じゃがいもジャガー

ondです。ちょっと延暦寺に行ってきました。
…というほのぼの旅行記を書くつもりだったのですが、
その、なんていうか、
ちょっとどころじゃない事態になっちまいました。
その赤っ恥な顛末をここにしたためたいと思います。

最澄が天台宗を開いた延暦寺は、比叡山の山頂近くにあります。
日本における仏教の始まりの地として、今なお多大なる信仰を集め、
また国宝に指定されている寺社もあり、多くの観光客が訪れます。
(ここまで補足ヤドリビア)
延暦寺に行くためのルートには、主に次にあげるものがあります。
♪京都側から叡山電車→ケーブルカー→ロープウェイ
♪山中越え→比叡山ドライブウェイ
♪滋賀県側からJRまたは京阪→バス→ケーブルカー
♪途中越え→奥比叡ドライブウェイ
山のてっぺんにもかかわらず、さすが充実した交通アクセスです。
ですが今回はこんなのぜんぶ却下です却下。
……オレは自分の足で山頂を目指したいんだよ!!(でたよ)

そう、きょうの旅の目的は、自転車でどこまで行けるかというのを
試してみたかったんです。…バカですね。そうですね。続けます。
叡山電鉄の終点、つまりケーブルカーのりばのところまで行けることは
確認ずみ(っていうか経験ずみ)なんですが、その先に道はありません。
はたして、ほかに山頂に近づくためのルートはあるのでしょうか。
そもそも比叡山って、直線距離でいったら鞍馬より遠くないですよね。
もちろん、ここで言う直線距離というのは緯度と経度だけに
かぎっての話なんですがそれにしたって。
自転車で鞍馬寺まで行ったことのある私には別段どうってこたあない、
とちょっと自信をのぞかせます。むしろ両雄制覇をねらいます。
飛影×蔵馬。……言ってみただけとです。

市内の地図を広げます。もちろん京都側から攻めます。滋賀は受けです。
ケーブルカーのりばより先に山への道路は書かれていませんが、
ケーブルカーとロープウェイの乗り換え口付近から道路が延びていて、
その道が山頂の北側を迂回して延暦寺に到達しています。これだ。
つまり、ロープウェイのりばまでたどり着ければ、そこから先の
道のりは確保されているというわけです。
では、そこまでどうやって行くか。
自転車を担ぎこんでケーブルカーに乗りこんだりはいたしません。
そんなことは私のしょうもないプライドが許しませんから。
大昔の人は、交通機関も自動車もないのに山に登ったんですから。
きっとどこかに道があるはずです。自分を信じてー!(信じるなよ)

より詳しい情報をえるため、mapion.co.jpを検索します。
地図の縮尺をいちばん拡大して、あっちゃこっちゃ探しました。
スタッフ全員一生懸命探しました。そしてお母さん見つかりました!
(それはもう古い)
修学院の奥のあたりから、山に向かって点線が引かれています。
はじめは市町村の境界線かと思ったんですが、どうも違うようです。
左京区の面積の広さを肌身をもって実感している私が断言します。
その点線をたどって地図をスクロールさせていくと、なんと、
途中で線がとぎれています!(だめじゃん)
しかし、そのもう少し先には、件のロープウェイのりばが見えます。
これはひょっとして細い道があるということなのでしょうか。
実線ではなく、点線で描かれている道。しかも途中で消えている。
危険な香りがぷんぷんします。スネ毛は死の香り。

ですが、とにかく道が続いているらしいことは判明しました。
行けるところまで行ってやろうじゃありませんか。

そして当日を迎えて、午前、自転車に乗って出発します。
白川通から修学院に入っていきます。
体がなまなま言っている、もとい、なまっている私は、
出だしの上り坂で早くもくじけそうになりました。
こんなところに6年間も行き帰りしていた某は大変だっただろうなあ。
(自分の話は何事もなかったかのようにスルー)
前もって調査したとおりにしたがい、修学院離宮の脇を抜けて
音羽谷という集落に向かいます。
この地域には、音羽川という小川が流れています。
ドイツだったらバッハさんです(何)。
比叡山のふもとに、静かな農村と広大な田畑が広がっています。

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ていうか、素で田舎です。自宅の近くにこんな場所があったなんて。
天童、感動。景観保存地区に認定します。<おまえがするんか
川沿いにもうすこし進むと、林に囲まれたのどかな一帯があって、

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?!

