[なのはSS] TEAM!

ギンガ「はーい、みんな集まってー」
チンク「ふむ、今日も時間どおり来たようだな」
セイン「よっしゃ、それじゃ集合するか!」
ウェンディ「了解ッスー! あたしが一番乗りッスよー!」
ノーヴェ「なにー! ウェンディなんかに負けるかよ…!」
ディエチ「二人とも元気だなあ…。そんなことで張り合うなよ」
オットー「まったく同感です」
ディード「…右に同じ」
アギト「やいてめえら…! 少しはルールーに先を譲ってやろうって気持ちはねえのか?!」
ルーテシア「まあまあ」
ギンガ「…うん、全員そろってるわね。それじゃさっそくプログラムを始めましょうか。今日は……みんなでリレー競走をします!」
一同「リレー競走……?」

 

ディエチ「何だここ…? 屋内グラウンド?」
ウェンディ「うっひゃーっ! めちゃくちゃ広いッスねー!」
ノーヴェ「海上隔離施設にこんな場所が…。クソッ、今まで隠してたな?」
ディード「……勝手にこんな設定にない建物出していいのかしら」
オットー「まあ筆者の脳内設定ってことで…」
ギンガ「そこの双子……その手の発言は慎んで」
セイン「んでー、リレーっていったい何すんの?」
ルーテシア「…私知ってる。何人かでバトンを渡しながら走る競技」
ウェンディ「バトン……って何ッスか?」
チンク「フフン、あれであろう? たまにミクシィで回ってくる…」
アギト「あんたミクシィやってたのかよ! 時代の先行ってんな!」
オットー「というか世界観ぶちこわし……」
ノーヴェ「チンク姉……マイミクになってくれぇぇ!」
チンク「わ…わかったわかった、わかったから離れろ。後でメール送っておくから、今はとりあえずギンガ殿の話を聞け」
ギンガ「これがバトンね。こんな筒の形をしてます」
ディード「…望遠鏡」
チンク「いやモノボケとかされても困るのだが…」
ルーテシア「……ちくわ?」
ディエチ「ルーテシアお嬢様まで…! しかもなんでちょっと疑問形なんですかっ? 自信ないなら無理しなくていいのに…」
セイン「アギトさんなんかこの穴の中にすっぽり収まりそうだよなー?」
アギト「いででででっ! …無理ー! 無理に決まってんだろ!」
ウェンディ「チンコー! ほらほらみんな見るッス! あたしチンコ生えたッスよー!」
ノーヴェ「バカーッ! ガキみてえなことやってんじゃねぇ!」
オットー「…というかシモとかアウトすぎ」
ディード「これだけ合同誌に載ってなかったりして……」
ギンガ「だからそこ! メタ発言禁止!」
アギト「なあ…、競走っつーからにはおたがいに競うんだろ? チーム分けとかどうすんだ?」
ノーヴェ「あたしはもちろんチンク姉と同じ組だかんな! そしてウェンディ、てめえは敵ー!」
ウェンディ「ええーっ、何でッスかー? ここは仲良くするッスよ……」
オットー「僕もウェンディは苦手だから別々のほうが…」
ディード「…私とオットーは一心同体」
ウェンディ「みんなしてあたしをいじめてるんッスねそうなんッスね?!」
ディエチ「じゃなくて…! みんなが好き勝手なこと言ってたらいつまでも決まらないだろ?」
ギンガ「そう思って、私が考えてきました。みんなを二チームに分けます。まずチンクちゃんチームは……」
チンク「待て待て待て…! …なぜちゃん付けなのだ」
ギンガ「だってチンクちゃんかわいいもん♪」
チンク「いや…、こんななりだが一応メンバーの中では最年長…」
ギンガ「だってチンクちゃんかわいいもん♪」
アギト「ダメだこいつ話通じねぇ…」
ギンガ「…コホン、では改めて。チンクちゃんチーム……チンクちゃん、ディエチ、ノーヴェ、ウェンディ。以上四名」
ウェンディ「ノーヴェ、今までジェットエッジに頼ってたくせにちゃんと走れるんッスかー?」
ノーヴェ「あんだと? てめえこそ足引っぱったらブッ殺すかんな!」
ディエチ「やかましそうなチームに入ったな……」
ギンガ「続いて、セインチーム。セイン、オットー、ディード、そしてルーテシア」
セイン「なんか、あたし以外パッとしないっていうか暗いっていうか……」
オットー「……」
ディード「……」
ルーテシア「……」
セイン「…だあああっ! こういう雰囲気好きじゃないのに…!」
オットー「というか、まるで三年後の進路を予見したような組分け…」
ディード「…シスター・ディードです。どうぞよろしく」
ギンガ「だからそこの双子(以下同文)」
アギト「…つーかよ、そもそもなんでルールーが入ってんだ?」
ルーテシア「なんというサプライズ人事……」
ノーヴェ「…ははーん。さてはアギト、自分だけ仲間外れにされて悔しいんだろ。自分も人間扱いしてほしかったんだろー?」
アギト「ちっ、ちげーよ…! たしかにリインのやつは管理局で階級まで持ってるし生意気だしムカツクけどよ……って今は関係ねえ!」
チンク「しかしルーテシア殿は普通の人間。我々と勝負になるかどうか…」
ギンガ「あら、一概に戦闘機人のほうが強いとは言えないんじゃない? …たとえば私やスバルがなのはさんに勝てないように」
ディエチ「……(ブルブル)」
オットー「なんか震えてる。…ディエチ?」
ディエチ「あああ……おじいちゃんがおじいちゃんが…。にげてー!!」
セイン「ディエチー! ディエチィィィ!」
ノーヴェ「人間と競走するよりどうせなら……あんたは出ねえのか?」
ギンガ「私…? ううん、だって私は先生だもの」
ディード「残念。ギンガ姉様と汗を流したかったのに」
ウェンディ「そうそう! せっかくだからこういう機会に運動しといたほうがいいんじゃないッスかー?」
ギンガ「――それはどういう意味かしらウェンディ?」
ウェンディ「ひいいいっ?! 誤解ッス、深い意味はないッスよ全然! っていうかドリルは危ないからしまうッス! 危険ッスからー!!」
ディエチ「…じゃあ、あとはお嬢様の気持ちしだいってこと?」
チンク「そうだな。ここは本人の意思を聞くとしよう」
ルーテシア「私……二日目だから」
ギンガ「ちょっ!! そんな仮病の言い訳どこで覚えたの!」
ルーテシア「…冗談。楽しそう。走ってみる」
アギト「決まりだな! アタイはルールーのサポートに回るからな」
ノーヴェ「よぉし! ならさっそくやろうぜ! 四人でここを一周ずつ回りゃいいんだろ?」
チンク「セイン…。言っておくが空飛んだりIS発動はなしだぞ?」
セイン「なんであたしだけに言うわけ?! …ていうか、地面の上走るだけだからディープダイバーとか意味ないし!」
ディエチ「けど……いつものこの服じゃ走りづらいような…」
ギンガ「そう言うと思って、運動しやすい体操服を用意したわ。みんなこれに着替えましょう」
一同「はーい!」
ディード「体操服……そこはかとなく心躍る響きね」
オットー「それかなりオッサン入ってると思う」
ディード「…でもSSだからいまいちわくわく感がないけど」
オットー「自分の文才のなさを棚に上げないように…」
ギンガ「いや、あの…。あなたたち誰と話してるの?」

