[なのはSS] ザフィーラ争奪戦

「なあ、シグナム、シャマル。あたしらって今……一度きりの人生を生きてるんだよな?」
「ああ…そうなるな。闇の書の管制プログラムから切り離され、もう復活することは叶わん」
「そうね……。でもやっと、普通の人間らしく生きていけるわ」
「普通の人間か…。だったら、さ。その……れ、恋愛とか、してみてえと思わねえか?」
「……はあ?」
「まあ、ヴィータちゃんったら…。うふふふ」
「笑い事じゃねえ……! これでも真剣に考えてんだよ」
「何を言うヴィータ、おまえは主はやてに年中ベッタリではないか。ああいうのは世間一般には恋人同士のすることではないのか?」
「う…うるせえよ! っていうかはやては別! …そう言うシグナムはどうなんだ。ほらあいつ……ヴァイス陸曹とは仲いいじゃねえか」
「ヴァイス…? フッ、くだらん。あいつが一方的に絡んできているだけだ」
「シャマルは? 医療チームやってんだから出会いとか多いはずだろ」
「出会いって……。そりゃ知り合う人は多いけど、浮いた話なんかないわよ」
「そっか…。あたしはこんな外見だから、まずそういう対象にもならねえし」
「――いや、ヴィータは需要あると思うが? 一部のロリコ……ぐほぁ!」
「次言ったらギガントフォルムでブッ叩く!!」
「シグナム大丈夫!?」
「おまっ……将をいきなり殴るとは無礼な…」
「けど…真面目な話、生身の人間とは違うあたしたちと普通に接してくれるやつなんていると思うか?」
「そうよね……。恋愛なんてしたことないから、男性との付き合い方もわからないし」
「我々の存在に理解を示し、かつ我々と比較的親しい男。となると……」
「……あいつか」

「おいみんな、少々騒がしいぞ。自由待機とは言えあまり羽目を外すのは…」

「あ、ザフィーラ……! いいところに来たな!」
「ザフィーラ、ちょっとこっちにいらっしゃい」
「む……? 何か用か?」
「単刀直入に聞く。……この三人の中で、誰が一番好きだ?」
「なっ…! まっ待て、す、好きっておい……。突然何を言うのだシグナム」
「おまえこそ何を慌てている…。簡単な質問ではないか」
「そうは言うが…。私もずっと守護獣として生きてきたのだ。そんな感情、抱いたこともない」
「だったら…これからは? 私たちの中で付き合うとしたら誰がいい…?」
「もちろんあたしだよな? ザフィーラ。だって戦闘のとき、いっつも身を挺してあたしのことかばってくれるじゃんか。な?」
「そんなわけないだろう……。他の守護騎士を守るのが私の役目なだけだ。…だいたいヴィータは無駄な攻撃を受けすぎだ」
「ううん、本当は私よね? ずっと私のそばにいるって言ってくれたじゃない。あれ…愛の告白と受け取っていいのよね?」
「違う、断じて違う。あれは……シャマルが他の二人より戦闘能力で劣るから、護衛が必要だという意味で言ったにすぎん」
「いいや、ザフィーラは私とともに人生を歩むのだ。覚えているぞ、生涯私に付き従うと言ってひざまずいたあの夜のことを…!」
「それも誤解だ! あくまでリーダーとしてのシグナムに対する忠誠であって、人生がどうこうなどという意味ではない!」
「…そうだ、あたしはもう一個あるぞ! ザフィーラはあたしのこと背中に乗せて移動してくれるんだ! タンデムとかいかにもカップルっぽいだろ?」
「また訳のわからんことを……。…というかタンデムか?」
「くっ……確かにポイント高いわ。もしもヴィータちゃんの座り方が『直接パンツ』だったりしたら確実にフラグね…」
「ほう、奥手の振りしてとんだ好き者だな…。もしや、ヴィータを乗せながら背中に全神経を集中させているのではあるまいな……?」
「おまえらもちょっと待て! さっきから言っていることが滅茶苦茶だぞ! なぜ私がそんな嫉妬されたりいわれなき恨みを買わねばならんのだ!」
「あなたが早く答えてくれないからよ…。ねえ、誰のことが好きなの?」
「誰なんだよザフィーラ……?」
「さあ正直に答えるがいい」
「うっ……、そ、それは…」

「ちょおっと待った~っ!」

「わが主……!」
「はやて!」
「なんやみんな……私のおらんとこで楽しそうな話して。のけ者なんてひどいわ」
「あ、主はやて、決してそんなつもりは…」
「ちゅうか、みんなして変なこと聞くからザフィーラ困っとるやん。いじめたらあかんよー?」
「はい……。ごめんなさいはやてちゃん」
「それに! ヴォルケンリッターはみんな私の子や。せやから……もちろんザフィーラも私のもんやで!」
「えーっ! そんなのずるいよはやて…」
「はやてちゃんは人間なんですから、人間の男性とお付き合いした方が……」
「同感です。ザフィーラくらい我々に回してください」
「なんやそれ、ザフィーラを物みたいに……。こういうんは本人の気持ちが重要やろ? …なあザフィーラ、私とやったら一緒におってくれる?」
「……はい。盾の守護獣ザフィーラ、この身はいつでもあなたに捧げる覚悟です」
「うんうん、さっすがうちの子! 他のみんなも見習ってくれんとなぁ」
「では……ただ今、わが主と付き合うのにふさわしい人間の姿に――」
「……へっ? 変身とかせんでええよ? 動物形態のままでおってえな」
「は、はい……?」
「ああーっ、やっぱりこの抱き心地とか、フサフサした毛並みとか最高…!」
「え……あ、あの…わが主? 人間の姿では駄目なのですか…?」
「あかん……なんかゴツいから嫌や。犬耳ついたままで不自然やし…。そんなんよか動物のザフィーラめっちゃ好き~っ♪」
「そ、そんな……。こんなはずでは……」
「あはははっ! なんだよザフィーラ、完全にペット扱いじゃねえか」
「フッ…恋愛対象とは見られておらんのか。哀れなものだ」
「やっぱり大人しく私たちの中から選ぶしかないわねー?」
「つーことだ。次の休憩時間までに誰にするか決めとけよ」
「誠意ある回答を期待している。もし逃げたら……わかるな?」
「強制なのか!? な…なぜ私がこんな目に……」

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