[なのはSS] 思いがけない便り

「あーー……」
「……。なのは、休憩時間だからってだれすぎ」
「今日もよくだれています」
「自分に変なキャッチコピーつけてんじゃねーよ、ったく…。いい加減シャキッとしろよな。そうじゃねえとこっちまで…」
「教導中はちゃんとしてるんだからいいでしょー?」
「わあってるよ。大した役者ぶりじゃねえか、…カラ元気なのモロバレなんだよ。見てて痛々しい」
「…ヴィータちゃんはいいよね。今もはやてちゃんとラブラブで」
「ラッ…ラブラブとか言うな! なんでそこであたしが出てくんだよ! そもそもてめえから言い出して別れたんだろうが……ヴィヴィオとはよ」
「そうだけど…。私も、こんなに後を引くなんて思ってなくて」
「知るか。…そうだ、おまえん家にはフェイトもいるだろ?」
「いるよ。だけど、長期の任務とか捜査が入っちゃうと何日も留守にしたりするし」
「それじゃあれか、ダブルで落ち込んでんのか。ご苦労なこった」
「…ううん。フェイトちゃんは、別に平気――いなくても」
「はぁ? 何だよ、それ」
「一時的に帰ってこなくても、最終的には必ず帰ってくるから。それがわかってるから…待ってても全然不安とかなくて」
「……あーそうかよ。なんだ、なのはだってラブラブじゃ…」
「だけどヴィヴィオは…っ」
「あん?」
「ヴィヴィオは……もう帰ってこない。私はもうヴィヴィオのママでも何でもないもん。私たちは、もう家族でも何でも――」
「がああっ! イライラすんだよ…そういうの聞いてっと」
「ヴィータちゃん……」
「…なんつーかさぁ。面倒だよな、なのはって。一緒に暮らしたいならそうすりゃいいのに、意地張ってる理由がわからねーよ」
「意地っていうか…、一度決めたことだから。ヴィヴィオはもう」
「ママー、ママー」
「っ!? ヴィヴィオっ…?」
「……違うって。全然違う子じゃねえか。ホラ、あそこ」
「あっ…本当だ。あの局員が、託児所に預けてた子を迎えに来たんだね」
「そんなとこだろうな。…よその子の声と聞き間違えるなんて、いよいよ禁断症状っぽくなってるぞ? って…なのは?」
「ふふっ…。あの子、あんなにしがみついて。よっぽどママに会いたかったんだね。素直で可愛いなあ…」
「…おーい。聞こえてるか?」
「――ヴィータちゃん。私とヴィヴィオも、前は……親子だった頃はあんな風に見えてた…?」
「…見えてた、なんてもんじゃねえよ。自分で忘れちまったのか? 見てる方が照れちまうくらいの親バカだったろうが」
「そう…だったかな。あは…、もう遠い昔のことみたい」
「おいおい…」
「…もうヴィータちゃんでいいや。ねー、私のこと慰めてよー」
「はあ…? おまえいきなり何言って……っておい! 勝手にひっついてくるな!」
「いっそうちの子にならない? ヴィータちゃん、ヴィヴィオと同じくらいちっちゃいし」
「だから外見でガキ扱いすんじゃねぇ…!」
「名前だって似てるし?」
「〝ヴィ〟しか共通点ねえぞ…。だいたい、あたし『でいいや』って何だよ。ヴィヴィオと離れて寂しいのを他のやつで埋めたって、根本的な解決になんねーだろ」
「……わかってるよ、それくらい」
「フン、どうだか。――っ! 魔力反応ッ!?」
「えっ…ど、どこ? ……あっ、上」
「…虫? 召喚魔法か…! 本局に堂々と侵入してくるたぁいい度胸だ、こんなヤツあたしがブッ潰して――」
「ちょ、ちょっと待って。…別に襲ってくる気配とかなさそうだよ? それに……何か持ってる」
「んあ? …なんだあれ。花か?」
「あっ…。これ私にくれるの? …って、いなくなっちゃった」
「何だったんだ…? ったく人騒がせな」
「虫を使役する魔導師……って言ったら、あの子だよね? ルーテシア」
「ルーテシアって――ああ、あの子どもか」
「今は無人世界で暮らしてるらしいけど。でも、どうして私に花なんか…」
「……ヴィヴィオをさらったの、あいつだったからな」
「そんな…っ。まだ気にしてるのかな、事件のこと。あの子だって被害者なのに…」
「心配いらねぇよ、ルーテシアは。キャロたちが世話焼いてるみてーだし、真面目にしてりゃ処分なんてすぐ明けるだろ」
「そっか…、そうだね」
「ま、詫びの気持ちだろうと単なる挨拶だろうと、素直に受け取ってやりゃいいんじゃねえか? 花くらい」
「うん。そうする。……んふふ、いい匂いがする。花の匂いなんてかいだの、ほんとに久しぶりだなぁ」
「うえぇ…」
「……。なによヴィータちゃん、その反応は」
「い、いや何でもねえって。…まあそのうちいいこともあるさ、元気出せよ」
「ふふっ……ありがと、ヴィータちゃん。心配してくれて」
「バッ…そ、そんなんじゃねぇ! ベ、ベルカのことわざにそういうのがあんだよ、『虫は思いがけない便りを運んでくる』って…」
「…それって『虫の知らせ』じゃない? 私が知ってるのとは意味が……あっ、メールだ」
「なんだ今日は……。次から次にいろんなもんが来るな」
「本当だね。…えーっと、なになに? 差出人、聖王教会――カリム・グラシア…?」

« なのはSS

ソーシャル/購読

X Threads note
RSS Feedly Inoreader

このブログを検索

コメント

ブログ アーカイブ