[なのはSS] 素直ティアナ

「ティアー、早朝訓練の時間だよ。起きてー」
「んん…………」
「…ねー、ティアってばー。起きないんなら……モミモミしちゃうよ?」
「……」
「――。ち、沈黙は否定じゃないよね? 肯定と受け取っていいんだよね…? それじゃ僭越ながら……」
「……ん…、ん…っ…」
「んふふー♪ ティアの声、かっわいー。寝ててもやっぱり気持ちいいのかな? ……よーし、もうちょっと実験っ」
「ん……ふ……」
「…あれ、そういえば今日ブラしてないんだ? いつもは寝るときもしてるのに、珍しいー。まあ…その方がこうして生の感触を……」
「ん…んあっ……、…って……うわあっ! スバルっ!?」
「やばっ! お、おはよう……なんちゃって」
「……。あんたね…、起こすなら普通に起こしなさいよ」
「…えっ? そ、それだけ? 怒んないのティア?」
「なあに? わざわざ怒られたいわけ?」
「そうじゃないけど……」
「だったらいいでしょ。その…、別に嫌とかじゃなかったし」
「ティ、ティア?」
「だからって朝からその気になっても困るけど。どうせなら夜に……何でもない、着替えるわよ」
「え、今なんて……? ねえ、ティアってば~」

 

「最近ティアさんが変――ですか?」
「うん……。エリオとキャロはどう? 何か気づいたことない?」
「あ…僕あります。昨日の夜、自主トレーニングしていたらティアさんがタオルとドリンク持ってきてくれて、『遅くまで頑張ってるわね』って……」
「ふーん。ティアがそんなこと言うなんて、確かに意外かも」
「わたしにも、最近よく話しかけてくれるようになりました。休憩時間とか、お風呂のときとか…」
「お風呂……お風呂といえば! キャロこの頃発育いいよね~」
「…ふえっ? そ、そうですか?」
「うん! 背も伸びてるし、アッチやソッチの肉付きも……そのうちフェイトさんみたいないいスタイルに」
「わーーっ! スススバルさんっ…! そういう話は僕のいないところでしてくださいよ!」
「えー、そんな照れることないじゃない。ねっ、キャロ?」
「はいっ。それに…、わたしも知りたいな、エリオくんの発育具合……」
「僕の発育って…! というかいつの間にか僕がいじられるターンになっちゃってませんか!? ティアさんの話はどこへ……」
「あはは…。ごめんごめん、ちょっと脱線」
「――ティアさん、態度や言葉にとがった部分がなくなって、僕たちと距離が縮まった感じがします」
「だから、ティアさんの変化はわたしたちにとって……、それからスバルさんにとっても歓迎すべきことなんじゃないですか…?」
「あ……。う、うん。それはそうなんだけど……」

 

「はーい、今日の訓練ここまでー。オフィスに戻って日報書いてね」
「……ああっ、悔しい! あとちょっとでなのはさんに勝てたのに…!」
「ごめん、ティア……。私が最後ドジっちゃったから」
「へっ? スバルのせいなんかじゃないわよ。気にしないの」
「え……」
「それよりもあたしがフォローできてなかったから…。状況判断だって全然甘々」
「そ、そんなことないよ。ティアの方が私なんかよりちゃんと――」
「客観的事実、よ。せっかくスバルがいい動きしてたのに生かせなかったんだから」
「ちょ…ちょっと待って。私だって今日はダメダメだったよ……?」
「まーたそんなこと言っちゃって。毎日着実に力つけてるじゃない」
「どうして……さっきからそんな…」
「次は必ず勝ちましょう。あたしたちなら出来る。…信じてるわよ、スバル」

「一体どうしちゃったのティア!?」

「……なっ。ど、どうしちゃったのって何よ…。あんたこそ何言って――」
「だっておかしいよ! 私のことかばったり、みんなのことも気遣ったり、…今朝だって怒んなかったし! 今までそんなこと絶対なかったのに…」
「――ああ。…わかるでしょ? 『頭冷やした』のよ」
「それって……この間の…」
「思い上がってた自分を反省しただけ。努力してるのは自分だけじゃないんだし、人の頑張りにも目を向けて、認めてあげなくちゃって」
「あ…、うん。それは大事なことだけど…」
「それから、思ったことはきちんと言葉にしなきゃ伝わらない、ってわかった。……なのはさんに反抗するつもりなんかなかったのに、結果的にあんな…」
「それもその通り…だね。けど……だけど! それでもティアはわがままでいてくれなくちゃダメだよ!」
「……はあっ?」
「だってそんなのティアらしくないもん…! 自分を責めるとか誰にでも優しいとか、そういうの全然似合わないし!」
「ス、スバルあんたね……」
「イライラしてないティアなんか見てたら調子狂っちゃって、それで模擬戦も身が入らなかったのに……。私がミスしたり使えなかったらちゃんと叱ってよー!」
「ちょっ……。あんたどんだけマゾなのよ…」
「いつも勝ち気で、人にも自分にも厳しくて、いい意味で自己中心的。……そんなティアのことが『ランスターさん』の頃からずっと――」
「あーもうわかったわかった! …ったく、わがまま言い放題なのはどっちよ」
「あは…ホントだ。でもティアは付き合ってくれるんだよねー? 私のわがままに」
「言ってなさい。……あーあ、せっかく心を入れ替えるつもりだったのに、あんたのせいで台なし」
「…大丈夫だよ。表面的な態度が変わったって、中身の…ティアの本当の素直さとかは変わらない。ちゃんとわかってるから」
「う…うっさい」

 

「ティアー、明日は午前オフだよ。……もう寝ちゃった?」
「……すう……」
「…もうー。だけどまあ……夜ならしていいって言ってたし! それじゃお邪魔しまーす……」
「ん……、…え……ってなに夜這いかけてんのよ!!」
「うぎゃっ! いたた……ひどいよティア~。ティアだって嫌じゃないんじゃなかったのー?」
「それを言うなーっ! くっ、あんなこと言ったのは一生の不覚だわ……」
「まーまー、夜くらいはもうちょっと自分に正直になろうよ。ねっ?」
「調子狂うとか言ったのあんたでしょ! …もう許さない、今後セクハラ一切禁止!」
「えええー!」

« なのはSS

ソーシャル/購読

X Threads note
RSS Feedly Inoreader

このブログを検索

コメント

ブログ アーカイブ