 

ウェンディ「いいッスねー! 全然動きやすいじゃないッスかこれ!」
セイン「本当だな。今にも走り出したくてウズウズしてくる…!」
アギト「アタイも特注サイズの着てみたぜ!」(衣装提供・八神家)
ノーヴェ「けどよぉ、これ何つったっけ…ブルマか? 尻の形が丸わかりじゃねえか、これじゃ」
ディエチ「シャツもぴったりだから、体のラインがもろに出るな…」
ウェンディ「まーまー。みんなスタイルいいし、気にすることないッスよ」
チンク「……(ぺたーん)」
ウェンディ「あっ……」
セイン「チ、チンク姉…。その……ドンマイ♪」
チンク「慰めなどいらぬわ!」
ディード「……」
チンク「憐れみの目を向けるなー! せめて何か言わんか!」
ノーヴェ「はあはあ…あたしはこれでも全然オッケーだぜ!(ビッ)」
チンク「なぜ息を荒げているのだ! 少しもうれしくなどないわー!」
ルーテシア「チンク……仲間仲間」
チンク「いやいやいや…! たとえ今は同志でも、ルーテシア殿には希望に満ちた未来があるではないか!」
ウェンディ「…あれー? オットーだけ短パンッスか?」
オットー「うん…僕はこれで」
アギト「それもギンガの姉御が用意したのか? あの人もわかってんだかわかってねーんだか…」
ディエチ「でも一人だけ違う格好なんて……いや、まぁ…」
セイン「ああ…べつに問題ないっていうか、これはこれで悪くない気が…」
チンク「う……うむ。ノーヴェが姉にハァハァする気持ちもまったくわからないでもないというか…」
ノーヴェ「うっ…。オットーにブルマ姿見られるとなんか恥ずかしいぜ…」
ディード「…姉様がた。オットーをそういう目で見るのはおやめください」
セイン「おわーっ! い…いきなり背後から話しかけるなって」
ディエチ「いや、そういう目っていうか……あははは」
オットー「……。ちょっとドキドキ」