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ええええええええええええええーーっ。
いやもうちょっと待てよと。ジャスタモーメントと。(なぜ英語)
リアルに野生のサルです。それもうじゃうじゃいます。
こんなイベントはまるでもって想定の範囲外です。郵政想定外ブラです。
ど肝を抜かれましたよアイアム。まさかこんなところで出くわすなんて。
ぼくはきょう、キタキツネをみてしまった。(ハウスシチュー)
だって、現代人にとっちゃあ動物は動物園で見るものだと
インプットされてるんですから。先月も神戸の動物園行ってきたし。
リスザルとかマーモセットとか超絶かわいかったなあ。
……はっ、いかんいかん。

気を取り直して(?)サルですが。
私の姿を見つけるとたいていはすぐに逃げ隠れるんですが、
なかには意に介せず堂々としているもの、牙をむいて威嚇するもの、
木の上から枝なんかを投げつけてくるものもいます。
ぜんぜん私まで届かないところに萌えてしまいましたがそれはさておき。
どうしましょうこれ。ナチュラルに自然の猛威なんですが。
地球ふしぎ大自然なんですがー。
サルいるよサル。サルヤバイ、マジヤバイ。(だからそれは何なの)
私だってかつては吉田山をなわばりにしてきたエテモンキー、
なんて言っても通じないでしょうし。そもそも言葉が。
しばらくあっけに取られてしまいます。

そこへ、近所の人とおぼしきおじいさんが現れました。
ちょっと話を聞いてみます。なんだかローカル旅番組みたいです。
「畑の作物食い荒らして大変なんや」
そういえば、いま全国で野生動物の被害が急増していますよね。
私の家から自転車で10分もない、こんな身近な場所がまさに現場です。
とても深刻な問題だったんですね。
感心していると、おじいさんがいきなり大声を上げました。
サルたちが驚いて逃げます。こっちもびびってちびりそうになりました。
それから大きな石を拾って投げたりして、追っ払っていました。
なんとマサカリ投法です。マスターズリーグからお呼びがかかるかも。
今、おじいちゃんが元気。
犬の散歩に来たおばちゃんも「サル怖いなあ」と言っていました。

人と自然の共生。むずかしい課題です。
私がこの山を極めれば、その答えが見つかるかもしれません。(ないない)

さらに先へと進みます。
すると、急に坂の勾配がけわしくなって、しかも舗道は行き止まりです。
しかし、歩いて入っていける脇道が見えます。
取ってつけたような小さな看板には、登山道と書かれています。
……ととと登山道?! 都産貿?!(全然違う)
力道山?!(はてしなく違う) 消臭力?!(なんでやねん)
登山って、あの登山ですよね。ほかに何があるっていうんでしょう。
地図を確認すると、例の点線のスタート地点とほぼ一致します。
しかもタイミングよく、山登りルックのおじさん4人組がやって来て、
その入口に入っていきました。ますますもって確証が深まります。

つまり、ここから登れば山頂や延暦寺に行けるわけです。たぶん。
しかし先に進むには、ここで自転車を捨てていかないといけません。
自転車で行けるところまで行く、という当初の目的は終わりですが、
ここからは余興というか第二の人生というか裏シナリオというか
放送終了後のお楽しみっていうかー。
いやいや、落ち着け、落ち着け私。冷静になって自分に言い聞かせます。
そんな危険をおかす必要がどこにありますか。
田園風景に出会い、サルとも遭遇してすでにおなかいっぱいのはずです。
日記のネタとしても十分ことたります。(所詮はネタ集めかよ!)
ですが、ここであきらめていいのでしょうか。<いいんだよ
あきらめたらそこで試合終了ですよ?<だから終了しれよ

……そこいらに自転車を停めて登山口に入りました。
後悔日誌のはじまりはじまり。

まずい、非常にまずい、この状況。
山道に入ってから5分もしないうちに息が上がってきました。
10分もしないうちに全身汗だくになります。
やっぱり無謀すぎました。体力の限界ですごっつぁんです。
引き返すなら今のうちです。引き返せー、引き返すのだー。
ですが、こんな中途半端なところでやめたって何も残りません。
自分が生きてきた証を刻みたいんですよ!(おまえは誰だ)
ですが、相当きつい山道なのですでにくたくたです。クターのカレー。
最初こそは「山道おもしれー!」と浮かれて、デジカメで写真撮ったり
していたんですが、もはやその元気もなくなりました。
その序盤にかろうじて写したものがこれです。

