えーと。それではちっちゃい方から順に自己紹介を…」
「た…高町なのはです。聖祥大附属小三年生…」
「……同じく高町なのは。聖祥大附属中学三年」
「時空管理局・古代遺失物管理部機動六課、高町なのは……って、間違いなく3人とも私なんだね…」
「…ここ、海鳴市の海水浴場……ですよね?」
「私たち以外、ビーチから人が消えちゃってる…ますけど」
「というか二人とも……。自分に敬語使うのやめにしない?」
「にはは…。だってー、一番大人のわたしって、今のわたしから見たらお姉ちゃんより年上なんだもん」
「19歳だっけ? そっか、4年でこんなに成長するんだ~」
「せ、成長って……。なんか視線がいやらしくない?」
「わたし、クラスの中でも背が低い方だから、大人になったらちゃんと大きくなるか心配で…」
「私も、主に胸が大きくなるか心配で…」
「胸とかいいからっ! こ、この通り健康でスクスク育ってますのでご心配なく…!」
「えへへ…はーいっ」
「うん。その水着からこぼれそうな谷間を見れば納得」
「もう……話を戻すよ? まずは状況を整理しよっか」
「えっと…。わたしたち別世界に飛ばされてきた…んだよね?」
「そもそもこんなのありえるの? 年齢の違う同一人物が一か所に集まるなんて、そんなこと――」
「中学生の私はすでに習ってるはずだよ? 新人局員の教育プログラムで」
「…あ。次元世界には時間と空間があって……って話?」
「そう。『時空』はその名の通り時間と空間のこと。空間的にだけじゃなく、時間軸が異なる世界も、次元のどこかに同時に存在してるの」
「えっ? えっ……?」
「あはは。ちっちゃい私が混乱してる~」
「その両方を行き来して、世界の均衡を保つのが時空管理局の…」
「…もーっ! 難しくてよくわかんないよー!」
「あらら、もう限界だったみたい」
「そうだね…。今はうんちくよりも元に戻る方法を考えないと」
「中くらいのわたしは、どうやってここに来たの?」
「それが……よくわからないんだ。中学最後の夏だからってみんなで海水浴に来てたら、いきなり砂嵐に巻き込まれて…」
「わたしも似たような感じ…。アリサちゃんたちと遊んでて、夢中でビーチボールに飛びついて……そしたらここに」
「うーん、手がかりなしか。……おっきい私は?」
「私は…ヴィヴィオを連れて帰省中で、海水浴場で泳ぎを教えてるときにいきなり高波が来て――」
「……びびおって?」
「あっ。そうか、過去の私たちは知らないよね。…うん、今ちょっと仕事中に保護した子を預かってて」
「へぇー、どんな子かなぁ。ねえ、男の子? 女の子?」
「仕事ってどんな…? 教導隊なのに捜査任務とかあるの?」
「だ…駄目だよ。詳しいことは教えられないよ」
「えーっ。ちょっとくらいいいじゃない、ケチ」
「――ケチとかじゃなくて。将来起こる出来事や事件を前もって知って、それで別の行動を取ったら…未来が変わっちゃうかもしれないんだよ?」
「そ、それはやばそうだね……」
「それに…。中学生の私だって、今まで自分の身に起きたことをそっちの小学生の私に教えてあげたいと思う?」
「……ううん。今までいろいろ大変なことがあったけど、…でもそれは自分で解決していかなきゃ。そうやって今の私があるんだから」
「でしょ?」
「た、大変なことって何だろう…。なんだか怖い……」
「ううん、心配しないで。これからの6年間、たとえ何が起きたって…必ず乗り越えられる。『私』が何よりの証拠だよ」
「私は…自分の進路をちゃんと見つけて、前に向かって歩いてるから。将来に不安感じることなんてないんだよ? 『私』が保証する」
「うん…うん! 未来のわたしたちが言うんだから間違いないね。……あ、あのっ」
「ん?」
「未来のことで……、一つだけ、知りたいことがあるの。…だめ?」
「別に…差し障りのない内容だったらいいけど?」
「何? 聞かせてみて?」
「うん…。――フェイトちゃんは…元気にしてる?」
「あ……」
「6年後、あるいは10年後…っ。フェイトちゃんがどうしてるか……ううん、せめて元気かどうかだけでも…!」
「……うふふっ。元気も何も、すごく仲良しだよ」
「本当!?」
「それはもう! 毎日一緒に学校通ってるし」
「今なんてもっとすごいよ。一緒に暮らしてるんだから」
「同棲ですかー! 思春期の私には刺激が強すぎるっ…!」
「…あちゃー。こっちには少し余計なこと教えちゃったかな」
「……う…ぐすっ…」
「ど、どうしたの?」
「……よかったぁ。また…フェイトちゃんに会えるんだ。ちゃんと友達になれてるんだ……! よかった…本当によかったよ……うっ…う」
「あーあー…。そう言えば涙もろかったな、この頃は」
「……おいで、こっちに。泣き虫だった頃の私」
「え…? う、うん…」
「ここ座って。後ろからぎゅってしてあげる…」
「あっ、ん……。…きゃははっ、くすぐったいよーっ」
「そっか、水着だからいろんなとこに直に触れちゃうね」
「よーし、私も頭いいこいいこしてあげる。なでなで」
「えへへっ。…ありがとう、もう大丈夫だよ」
「ん。これで一件落着」
「――ってまだ何にも解決してないよ! この世界から脱出する方法は……」

「スプライト・ザンバーーッ!!」

「なっ…なに? 空がガラスみたいに割れて…!」
「この魔法って……もしかして」
「…フェイトちゃん!」
「なのはっ……! 無事だった?」
「こ…この人が未来のフェイトちゃん? 完全に大人だぁ…」
「っていうか超セクシー……」
「…あれ? なんか私が知ってるフェイトちゃんよりさらに大人っぽい感じが…」
「? どういうこと…?」
「19歳じゃないの?」
「3人ともお待たせ。…詳しい原因は脱出してから説明するけど、暴発したロストロギアの影響で――」
「フェイトちゃん?」
「なに? えっと…一番大きいなのは」
「あの…。助けに来てもらっていきなりこんなこと聞くのもなんだけど……歳いくつ?」
「私? 22だけど?」
「ってことは、さらに別の時間から来たのー?」
「も、もう何が何だかわからないよ……」
「ちゃんと帰れるのかな…。あは、あはは……」

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