ギンガ「みんなー、ちゃんと着替えたー?」
一同「…………」

ギンガ「え……? ど、どうしたのみんな黙っちゃって…」
ルーテシア「デデーン。ギンガ、アウトー」
ギンガ「何ィーッ?!(ガビーン)」
セイン「いやいや……だってギンガさんがそのカッコはマズいっしょ」
ノーヴェ「つーか走らねえって言ってたじゃねーかよ…」
ギンガ「そうだけど…! 少しでも親睦を深めたいって思って、それでみんなとおそろいにしたのに」
ディエチ「でも体操服はビジュアル的にちょっと無理が…」
チンク「ギンガ殿。失礼だが……歳は?」
ギンガ「十七よっ! 父さんの祖先の出身世界じゃバリバリの現役女子高生なのにー! 妹がいるってだけで姉御キャラとか年増扱いばっかりされてる私の不幸を呪うわ…!!」
アギト「おいっ! 何わけわかんねーこと口走ってんだ!」
ディエチ「ちょっ…落ち着いてくださいギンガさんっ!」
オットー「言いだしっぺ自らメタ発言とか…」
ディード「…ここから先はフリーダムの予感」
ウェンディ「なるほどー、むしろ一番脂がのってる時期なんッスね?」
ギンガ「そういうこと♪ それに…スタイルならちょっと自信あるけど?」
チンク「それは私へのあてつけかー!」
セイン「たしかにそのプロポーションはうらやましいな…。胸でかいし」
ルーテシア「…乳なんて飾りなの。偉い人にはそれがわからないの」
オットー「……(もじもじ)」
ディエチ「オットー…? もしかして思春期しちゃってる?」
ディード「ご心配なく。オットーの処理は私がきちんとしますから」
ノーヴェ「それこそエロ発言じゃねえかコラァァア!」
ギンガ「それでは…、まず実際に走ってみましょうか。各チームで話し合ってオーダーを決めて」

ノーヴェ「あたしが第一走者な! あとは適当で…いやアンカーはチンク姉にしよう! そんで華々しくゴールしたチンク姉をみんなで胴上げだ!」
チンク「……いや胴上げはいらんだろう」
ウェンディ「ていうかずるいッスよ! ノーヴェが一人で勝手に決めて!」
ディエチ「こういう展開になると思ってたけど…。あたしは残ったとこ何番でもいいよ」
ウェンディ「それじゃー…、とりあえずあたしが二番ッスかね?」
ノーヴェ「うえぇ…。ウェンディにバトン渡すのなんかやだ…」
ウェンディ「ちょーっ! それひどいッスよ!」
ディエチ「…あーもう! そんなことでいちいちケンカするなよ…」
ギンガ「……チンクちゃん、状況はどう?」
チンク「ごらんのありさまだ。少しもまとまりがない」
ギンガ「そうみたいね…」

ルーテシア・オットー・ディード「…………」
セイン「作戦会議どころか会話すら成り立たねええええ!」
アギト「…つーか、結局全員が同じだけ走るんだろ? だったら順番なんてたいして意味なくねえか?」
セイン「んー…それもそうかな? じゃあアミダクジで決めちゃおっか」
ルーテシア「…待って。第一走者は私が」
セイン「およ? お嬢様、もしかして燃えてる?」
オットー「いや一番手は僕が…」
ディード「いや私が…」
セイン「なんだよなんだよ、みんな無口だけどやる気あるんじゃん! …けどさ、実はできればあたしも一番目がいいんだよねー」
ルーテシア・オットー・ディード「じゃあどうぞどうぞどうぞ…」
セイン「なんで三人してそんな息ピッタリなのさ?!」
アギト「…なあ、やっぱチーム分けの時点で問題あったんじゃねえ?」
ギンガ「そんなことないはずよ? このメンバーでがんばってみて」