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山道っていうか、もう道じゃありません。
けもの道にも見えず、むしろ鉄砲水が通った跡のようです。
段差がひどく、手を使ってはい上がらないと登れないところもあります。
もはや「道」の定義を逸脱しています。ロッククライミングです。
世の中にはやっていいことといくないことがあります。
今やっているのはもちろん後者!
ここは人間が足を踏み入れてはいけなかった場所だと痛感しました。

きのう人と電話したとき、
「あした山登りに行ってくらあ」
と冗談まじりに話したんですが……。
冗談じゃなかった! 冗談じゃないわよ! あんた鬼の子だよ!
ていうか鬼畜ルートです。(なんてこと書いてくれてんだおまえは)
四方を木に囲まれてまわりが見えず、自分がどこにいるかわかりません。
道なき道をひたすら進むだけです。ごはんがススムくんです。
上空でゴウゴウ風が吹いています。いつ雨が降り出すものやら。
きょうの降水確率60パー(京都府南部)だったっていうのに。
だんだん、自分の行動がシャレにならなくなっていることに
気づきはじめました。ギャグでも何でもなくただの登山です。
ondだけはガチ。

だいいち、本当にこの進路であっているんでしょうか。
登山口で見かけたおじさんたちの姿もいっこうに見えません。
まあ、山登りのベテランと一見さん、容易に追いつけるはずありませんが。
それにしては足跡ひとつ見つけられません。
まさか、何者かが私を山に誘いこむために幻を見せたのでしょうか。
言われてみれば、あたりをマヌーサっぽいもやが包んでいます。
これはもしや天狗の罠? 鞍馬天狗?(比叡山だっつってんだろ)
もしくは、こんなこと考えたくありませんが…神隠しにあったとか。
疲労のあまり頭の中がファンタスティックになってきています。

こんな千と千尋は嫌だシリーズ。
「千と千尋の照れ隠し」
はにかみ屋さんなんだね。
「千と千尋のハゲ隠し」
オンドゥルヅラダッタンディスカー!
「千と千尋の所得隠し」
コメント「国税庁と見解の相違があった。すでに修正申告を提出した」
「千と千尋の金隠し」
下ネタじゃねえか。
「千と千尋の紙隠し」
紙がなかったら拭けないよ。<やっぱり下ネタじゃねえか
「千と千尋の隠し味」
ハクのおにぎりだけ愛情というスパイスが入ってるんだよきっと。
「千尋(あずまんが大王)の神隠し」
途中から出番なくなったなあ。
「千ノナイフガ胸ヲ刺ス」
いやもう何もかも違うから。

登りはじめて20分。孤独なレースは続きます。
勝利も敗北もないまま。いえどっちかっつったら完敗ですが。
やらなきゃよかった。登山口なんて知らなきゃよかった。(テーマ日記?)
激しい後悔に襲われながら、ふと不安がよぎります。
このまま道に迷ったり、疲れて動けなくなったりしたらどうしよう。
もともとサイクリングの予定だったので、装備もアイテムも不十分です。
いちおう外歩き用の靴ですが、おそらく山歩き用ではありません。
携帯電話はありますが、いつ圏外になるものやらわかりません。
方位磁針も十徳ナイフもありません。乾パンも寝袋もありません。
(一体どんな事態を想定してんの)
遭難したときに裸で抱きあって温めあえるパートナーもいません。
(それは雪山だろっていうか、要するにまだ余裕あんのな)
これって……めちゃくちゃやばくない?
ここから無事に帰れるのか、切実に心配になってきました。
と、のどが渇いたので、水筒の水を飲んでちょっと一息つきます。
(なんでそんなのだけちゃっかり用意してあんだよ)

