[なのはSS] 花の贈り主

「それじゃエリオくん、モニター開くよー」
「うん、お願い。……あっ、こんにちは。元気してた? ルー」
『こんにちは…エリオ、キャロ。…私は元気』
「今、話とか大丈夫だよね?」
『ん。約束してた時間ぴったりだから、こっちは何も問題ない』
「こんにちはー! …あ、はじめまして…かな?」
『えっ…? あ……そ、その子っ…』
「ごめんねルーちゃん…っ! 勝手にこんなことして。でも怒らないで聞いて?」
「ルーとどうしても話がしたいって、この子が――ヴィヴィオが」
「ヴィヴィオです! …えっと」
『……どうして』
「え?」
『私は…あなたにひどいことしたのよ? お母さんの元から連れ去って、引き離して。たとえあなたが覚えてなくても、とても許されることじゃ…。それなのにどうして……?』
「だから違うよそれ…! ルーちゃんは何も悪くない!」
「自分の意思じゃない、スカリエッティ一味に操られてただけだって、みんなちゃんとわかってる。当然ヴィヴィオだって…」
「ヴィヴィオ…、ともだちに…なりたいの」
『友達? …私と?』
「うん! だって…おねえちゃん、キャロたちとともだちでしょ?」
『え……っと…』
「もちろん友達だよねー? ルーちゃんっ」
「わざわざ言葉にして言ったことはないけど、少なくとも僕たちはそう思ってるよ」
『あっ、それは…その……』
「それじゃあきまりっ。そして、わたしとキャロたちもともだちだから……、おねえちゃんとわたしもともだち!」
『でも……っ。いいの? だって私はあなたを』
「――ヴィヴィオ」
『えっ』
「名前。ヴィヴィオだよ?」
『あ…。…うん、よろしくね……ヴィヴィオ』
「よろしくね! えへへ…。そうだ、おねえちゃんのことは、なんてよんだらいい?」
『何でもいいよ。名前でも――ルーテシアで』
「それとも、わたしみたいにルーちゃんって呼ぶ?」
「えーっと…。ううん、やっぱりさいしょはルーテシアにする。いきなりあだ名はハードルたかいから」
「っていうか…、『ハードル高い』なんて言葉の方がレベル高い気が…。どこで覚えてくるんだろう」
『ふふっ。アギトなんかはルールーって呼んでるけど…?』
「アギト? だれ?」
「そっか、ヴィヴィオは知らないんだっけ。今はシグナム副隊長…じゃなかった、シグナムさんと一緒にいるんだよね」
「ルーは今もアギトと会ってるんだ?」
『うん。今度こっちの世界に遊びに来るって。……そのときヴィヴィオにも紹介する。面白い子だから、きっと気に入ると思う』
「わーいっ! やくそくだよ、ルーテシア!」
『ええ、約束。…ヴィヴィオは何して遊ぶのが好き?』
「本をよむの! むげんしょこっていうところに、こーんな、こーんないっぱい本があって…」
『そんなにすごいの? いいな、私もたくさん読んでみたい』
「――キャロ。ヴィヴィオ連れて来て、やっぱり正解だったね」
「うん! ルーちゃんあんなに楽しそう…。本当によかった、本当に…」

『嘘でしょう?』

「!? ど、どうしたのルーちゃん!」
『キャロ…、ヴィヴィオの言ってること本当…? お母さんと別れて寮生活してるって』
「あっ…。そうなの、ちょっと事情があって…」
「でもへいきだよ? わたしが…わたしとなのはさんのためにそうするってきめたから」
『なのはさん…? ママとかお母さんって呼ばないの?』
「今は…もうちがうから」
『そんな…! そんなのって、そんなのって…』
「ル…ルー? どうしたんだ?」
『私がっ…、罪を犯して保護観察を受けてる私だって母さんと暮らしてるのに…。何も悪いことしてないヴィヴィオがお母さんと一緒にいられないなんて、そんなの…そんなのおかしいよ!』
「ルーちゃん…」
「……僕のせいなんだ。僕がヴィヴィオにそうするようにアドバイスっていうか…言って…」
「エリオくんも……そうじゃないよ。ヴィヴィオが自分で出した結論なら、わたしたちは見守ってあげなきゃ」
『けど…。ヴィヴィオがお母さんと一緒にいたいなら、その気持ちはきちんと伝えた方がいいと思う』
「気持ちを伝えるっていうと……手紙?」
「手紙は…。ヴィヴィオ、なに書いていいかわからない…」
「そうだなぁ、それじゃ何か贈り物とか?」
「…あっ、花とかどう? ルーちゃんがわたしたちに贈ってくれるみたいに」
「お花…うん! それだったら……!」
『なら私が届けてあげる。そっちにインゼクトを飛ばすから、ヴィヴィオが選んだ花をその子に渡して。後は私が…』
「とどけてくれるの?」
『これくらいするのは当然。……友達、だから』
「あっ……うん! ありがとうルーテシア!」
「そうと決まったら…、外に摘みにいこうか? ほらエリオくんも」
「ええっ? 僕も…?」
「もちろんだよエリオ! いっしょにさがしてね、なのはさんにピッタリのお花を…!」

« なのはSS

ソーシャル/購読

X Threads note
RSS Feedly Inoreader

このブログを検索

コメント

ブログ アーカイブ