 

【リレー・練習】
チンクチーム…ノーヴェ→ディエチ→ウェンディ→チンク
セインチーム…セイン →オットー→ルーテシア→ディード

ギンガ「…では第一走者、スタートラインに」
セイン「よし、いっちょ行くか……!」
ノーヴェ「……ふん」
ギンガ「第二走者の人も、すぐ出られるように準備しておいて」
ディエチ「あ、そっか」
オットー「…バトン受け渡しの場所取りが勝敗の鍵」
ウェンディ「わぁー…いよいよ始まるッスね!」
アギト「なんかアタイまでゾクゾクしてきたぜ!」
ギンガ「位置について。よおーい……スタートっ」
セイン「ぐほァ?!」
ノーヴェ「うゲェッ?!」
ルーテシア「えっ…? 何?」
ノーヴェ「いっててて……てめぇ! おもっきし顔殴りやがったな…!」
セイン「そ…そっちこそみぞおちに蹴りを…。うぐぐぐ……」
ギンガ「ピピーーッ!(笛) 二人とも何やってるの、もう! 相手を妨害しちゃダメでしょ! スタート直後に殴る蹴るなんて言語道断っ!」
ディード「熱○大運動会じゃないんだから…」
オットー「武器拾って投げまくれば余裕で優勝…」
ギンガ「それ父さんの祖先の(ry」
ディエチ「ノーヴェっ…! 早く立って走れ!」
ノーヴェ「わかってらあよ! うおりゃあああ……!」
セイン「やばっ! ま、待てーっ!」
ウェンディ「わあ…! ノーヴェやっぱ速いッス! やるッスね!」
ルーテシア「だ、だけど、……セインが逆転した」
チンク「何ということだ…。バテるの早すぎだ、ノーヴェ」
アギト「けど、セインもあんまり差を広げられねーみてえだな…」
セイン「ううっ……腹のダメージが…。オットー、受け取れ!」
オットー「…了解」
ノーヴェ「ゼハー、ゼハー……。クソッ、足が動かねぇ…!」
ディエチ「いいから急げ! あとちょっとだ!」
ギンガ「さあ第二走者はどうかしら…?」
アギト「オットー…! 何やってんだ、スピード上げろよ!」
ディード「オットーはいつだってマイペース…」
オットー「はっ、はっ…」
ウェンディ「ディエチもそんな速くないッスけど…、でもじわじわ追い上げてるッス!」
チンク「うむ。きちんとペース配分考えて走っているようだな」
ディエチ「ほっ、ほっ、ほっ」
ノーヴェ「よっしゃ…! ディエチが抜いた!」
ウェンディ「ディエチー、ここッスよー! あとはあたしに任せるッス!」
ディエチ「ああ…! 持ってけ……!」
セイン「ああもう、オットーのやつ! せっかくのリードが…」
オットー「…はい、お嬢様」
ルーテシア「うん……」
ギンガ「って、ルーテシアがいきなり歩いてる?!」
アギト「スタミナないってレベルじゃねぇぞ!」
ルーテシア「だって……。バトンもらった時点でかなり差がついてたからもう無理…」
セイン「いやいや…! あきらめないで走ってくれないと!」
ウェンディ「うわーんっ! 誰も追いかけてこないんじゃ張り合いがないッスよぉー!」
ノーヴェ「リードは広がっちゃいるが…、たしかにこれじゃ面白くねえな」
ウェンディ「ううっ…がんばって走ったのにあんまりッス…」
チンク「姉もあまり気が進まないが…。まあアンカーの務めを果たそう」
オットー「この差はちょっと絶望的…」
アギト「だあああっ! もう見てられねーよ! …ルールー! アタイが後ろから押してやる! これぐらい反則取られねーだろ?」
ルーテシア「アギト…ありがとう。……でも全然効果ない」
アギト「チッキショーッ! わかってたけどさ!」
ルーテシア「ふう、ふう…。……ごめんね、ディード」
ディード「いえ、お気になさらずに」
オットー「…実はディードはかなり足速い」
セイン「とは言え…もう半周以上遅れてるし。逆転は難しいだろうね」
ギンガ「…はい! チンクちゃんチーム、ゴール」
チンク「ふう……。勝ったというのに、このむなしさは何なのだ…」
ノーヴェ「ああ…胴上げって気分じゃねーよな」
ディエチ「相手がアレだったのもあるけど、あたしたちももっと速く走れたはずじゃないか…?」
ウェンディ「これじゃ不完全燃焼ッスよー…」
ギンガ「セインチームも……、今ゴール」
ディード「…追いつけませんでした」
ルーテシア「ううん。もとは私のせいだから」
オットー「誰か一人の責任じゃないです。僕たちみんなの負け」
アギト「けどこんな負け方悔しいよ……! うがああーっ!」