少しだけ視界が開けたところに出ました。涼しい風が超気持ちいい。
ふもとの景色を眺めてみると……どこだここは。

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たぶん宝ヶ池一帯ですね。上空からだとまるで違って見えます。
なんだか遠い世界に来てしまったかのようです。
それとも、まさか天国への階段に片足を乗せている状態なのでしょうか。
と、そこへなにやら放送のようなものが聞こえてきました。
この音は聞き覚えがあります。古紙回収のトラックです。
さらに言うなら関西古紙回収協同組合です。旭商事じゃありません。
ちょっとだけ現実に帰れたような気がしました。よかったよかった。
頭上から鳥の鳴き声もわんさか聞こえます。
チュンチュン、チチチチチ、ピーヒョロロ、ホーホケキョ。
うぐいすもいます。思わぬ春のお出ましです。
こんなところで鳴いてないでさっさと私に春を運んできて(略
というか、ondの頭の中がいつまでも春だからこんな事態になったのでは。
反省しつつ先に進みます。

息苦しくなってきました。高山は酸素が薄いです。(被害妄想)
すでに足もガクガクです。生まれたての小鹿が立ち上がる瞬間です。
ひざが笑っています。大木こだまさんに何と言われようと笑っています。
往生しまっせひびきさーん。…おんおん往生際です今まさに。
私は心の中で祈っていました。
神様仏様、どうか私を無事に帰してください。
日記のネタのためとか言って軽い気持ちで山に入ってごめんなさい。
いい子になりますから。学校の宿題もちゃんとやりますから。
いつも三日坊主の腹筋背筋腕立て伏せも休まず続けますから。
「千手ピンチだ」とか、仏教をバカにするネタはもう言いませんから。
おさい銭のかわりに有効期限の切れた割引券とか入れたりしませんから。
メール書くときの語尾をぜんぶ「りゅん」にしたりしませんから。
三つ折り靴下を片足だけ履かせるとかマニアックな要求はしませんから。
というわけで、どうか私をお助けください!<助かるわけねえだろ
めでたしせいちょうー。(異教徒)

そのとき、人の話し声が聞こえてきました。
いよいよお迎えが来たのでしょうか。お迎えキターー。(死ぬぞ?)
上のほうを見ると、見覚えのある人たちがいます。
いました、おじさんカルテットです。やっと追いつきました。
同時に、私が登ってきたルートが正解だったことも裏づけられました。
カルテットは足を止めて休み、山からの眺めを楽しんでいるようです。
私が近づいて声をかけようとすると、会釈をしてくれただけで
すぐに先に進んでいってしまいました。
若僧のことなんざ眼中にないようで、私をその場に放置プレイ。
しかたないのでそこで休むことにします。それにしてもよかった。
ここまでずっと単独歩行できたので、ほかの人の姿を見かけて
こてんぱんに安心しました。ひとりじゃないって素敵なことね。
それと、私が追いついたということは、おじさんたちはもっと
スローペースで登っていて、休憩もきちんと取っているということです。
たしかに、ここまで大股で登ってきたせいか、しこたま疲れています。
私も見習って、歩幅をちぢめて体力を温存する作戦にうって出ました。

それからは、私とすれちがって山を降りていく人や、
へろへろの私を追い越して登っていく人と何人か出会いました。
こんにちはー。どうもー。自然とあいさつが口をついて出ます。
無口で愛想のわるいondらしくもない行動です。
山登りという共通の苦しみがあるからでしょうか。旅は道連れ世は情け。
人はひとりでは生きていけないんだなあ、と悟りの境地です。
しかし、そんな気分も長くはつづきません。
曲がりくねっていて、周囲をがけや木に囲まれた見通しのきかない道です。
前を行く人の姿はそのうち見えなくなって、すぐひとりになります。
ひとり身のせつなさに枕をぬらすのだなあ、とあきらめの境地です。
悲しいなあ、悲しいなあ。
私は何をやっているんだ。素に返って悲しみのどん底に陥りました。

過去に山登りをした経験もあるにはあります。
今回の無謀な計画の発端となった(?)鞍馬参りもそうですし。
子どものときは、見附市の大平森林公園によく遊びに行っていました。
(別方面でローカルトーク)
山道をハイキングしたり、アスレチックコースを回ったり。
富士山の五合目まで行ったこともあります。(車で)
中学のキャンプのときはオリエンテーリングをしました。
高校の遠足はガチ登山でした。学校から歩いてって山を延々登ります。
私はフライパンを持参して、山頂でホットケーキを焼きました。(バカ)
市内を一望しながら食べたホットケーキの味は忘れません。
……って、ちょっと待て。
これはまさか「思い出が走馬灯のように蘇る」状態では?!
しっかりしろ、しっかりしなさいツヨシ。自分をしっかり持て。
あぶないあぶない、あやうく精神崩壊パルスYに突入するところでした。

