白銀メロウ

2002/09/28

むかしのひび

山にもやがかかった、すこし涼しい日でした。くもり空をぼーっと見ていました。<ひま人 私は今まで天気といえば、雲ひとつない快晴か、雷がゴロゴロ鳴っているようなはげしい大雨という、両極端なものがすきだったのですが、最近はきょうのような天気もいいなと思うようになりました。空一面が雲におおわれてはいるものの薄明るくて、今にも降ってきそうで。その表情が、泣き出しそうなのを必死でこらえて、けなげに明るくふるまおうとしているようにも見えます。すこし悲しさをたたえていて、どこか応援したくなるような空でした。

目的のない旅がしたいな、とときどき考えます。思い出してみると私は、今まで「旅行」はいろいろしてきましたが「旅」はあまりしていなかったのだという気がしています。行く場所を決めると、どうしてもそこでやりたいこと、目的を決めてしまいます。たいていはその土地の名物や観光名所であるわけですけれども。(例:名古屋に行ったらみそ煮こみうどんを食べるがや) そうでなくて、行き先や目当てをもたずにただその土地を見てみたい、あるいは見ることすらしない、という旅をしてみるのもよかったかもしれません。観光客に対して開かれている看板ではなくてもっとべつの一面、いうなればその土地の素顔というか生の雰囲気みたいなものを感じられればそれもおもしろかったのかなと。ものごとのわずかな一面だけを見てそれだけでイメージを固めて、それでは本当にその対象をよく知ったことにはならないのですから。

静かな境内にひびく砂利の足音。店先から甘くささやく香ばしいパンのにおい。近所の人からの差し入れに飛びつくのらねこ。キッチンミトンごしに伝わるプレートの温度。そんな身近な、なんでもないものがすきでした。そういうものに心をなごませている自分を、おめでたい人間だとあきれたり、なに気色悪いこと言ってんのとさげすんだりする感情も、私の中に併存しています。ときにはいやな気持ちのほうがまさってしまって、素直な自分を手放してしまいたくなるときもあるのですが。それでも今は、こういうところに落ち着いた自分をまもっていきたいと思っています。いつまでつづくかわからない、というのが正直な予想ですけれど。

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