 

ギンガ「…どうだった? リレー、意外と難しかったんじゃない?」
チンク「ああ…」
セイン「ただ走るだけだと思ってたけど、奥が深いんだな……」
ギンガ「そこで質問です。――チームの勝利のために、って考えながら走ってた人いる? みんな、自分のことしか考えてなかったんじゃないかしら」
一同「……」
ギンガ「自分のわがままを通したり、自分勝手なことをしてたら…、チームが勝てないよね? チームとして、最大限の力を発揮できないよね?」
ノーヴェ「あ……」
オットー「…反省」
ギンガ「…人間は、みんな自分が一人じゃ生きていけないことを知っています。家族、仲間、所属する組織…いろんな人に守られて、支えあって生きてる。だから、みんな自分の『チーム』のために力を出しあうの」
ウェンディ「一度も考えたこともなかったッスよ、そんなこと…」
ルーテシア「……私も、ずっと自分は一人だって思ってた。だけど、今はちがう。エリオにキャロ、それにたくさんの人が…周りにいてくれる」
アギト「ルールー……」
ギンガ「みんながここを出て、人間らしく生きていくために……チームで協力することの意義を学んでほしいの。それが、今日の学習プログラムです」
ディエチ「そうだったんだ…。ちゃんと意味があったんだね」
ディード「ならば、どうか再挑戦を…」
ギンガ「…ええ! みんな、どうすれば自分たちのチームが勝てるか、もう一度よく考えてみて? 次の本番レースで、それをぶつけあいましょう!」
一同「おーっ!」

ディエチ「…まず、オーダー決めと作戦はリーダーのチンク姉に一任する。それでいいよな?」
ノーヴェ「あぁ……わあったよ」
ウェンディ「異論なしッス!」
チンク「…そうか。まずノーヴェ、おまえは第一走者に向かない。だがダッシュ力はあるから、アンカーに置いてラストスパートで発揮してもらおう」
ノーヴェ「ま、まあチンク姉が言うなら……」
チンク「先頭は…ウェンディがいいな。スピードがあるし威勢もいい。ムードメーカーとして、おまえの走りでみんなを盛り立ててくれ」
ウェンディ「なんか責任重大ッスね…! がんばるッスよ!」
チンク「姉は足に自信がないから、ウェンディの勢いをもらって二番目に走ろう。判断力のあるディエチは、レース後半の状況に応じて走れるよう三番手だ。…こんなところでどうだ?」
ディエチ「すごい…! それならぶっちぎりで勝てそうな気がする!」
ウェンディ「さっすがチンク姉! あたしたちの特徴よく見てるッスね」
チンク「フッ。伊達にずっと妹たちの世話してないからな」
ギンガ「……ふふふ。私からのアドバイスは必要なさそうね」