途中で太い木の枝を拾いました。つえをてにいれた!
これでちょっと山歩きが楽になりました。お遍路さんモードでーす。
右手で杖棒ついて、左手で痛くなった腰をたたいて歩きました。
まるっきりおじいちゃんです。なりふりかまってられないのよ今は。
すると、進路の先に人が歩いているのが見えました。
おじさん4人組です。ですが、さっきのカルテットとは人員がちがいます。
CLAMPのようにメンバー総入れ替えしたのでしょうか。
(あっちは改名しただけだろ)
おそらく、私を途中で追い越していった人たちでしょう。
休憩しているところに追いついて、声をかけました。
みなさん登山経験ゆたかで、いろんな話を聞かせてくれました。
私は素人なので牛鮭定食を食ってました。(何)
そのあと、後ろについて歩かせてもらうことにしました。
5人パーティーは反則です。なりふりかまってられないのよ今は。

人の後ろについて歩くのは非常に楽です。
道に迷う心配もありませんし、何かあったときに心強いです。
心なしか足取りも軽くなってきた気がします。
ひとりでは困難なことも、みんなだと乗り越えていける。
山が私に教えてくれました。(寝言)
そうこうしているうちに、舗装された階段が見えてきました。
そこを登りきると、ケーブルカーの駅がありました!

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ヤッター、ヤッタ、ヤタヨー。(はじめてのチュウ)
地図で調べた例の乗り換え口のところまで、私はたどり着いたのです。
ジュースの自動販売機もあります。しかも高山料金ではありません。
すでに水筒がすっからかんだった私はここで水分を補充。
そしてトイレで余分な水分を排出。新陳代謝がお盛んなんですね。
ここまで来れば、あとは目的地までのルートが確約されています。
がぜん元気になりました。落ちこんだりもしたけれど私は元気です。
駅舎で休んでいるCLAMPに別れを告げ(え)、先をめざします。

ロープウェイのりばより先は、いくぶん道らしい道がつづきます。
道幅も広いし、ところどころコンクリートが敷かれています。
とりあえず迷うことはなさそうです。
地図上の実線と点線の差がどれほどのものか、身にしみて感じました。
つーかあの地獄の山道は道じゃねえよ。道の皮をかぶった悪魔だよ。
しばらく行くと、なにやらだだっ広い斜面が目に入ってきました。
……えーと、す、スキー場?
ずいぶんとさびれています。
こんなところにスキー場があるなんてはじめて知りました。
立入禁止と書かれていますが、おそらくシーズンオフだからではなく、
すでに閉鎖になっているのでしょう。
なるほど、乗り換え口からここまでの道は、もとはこのスキー場に
行くために作られたんですね。そりゃいい道なわけだ。

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で、しかも、このスキー場のところで道が二手に分かれています。
右が山頂行き、左が延暦寺行き。
See-Sawは梶浦由記、ホワルバは森川由綺、恋の相談は兵藤ゆき。
さて、どちらに行ったらいいでしょうか。
当初の目的でいったら左に直行ですが、でも山頂も捨てがたい。
だって山頂ですよ?(なにが)
しかもすぐ山の上に気象台とか電波塔とかステキ建造物が見えてんですよ?
それに、ここまで苦労して歩いてきて頂も極めずに帰れるもんですか。
というわけで一路ニッサン。ゴーンチルドレン。

そこから先は舗道です。コンクリートロードはやめたほうがいいぜ。
舗装されていても、きつい上り坂であることに変わりはないんですが。
しばらく上っていくと、やっと建物の姿が目に入りました。
ロープウェイのりばです。ついに自力でここまで来ました。
わーい。←疲労困ぱいのため力いっぱい喜べない
時間にして、ふもとから2時間くらいかかったでしょうか。
どうでもいいですが「ふもと」と「ふともも」って似てるよね。
私が着いたとたん、あたり一面に濃い霧が立ちこめました。

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な、なんにも見えねえー。これがヘジテの礼儀か!
のりば前には、ガーデンミュージアムという施設がありました。
四季折々の花と、世界の名画が楽しめるんだそうです。
せっかくの記念だし入ります?(誰と会話)
心が女の子モードだったら一も二もなくさんせー!だったんですが、
あいにく今の私は限界に挑む山の男です。山の専門誌岳人です。
なのでパス。