セイン「この際はっきり言おう。こっちはルーテシアお嬢様が穴だ」
ルーテシア「やっぱり……」
アギト「…いいから、セインの話を最後まで聞いてやれって」
セイン「だから、三人でできるだけリードして、アンカーのお嬢様に逃げ切ってもらう。…勝つにはそれっきゃない!」
ディード「私たちの順番は…?」
セイン「一番手はディードかな。三人の中で一番速いし、きっと相手も第一走者は足の速いやつ持ってくるだろうから…」
アギト「逃げ切り作戦なのに、最初から負けてちゃ話になんねぇしな」
セイン「その次はオットー。双子の息の合ったバトンパスでスピードに乗れば、さっきよりは速く走れるだろ?」
オットー「…たぶん。ディードから受け取れるなら」
セイン「んで、三番目にリーダーのあたしがガーッて差を広げて…」
ルーテシア「アンカーは……私?」
オットー「…そんなに気負わないでください」
ディード「負けてもお嬢様を責めたりしませんから」
セイン「その代わり…! あたしから渡すバトン、最後まで精いっぱい走ってゴールまで運ぶこと!」
ルーテシア「みんな……。うん、がんばる」
アギト「……ギンガの姉御。さっきの言葉、撤回させてくれよ。すげぇいいメンバーだな!」
ギンガ「でしょう? 私も楽しみにしてるわ、みんなの活躍」

 