ひとまず、公衆トイレに入って汗をかいた服を着替えました。
(だからなんで着替えとかはふつうに準備万端なんだよ!)
これで汗だくのまま寺社めぐりをしなくてすみます。
さすがに気温が低いので、このままだったら仮に無事帰れても
かぜをひいたでしょうから。
…ま、そうじゃなくても翌日の筋肉痛は確定だけどね。
この場所は、ふつうに駐車場やバスのりばがあって、山の玄関口です。
つっか、ふつうに三条京阪行きのバスとか来てるんだが。
京都・滋賀両方の遠景を楽しめる展望台もありますが、
ごらんのとおり視界は360度真っ白。なんて骨体。

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いかにもな食堂があったので、お昼はそこでゴチになりました。
わたくし観光地のしょぼい売店やさびれた食堂に目がないもので、ええ。
お店のおばちゃんに話を聞くと、ここから先は歩いては進めないそうです。
車道専用なんですって。やってランナウェイだよね。
ってことは、さっきの分岐してたところまで引き返せってことですか。
直前セーブしとけばよかった。<ゲームと現実の区別がついてないよこの人
いや、ここまで来たんだからあとはシャトルバスで行っとけよ、
と思うかもしれませんが、私は曲がったことがだいきらいなんです!
(あーわかったわかった、そういうのいいから)

そんなこんなありまして、また薄暗い山道に逆戻り。
ここまで登ってきた道にくらべれば、上り坂はほとんどなくて楽です。
途中、同じように歩きルートで寺に向かう人たちに追いつきます。
きっとバス代をケチりたいとか、せこいこと考えたんでしょうね。
(おまえが言うな)
迂回ルートがこんな足場のわるい道だとは思っていなかったのでしょう、
こけそうになってよろけたりしながら歩いています。
天下り官僚は現場のことなんざなんにもわかってねえんだよ。(誰)
過酷な道を登りつめたノンキャリの私は、これしきの悪路では動じません。
ツルセコな優越感にひたりながら、ゆうゆう追い越して歩きます。
途中、山の景色が見えました。向こうに見える集落は大原でしょうか。
もうきれいくてきれいくて。こみあげてくるものがあります。
昔の人が山に信仰を求めた気持ちが、すこしだけわかった気がします。

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そしてついに延暦寺にツイターーー!
ついてついてつきまくりました。そしてヒィヒィ言わせました。
(注:ヒィヒィ言っているのはond本人です)
拝観料は大人550円。さすがにこれをケチるのは罰当たりですからね。
最初に行ったのは、東塔というところでした。

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朱塗りハァハァ。写真撮りながらよだれが垂れました。(変態の領域)
もうね、あれですよ。この瞬間のために歩いてきたってかんじです。
近くから、ゴォーーンという鐘の鳴る音が聞こえてきます。
風流なことやんごとなし。日本に生まれてよかったよありがとう。
むしろ一句できそうです。…できませんでした。<無理するなよー
石段を下りてすこし歩くと、大きな建物があります。
大講堂です。国の重要文化財に指定されています。
建物のちょっと古ぼけた感じも貫禄たっぷりです。いよっ、大統領!

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中に入って、仏前にひざをついて手を合わせました。
ふだん信心深くない私でも、こうしていると心が洗われるようです。
仏像やご神体の数々にも思わず見入ってしまいます。
建物の天井を見回すと、壁一面にお坊さんの肖像画が飾られています。
ちょっとした威圧感です。引き返せー、引き返すのだー。(またそれか)
お参りに来ていたおばあさんが、
「どのかたもきれいな顔をしていらっしゃる。ありがたやありがたや」
と言って拝んでいました。
これは似顔絵だから、あくまで絵がうまいというだけで、
本人たちが実際にOTOKO-MAEだったかどうかはわかりません。
でもまあ、ここではそんなつっこみは野暮ってものですよね。
それに、若いイケメンならここにひとりいますよ?(マダムキラーか)
ヨン様じゃなくてオン様ですけどね。…自分でオン様とか言うなぁ。
講堂の外に出ると、大きな鐘がつるしてありました。

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しかも、それを観光客が好き勝手についています。いいのかよ!
おさい銭を入れれば、自由についていいようです。なーんだ。
私もつきました。力いっぱいつきました。煩悩が振り払われるように。
(無理だと思います)
鐘がいつまでもビリビリと響いていました。
ただ、鐘の音はやはりプロのお坊さんについてもらったほうが
ありがたみがあるような気がするんだが。そこんとこどうですか。
境内、じゃないけど敷地内には、犬を連れている人もいます。
いったいどこから登ってきたのでしょうか。
ロープウェイとかにはペット連れで乗れるってことでしょうか。
それとも、もし山登りしてきたとしたら、凄絶なる犬の散歩です。

最澄がこの地で天台宗をおこして、1200年以上も守られている聖地。
秋の紅葉シーズンには尋常ならざる人手が予想されます。(何情報?)

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坂を下っていくと、なにやらどでかい建物が。ジャンボ意味ねーな。
国宝・根本中堂ここにあり。
どうですかこの威厳。お届けできないのが残念です。
なんたって発しているオーラが違います。ちなみにondは変態オーラ。

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中に入りました。広い中庭があります。
柱や廊下のつくりも味わいがあり、歴史を感じさせます。
そしていよいよ薄暗いお堂に入りました。
もうね、おごそかオブおごそか。ぴんと張りつめた空気。
それでいて、足の疲れもふっとぶような心地よさも感じます。
神聖であるとはこういうことをいうんでしょうね。
奥のほうにろうそくがともっていて、祭壇?が見えます。
長いこと正座して手を合わせました。
中にお坊さんがいて、説法っていうのか、説明をしています。
この寺の沿革とか、中堂やまつられている神仏についてとか、
1200年もの間、絶やすことなくともしつづけられてきた火の話とか。
大学生のグループに、参るときはしっかり手を合わせて瞑想し、
お父さんお母さんのことを思い出しなさい、と話していました。
もう、生徒手帳に書きこんで肌身離さず持っていたいお言葉じゃないか。
お坊さんの説明は、人が多くなってくるとマイクを使って行われます。
……にわかに時代の流れがどっと押し寄せてきました。

それから敷地内の残りの建物を見て回って、拝観終了。
あとは帰るだけですが、さてどうしようかという話です。
ま、考えるまでもなく選択肢はひとつしかないんだけどね。
もちろんオール徒歩。オール電化は独禁法違反。ファイナルアンサー。
きつい山道をよじ登っている最中は、帰りは乗り物で下りようと
思ったりもしましたが、すでに頂上に到達してしまいましたから。
上がってこられたんだから、当然下りられっだろ? っていう。
それに、延暦寺パワーをさずかって体力は十分回復しています。
巫女さんもいないのにこんなに力がみなぎるなんて初めてです。

はるばる歩いてきた山道を、ここからは戻っていきます。
一度通った道なので、まわりを見渡す余裕もあります。
はるかに見える景色や、道ばたにあるものがみんな美しく見えます。
やはり、この山道は古くからの参詣道だったのでしょうね。
自然を大切にする気持ち、手を合わせて祈る気持ち。
山が私に教えてくれました。(またか)
それもこれもさ。死ぬ思いをして山を登ってきて、本気で一時は
どうなることかと思ったのが、こうして生きて帰れるんですから。
私たちは東京に帰るんだ! そして京都に行ってきました!(逆)
なんつーか、生きているってすんばらすぃーよ、うん。

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霧がかかってよく見えなかった山頂は、いつか再挑戦するつもりです。
ふたたびスキー場の脇を抜けて、ロープウェイのりばへ。
ちょうど私の頭上をゴンドラが通っていきました。
ゴウンゴウン。
あれに乗って楽に登っていたら、今日の気持ちは知りえなかったでしょう。
いや、知らずにすんだでしょう、が正しいのかもしれませんが。
すくなくとも、今の私に後悔の念はありません。
でもたぶん、明日起きたら全身筋肉痛で後悔するでしょうけれど。

20050710_21
20050710_22

競馬チック激ワロス。
ケーブルカー乗り換え口でドリンクを買いためて、念入りに屈伸運動。
意を決して山を下りはじめます。
急な坂道にくわえて、足場がぬかるんでいるのでひと苦労です。
歩幅をせばめて慎重に下りていかないといけません。
冗談ではなく本気で、ゆっくり歩くのがここでのたしなみです。
人生って、よく山道や坂道にたとえられることがあります。
人生山あり谷あり。人生楽ありゃ苦もあるさ。
苦しい上り坂もあれば、楽な下り坂もある。といった感じで。
ですが私にはわかりました。あんなの大うそです。
上りの傾斜がきつければきついほど下りもきつくなるんですよ!
つまり、その、あれですね。人生は平坦な道がいちばんってことです。
波風立てずに平々凡々に、ってことですね。チキンな教訓ですが。
私はこれからもまっすぐに生きていこうと思います。
(おい!今の聞き捨てならねーぞ!)