【リレー・本番】
チンクチーム…ウェンディ→チンク →ディエチ→ノーヴェ
セインチーム…ディード →オットー→セイン →ルーテシア

ギンガ「すごい…。全員さっきと顔つきが全然ちがうわ。どうやら期待してよさそうね。……では第一走者、前へ」
ウェンディ「へぇ…ディードッスか。強敵だけど負けないッスよ…!」
ディード「私も負けるつもりはありません」
ギンガ「位置について……、よぉーい――スタートッ!」
チンク「始まった…! ウェンディ、しっかり頼むぞ!」
アギト「出だしはほぼ互角か…。…絶対ここでリードしてくれよ?」
ウェンディ「はっ、はっ……ねぇディードー?」
ディード「……?」
ノーヴェ「ウェンディてめえ! 何しゃべってんだ! 黙って走れ…!」
ルーテシア「……もしかしたら、何かの作戦かも」
ウェンディ「今度またディードのおっぱいモミモミしていいッスかー?」
ディード「……」
ディエチ「何言ってんだあのバカは…! ディードも表情一つ変えないし」
オットー「…まずい。動揺してる」
セイン「うそっ? ……あー! ディードが遅れはじめた!」
ウェンディ「やったッスー! これでリードしてチンク姉に……!」
ディード「くっ…!」
チンク「でかしたぞウェンディ、次は姉が……なっ?!」
ノーヴェ「嘘だろ…? バトンゾーンで双子が逆転しちまいやがった!」
オットー「…行きます」
ディエチ「オットー速…っ! さっきとまるで別人じゃんか!」
ギンガ「トップスピードまで加速した状態でディードからバトン受け取ったから、その勢いのまま走れてるのね」
アギト「やりぃ! うちらの作戦ドンピシャだぜ!」
チンク「くっ、面目ない…! 姉の力が及ばないばかりに…」
ディエチ「まだ大丈夫ー! あたしとノーヴェで十分挽回できるから! とにかく少しでも食らいついて…!」
チンク「そ、そうだった…。妹たちを信じてやらないでどうする……!」
ルーテシア「オットー…後ろから来てる。逃げ切って…」
セイン「ここまでは作戦通り! 次はあたしが…!」
オットー「はいっ…頼みます」
ギンガ「第三走者はセインチームが先行。練習とは逆の展開ね」
チンク「すまない…後は託すぞっ」
ディエチ「任せてっ…! この距離なら…何とかなる」
セイン「うおりゃあああああ……!」
ディード「…すごい気合い。さすが私たちのリーダー」
アギト「ああ…! これならもっとリード広げられそうだな!」
ノーヴェ「そうは行くかよ。こっちだって追い上げて…」
ウェンディ「……あれ? でもディエチのペース、言うほど上がってないッスよ?」
チンク「…ディエチなりの計算だろうな。リスク覚悟で無理に追うより、差が広がらぬように次につないでノーヴェで一気に逆転、と」
ノーヴェ「あいつ……粋なマネしてくれるじゃねえか」
ルーテシア「うう…緊張してきた」
アギト「気楽に行けって。こんなもん勝っても負けてもいいんだ。けど…アタイはひたむきにがんばってるルールーの顔が好きだな」
セイン「お嬢様……バトンをっ…!」
ルーテシア「うん…っ!」
ウェンディ「だいぶ差が開いたッスけど…ここから大逆転ッスよー!」
ノーヴェ「あたしがひっくり返してやる…! バトン貸せっ!」
ディエチ「ああ…! ……最初から飛ばしすぎるな、ノーヴェ!」
ノーヴェ「……! たりめーだ! 二回も同じヘマしてたまるかよ…!」
ギンガ「バトンパスのときに言葉をかけあうなんて……団結力の証ね」
ルーテシア「はあっ、はあっ……」
アギト「ルールー! 後ろっ…もう来てるぞ!」
ノーヴェ「…だあああっ! ぜってー負けねえ……!」
ルーテシア「ひっ……!」
ディード「がんばってください…!」
ディエチ「第三コーナー回った! そこから全速力だー!」
セイン「大丈夫、逃げ切れるっ! いけるいけるいける……!」
チンク「突っ切れノーヴェェェ!」
オットー「お嬢様……どうか走り抜いて」
ルーテシア「はっ、はっ、はっ……」
ノーヴェ「うらあああああ…!!」
ルーテシア「はあっ、はあっ、はあっ……きゃっ!(ドテッ)」
ギンガ「なっ…?!」
アギト「大丈夫かルールー…!! ……あちゃー、膝すりむいてる」
ルーテシア「ううっ……。…平気、走る」
アギト「ケガしてんのに何言ってんだ…! …ほら、痛くて足ひきずってるくせに! …もう十分がんばったって。だから棄権しな……な?」
セイン「アギトさんの言うとおり、もう十分だからー!」
オットー「リレーなんかよりケガのほうが心配…」
ディード「そうですよ。一刻も早く傷の手当てしないと…」
ルーテシア「……棄権はしない。みんながつないでくれたバトン、みんなの思いが乗ってるバトン…、ゴールに運ばないと」
アギト「る、ルールー……」
ウェンディ「やったっ! よくわかんないけどラッキーッスよ!」
ディエチ「これであたしたちの逆転勝利だ……!」
ノーヴェ「……ッ。……」
ウェンディ「…へっ? ちょ、ちょっと何やってんッスか? ゴール直前で立ち止まって…」
ディエチ「あのバカ……! 勝負の最中に敵に情けかけてる場合か?!」
チンク「二人とも待て! …我々のアンカーはノーヴェだ、ノーヴェの判断に任せよう」
ルーテシア「うっ…いたっ…、でもゴールまで……」
ノーヴェ「……見てらんねーな。肩貸せよ」
アギト「ノーヴェ…? 引き返してくるなんて何企んで……」
ノーヴェ「このまま勝ったんじゃこっちが気分わりーんだよ!! いいからつかまれ!」
ルーテシア「…うん」
ギンガ「――はい、ゴール! 同時にゴールしたから…勝負は引き分け!」
ディード「感動しました、ルーテシアお嬢様」
セイン「もう勝ち負けとかより、完走できたことがとにかくうれしいよ!」
オットー「♪さくらーふぶーきのー」
ルーテシア「えへへ…」
ノーヴェ「……悪かったな、みんな。勝手なことして」
チンク「いや、おまえの心意気に姉たちはしびれたぞ。成長したな」
ディエチ「ギンガさんが言ってた協力するとか支えあうとか…、それを一番体現してたのはあの行動だったのかな」
ウェンディ「まったく、最後はノーヴェが全部持ってくんッスからー。おいしすぎるッスよ?」
ノーヴェ「そんなんじゃねぇ! 相手のミスで勝っても面白くねーから…」
ルーテシア「…ノーヴェ。さっきはありがとう」
ノーヴェ「うっ…」
セイン「あー、ノーヴェが赤くなってる」
ノーヴェ「るせえ! こっこれは走って体が熱くなったから……!」
ギンガ「ふふっ…。今日はみんなたくさんのことを学んだみたいね」
チンク「ああ、素晴らしいプログラムだったぞ。感謝する」
ギンガ「では復習のために……次は水泳のリレーをやりましょう! みんなこのスクール水着に」
アギト「あんた実はコスプレさせたかっただけじゃねえのか?!」
ウェンディ「もしくはそれを口実に自分が若作りしたかったとか…」
ギンガ「――それはどういう意味かしらウェンディ?(きゅいーん)」
ウェンディ「ひええええーっ!」
オットー「…次は僕はどっちだろう。男子用か女子用か」
ディード「うはー夢がひろがりんぐ」

(おわり)

初出

2009/09/20 『かけっこ』(合同誌)

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