下り坂なので、息が上がったり足が止まることはありませんが、
両足がすぐにしんどくなって、ガタがきます。
たしか、階段を上るときより下りるときのほうが筋肉が
疲れやすくなる、という話を聞いたことがあります。
上りでは、曲げた脚を伸ばして体を持ち上げるのに対して、
下りでは、伸びた脚を曲げて全体重を受け止めます。
曲→伸のほうが筋力も筋持久力もはるかに上です。
伸→曲の筋肉は鍛え慣れていないため、疲れやすいそうです。
それに加えて、下りは勢いもついてスピードが出ますから。
ガッテンしていただけましたでしょうか。ガッテンガッテンガッテン。

ようやく前半部分の鉄砲道(?)あたりまで下ってきました。
ひとつ気づいたのは、この序盤戦が最も過酷なロードだということ。
絶対にクリアできないエディット面のようです。(ロードランナー)
私が登りのときにずっとひとりだったからそう感じるかもしれませんけど、
今こうして下ってみて確信しました。
序盤は艱難辛苦ないばらの道で、中盤以降はふつうの登山コースです。
同じ山なのに、それくらい険しさや難度に開きがあります。
なぜこんなつくりになっているのか。
いえ、山の形状がそうだからだって言っちまえばそれまでですがね。
私は思うんです。きっと、軽い気持ちで山に入ろうとする人を
早めに追い返して、遭難者などの被害を出さないためではないかと。
<あんた追い返されてないじゃん!

それと、行きでもうすうす気づいていたんですが、
このへんところどころ有刺鉄線つきの柵が張られているんですが。
おもっきし人工物です。自然の叡知に挑み中の私にはプチ興ざめです。
看板をよく見ると、宮内庁と書いてあります。
ここらへんも修学院離宮の敷地ってことなんでしょうか。
京都では朝廷の権力がいまだに強い影響を(でたらめな考察
宮内庁御用達の山道だったんですね。

はい。というわけで、音羽谷まで戻ってきました。
下りの所要時間は1時間半くらいでしょうか。
木の棒は、けっきょく最後まで持って歩いていました。皆勤賞です。
山で拾ったものなので山に返します。ふおりゃっ!(投)

朝、ここを出発したときよりもあたりは静かです。
サルの姿はなくなっていました。
昼間は(サルにとって)物騒な時間帯ですからね。
それとも、あのおじいさんが大規模な掃討作戦を展開したのでしょうか。
今後どうするんでしょうね、それにしても。
サルたちがもうすこし山の上というか、人里から離れてくれれば
干渉しあうこともないでしょうが、それは根本的解決ではありません。
難しい問題です。
そういえば、山下りのとき川が流れる音が聞こえてきました。
水の落ちる大きな音です。上流に滝でもあるんですかね。
行ってみましょう。川沿いの小道をひょいこら進みます。すると。

20050710_23

タキーーー! 音羽の滝!(勝手に命名すんなっていうかパクリだ)
いえ、まあ人工の小型ダムから水が落ちているだけですが。
それにしたってどうですかこの清流。名水100選に認定します。<何様
いえもう、こんな大自然が近所にあったなんてつくづくびっくり。
この集落は、全体が音羽川の保護区域になっているみたいです。
どうりで水も清らかだし、川も穏やかだし、周囲ものどかだし。
青木もさやかだし、鶴舞線もいりなかだし、H×Hもヒソカだし。
このゆるやかな川の流れが、平安の世からこのあたり一体の
平穏な暮らしを見守ってきたのでしょうね。
なんというか、きょう一日でたくさんの新しい発見がありました。
日記に書ききれないほど。(書ききってんじゃん)

20050710_24

うち帰ってダッシュで風呂入りましたとさ。ちゃんちゃん。

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